「すべての家族に一戸建てと高級車」”中国一の裕福な村”が8兆円破綻した自業自得のウラ事情 | FRIDAYデジタル

「すべての家族に一戸建てと高級車」”中国一の裕福な村”が8兆円破綻した自業自得のウラ事情

’90年代に鉄鋼業や紡績業で大儲け 72階建て豪華ホテルに「万里の長城」「凱旋門」まで建設したが……

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’11年にオープンした高さ328m、総工費約670億円の高級ホテル。屋上のプールや映画館などを併設
’11年にオープンした高さ328m、総工費約670億円の高級ホテル。屋上のプールや映画館などを併設

最上部に球体の展望台を擁する72階建ての超高層ホテル、「万里の長城」や「凱旋門」を模した巨大建造物――。

壮麗な建物群が、すべて廃墟になりそうな中国の村がある。7月25日までに4000億元(約8兆円)もの負債を抱え事実上財政破綻した、東部・江蘇省にある人口3万人ほどの華西村だ。かつて、この村は「天下第一村」と呼ばれ中国一裕福な集落として憧れの存在だった。

「’70年代まで華西村は地方の貧しい村でした。しかし’80年代に入ると、村の代表である共産党委員会書記だった人物が国の改革開放路線を利用し集団化経営へ乗り出します。

’90年代には鉄鋼業や紡績業など、数十の企業からなる『華西集団』を立ち上げ大儲け。事業で得た莫大な利益で、教育費や医療費などが無料化されただけではありません。村のすべての家族に、豪華な一戸建てや高級車が支給されたんです」(全国紙北京駐在記者)

中央政府も改革で最も成功した例として、「モデル農村」と絶賛。日本人など外国の要人を招き、華西村の繁栄ぶりを海外へアピールした。ところが……。

「中国各地に同じように企業経営で儲けた『土豪(成金)村』が多数出現し、華西村の優位性が薄れたんです。’10年代に入ると華西村の凋落が始まります。村を支えていた鉄鋼業や紡績業が衰退し、急激に供給過多となったんです。

それに合わせ、村民へのサービスの質も低下。なんとか挽回しようと金融、石油化学、海運業などにも手を広げますが、ことごとく失敗します。今回の財政破綻で、『華西集団』の株の8割がわずか1元(約20円)で投資会社へ売却されました」(同前)

長期的な戦略を持たず場当たり的な対応で、「黄金の牛」や「龍の頭」など利用価値の低い嗜好品(しこうひん)を増産し続けた華西村。巨大な建物の建設や村民へのバラ撒きに邁進した末の破綻は、”自業自得”といってよいだろう。一方で「中国当局にも責任がある」と語るのは、現地情勢に詳しいジャーナリストの高口康太氏だ。

「21世紀に入った時点で、華西村の行き詰まりは明らかでした。しかし当局が『中国で最も成功した例』と大々的に宣伝した建て前上、なかなか認められなかった。無理やり延命させ、8兆円の負債を抱え手の施(ほどこ)しようがない悲惨な状態に陥ったんです。もう少し早い段階で手を打っていれば、キズは浅かったと思います」

当局の方針に振り回された「改革開放の成功モデル」は、今や「最も多額の借金を抱える失敗例」となってしまった。

村民家族へ支給された3階建てのレンガ造りの住宅
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成長を牽引した代表の葬儀は、盛大に行なわれた
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「凱旋門」など村内にはムダに立派な建物が多い
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写真1枚目の高級ホテル内に設置された金塊1トン分の牛
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毛沢東など中国の偉人像を前方に置いた荘厳な塔
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村をぐるりと囲むように続く「万里の長城」のような長い道
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『FRIDAY』2023年8月18・25日号より

  • PHOTOロイター/アフロ 時事通信社

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