バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

島 右近

<figure id="attachment_326107" aria-describedby="caption-attachment-326107" style="width: 3648px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9b6eb891"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/a3a02635bba639d46178408d17e88fec.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326107" class="wp-caption-text">『キングダム』『東京リベンジャーズ』と、出演作が立て続けに公開された吉沢亮</figcaption></figure>
映画『キングダム 運命の炎』が７月28日に公開され、初日から３日間で興行収入は10億円を突破。週末映画動員ランキングでは初登場ながら首位に躍り出た。
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今作は中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す戦災孤児の少年・信（山﨑）と中華統一を目指す若き王・エイ政（吉沢亮）を壮大なスケールで描く一大叙事詩だ。
第３弾となる今作では、積年の恨みを抱く隣国・趙の大軍勢が突如、秦の首都を目指して侵攻。エイ政は長らく戦から離れていた伝説の大将軍・王騎（大沢たかお）を総大将に任命。『馬陽の戦い』を前に王騎将軍から覚悟を問われたエイ政が、かつて趙で人質として深い闇の中にいた自分に光をもたらしてくれた恩人・紫夏（杏）との記憶を語るシーンでは、涙腺崩壊する観客が続出している。
「初日舞台挨拶で、原作ファンである吉沢は『やるならエイ政をやりたいと勝手に思っていた』。さらにエイ政を演じられたことに『運命を感じている』とコメント。今回描かれた原作でも人気の〝 紫夏編〟について、９歳の役どころながら『好きすぎて僕がやったほうがいいと、シリーズ第１弾の撮影中から〝やらせてください〟と訴えていた』ことも明らかに。
囚われ人となり心を閉ざしてしまったエイ政が、清らかな心と母性を持った紫夏と出会い感情を取り戻してゆく場面は美しく、原作を手掛けた原泰久さんも『僕も観ながら号泣してしまいました』と話しています」（制作会社プロデューサー）
紫夏を演じる杏は、『キングダム』の過去作を観た時、
「一番驚いたのがエイ政の完成度。振り向いた瞬間に〝ああ、これがエイ政だ〟と思うようなハッとさせられる感覚があった」
と発言。俳優・吉沢亮にとってエイ政は、みずから望んで勝ち取ったまさに〝ハマり役〟といってもいい。
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その一方で吉沢には、
「正直、僕じゃない」
と悩みながら挑んだ役どころもある。
それが現在公開中の映画『東京リベンジャーズ』で演じている、東京卍會の伝説の総長〝マイキー〟こと佐野万次郎役だ。
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「ところが北村匠海や山田裕貴、眞栄田郷敦、永山絢斗、村上虹郎、間宮祥太朗たち、日本映画界を背負って立つ若手俳優がキャスティングされていくのをみて『腹を括った』と語る吉沢は、〝マイキーをやる意味〟を常に自問自答しながら演じたと話しています」（ワイドショー関係者）
６月30日に公開された『東京リベンジャーズ２ 血のハロウィン編－決戦－』では、東京卍會と芭流覇羅（バルハラ）が日本映画史上類を見ない巨大なロケセット（廃車場）で激突。146台の車が積み重ねられたまるでライブ会場を思わせる決戦の舞台に、総勢200人以上の両チームが浮かび上がると、血湧き肉踊るショータイムの幕が切って落とされた。
「そんな中でもひときわオーラに包まれていたのが、金髪のロン毛をなびかせ裸の上半身の上にトップク（特攻服）を羽織るマイキー。端正な国宝級イケメンの頭上から、ラメ入りのボディパウダーで作られた光の粒がキラキラ舞い降りる場面は、まるで神話のワンシーンを見るような神々しさに溢れていました」（制作会社ディレクター）
やがて吉沢にしか演じられない、〝黒い衝動〟のシーンがやって来る。
「共に東京卍會を作るも、誤ってマイキーの兄を殴り殺してしまった一虎（村上虹郎）にキレて無抵抗の一虎を殴り続けるマイキー。返り血で金髪が赤く染まっていく鬼気迫る場面は、撮影現場も静まり返るほどの迫力。特に怒りに満ちた目力には戦慄を覚えました」（前出・ディレクター）
本人も「アドレナリンがすごく出た」「芝居で久々に感情を爆発させた」と明かすこの場面。実は、血のりのたくさん入ったバケツのようなものを殴り続けるので、骨が折れるリスクもあったと、本人も話している。
吉沢のこの目を観て私は、’19年に公開された映画『キングダム』シリーズ第１作で、吉沢演じるエイ政が魅せた鋭い眼差しを思い出した。
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今作で、信の幼馴染・漂、漂と瓜二つの若き日の秦の始皇帝・エイ政の二役を演じた吉沢。奴隷の戦災孤児・漂と中華統一を目指す若き王。真逆の役を演じるために
「深く人間性を掘り下げ、一目見ただけで漂とエイ政のどちらを演じているかわかるぐらいにしたかった」
と語っている。
殺陣も我流で学んだ荒削りの漂に対して、エイ政の剣は王族が身につける正統派の剣。そして驚くべきは視線。戦いの中で檄を飛ばす、エイ政の鋭い眼差しの奥から滲み出るカリスマ性に、吉沢亮の俳優としてのポテンシャルの高さを感じたのは私だけではあるまい。
日本のエンターテインメントは、果たして世界に通用するのか。そんな試練に立たされた映画界にあって、『キングダム』シリーズ、『東京リペンジャーズ』シリーズで輝きを放つ吉沢亮。彼こそ、日本映画界が誇る唯一無二の存在なのかもしれない――。

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

島右近（放送作家・映像プロデューサー）

Pasya/アフロ

大河ドラマの主演を務めるなど、いまや映画やドラマに欠かすことのできない俳優となった吉沢亮。そんな彼が出演する話題作『キングダム』と『東京リベンジャーズ』が立て続けに公開されたが……

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