「ジャニーズ性加害」国連人権委員が〝透明性と正当性〟に疑問…『再発防止特別チーム』の「深刻度」
国連人権理事会『ビジネスと人権』作業部会の専門家が8月4日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見を行った。そこで、ジャニーズの性加害問題について
「タレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」
などと厳しく指摘し波紋を広げている。
作業部会が、ジャニーズ事務所の前社長ジャニー喜多川氏(‘19年、享年87)の性被害に遭った元ジャニーズJr.などにヒアリングをするなどして、日本の人権課題として調査をしたうえで発表したものだった。
作業部会のピチャモン・イェオパントン氏は
「政府や私たちがお会いした被害者たちと関係した企業は、対策を講じる気配がなかった」
と批判したうえで、
「被害者を、政府が主体的に、透明な捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、救済する必要性がある」
と指摘したことも注目される。政府が救済策を主導すべきだと指摘したのだ。
さらに、ジャニーズ事務所が設置した、外部の専門家による『再発防止特別チーム』の調査は、
「透明性と正当性に疑念が残る」
と指摘した。
ジャニーズ事務所が設置した『外部専門家による再発防止特別チーム』が発足の記者会見をしたのは6月12日。すでに2ヵ月近くが過ぎているのに調査結果の発表はまだなく、国連人権理事会の発表を受けてジャニーズ事務所は、「特別チーム」から8月末ごろに再発防止策を提言する見込みとの連絡を受けたと発表している。提言を受けた後、
「できるだけ早く、今後の取り組みなどについて記者会見で説明させていただく予定」
と発表したのだが、後手後手に回っている感じは否めない。
そもそも、6月12日の記者会見で、同チームのメンバーで前検事総長の林眞琴氏は
「私たちが第三者委員会」
と言いながらも
「(ジャニー氏の性加害の)すべてを網羅するものではない」
と何度も繰り返していたのが気になった。被害者の精神的な負担に配慮して網羅的な調査はしないが、被害申告者や事務所関係者から聞き取りなどを行い事実関係を調査して、再発防止の提言をまとめるという。
だが、被害者に配慮するのは前提で、本人が名前を出すのを希望しなければ匿名にするなど配慮して、まずは完璧なものではなくても、可能な限りジャニー氏の性加害の全容を解明することが今、求められているのではないだろうか。
再発防止策は全容解明とセットで行われる必要があるはず。ジャニーズ事務所の発表がないまま、元Jr.などの被害者が次々にマスコミに性被害を告発しているのが現状だ。
国連の専門家が来日したのは7月24日。12日間の調査で、かなり踏み込んだ本質を突いた発表をした。これはメンバーが、何よりも被害者に寄り添い救済することを最優先にし、迅速に調査結果を発表するという、本来あるべき調査をしたからではないだろうか。
国連人権理事会の記者会見を受けて『ジャニーズ性加害問題当事者の会』の7人が同所で記者会見し、石丸志門副代表は、
「性加害問題があったものとして(国連側に)認定されたと思います。疑惑ではありません。この問題は現実に起こったことです」
と訴えた。そして
「私たちはもっと多いのではないか、4桁に到達するのではないかと考えております」
としたうえで
「人類史上最悪の性虐待事件。これがようやく明るみに出た。この機会を得たと考えています」
と国連人権理事会の発表を評価した。
ジャニーズ事務所は8月末にどのような記者会見をするのか注目される。被害者が納得する謝罪や救済策が不十分なままだと、被害者による集団訴訟や〝巨額賠償〟の可能性も否定できないだけに、適切な対応が望まれる――。
- 文:阪本 良(ライター、元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長)
- PHOTO:共同