'77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『絶対貧困』『遺体』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『格差と分断の社会地図』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』などがある。

石井 光太

「生きたい」という気持ちを逆手にとり…風俗嬢が明かす「自殺願望のある人も利用する」卑劣闇ビジネス

「私のも送るから」…風俗嬢がバイト感覚で荒稼ぎ「男性を性的画像で脅す」生々しい戦慄実態ルポ

ノンフィクション作家・石井光太が社会・事件に迫る！衝撃ルポ

<figure id="attachment_326687" aria-describedby="caption-attachment-326687" style="width: 1303px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d45e3482"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/5c83db476b542e3b1767d41b992eeb11.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326687" class="wp-caption-text">相手へ遠慮があっても安易に服を脱いだ画像を送るのは危険だ（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>性的な画像や動画を利用して行われる恐喝や詐欺は、「セクストーション」と呼ばれている。</p>
<p>かつて著者が取材した事件では、20代後半の男性が、主に就職活動をしている女性をターゲットにしていた。</p>
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<p>彼は就活アドバイザーを名乗り、SNS上で就職情報などを発信していた。そこで知り合った女性の相談に乗りつつ、オンライン飲みをしたりチャットをしたりして親交を深めていく。</p>
<p>人生の岐路に立っている若い女性にしてみれば、男性は心の支えであり、特別な信頼を寄せる相手だ。だから疑いもなく、大学名や就職希望先や本名を伝えてしまう。</p>
<p>男性は女性の個人情報をつかむと、オンラインの飲みやメッセージのやり取りの際に、こう持ち掛ける。</p>
<p><span class="strongInContent">〈✕✕ちゃんの裸の写真を見たいなー。俺、ずっと無料で君の力になったよね。いきなりセックスしようなんて言わないから、お願い、写真だけでもちょうだい〉</span></p>
<h2>「じゃあ、ちょっとだけだよ」</h2>
<figure id="attachment_326688" aria-describedby="caption-attachment-326688" style="width: 1334px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e15d3ad0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/d9d9e8317c10fe157512fdcdb3b405a3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326688" class="wp-caption-text">裸の画像はどう悪用されるかわからない（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>女性はずっと無償で就職活動を手伝ってもらっていたので、断りづらい立場にある。加えて、オンライン飲みで酔っていることもあり、「じゃあ、ちょっとだけだよ」と言って裸の写真を自撮りして送る。</p>
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<p>その瞬間、男性は態度を変容させ、こうメッセージを送るのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">〈名前も大学名も就職希望先もすべて押さえている。この画像を流されたくなければ100万円払え〉</span></p>
<p>女性はヌード画像が流出すれば、就職どころか人生が終わってしまうと恐怖にかられる。そして言われた通りに金を用意して支払うことになるのだ。</p>
<p>非常に悪質な手口だが、セクストーションの被害は後を絶たない。</p>
<p>古くはアダルトサイトを閲覧中に突然画面が切り替わり「あなたの自慰画像を奪った。公にされたくなければ✕✕銀行の口座に振り込め」というメッセージが映し出されたり、同性愛の人に対して「あなたが同性愛者の出会い系サイトに登録している証拠はつかんでいる。恋人とのやり取りも盗んだ。バラされたくなければビットコインで金を払え」というメールが送られたりして、多額の金を脅し取られる犯罪があった。</p>
<p>さらにスマホが普及すると、冒頭のような犯罪が増えるようになっていった。スマホで簡単に自撮りができたり、オンライン飲みが普及して相手の判断を鈍らせたりできるようになったことが大きいだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="風俗嬢が加害者になった戦慄の事件"></div>
<figure id="attachment_326689" aria-describedby="caption-attachment-326689" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3283088a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/4f19fc3f88395cad8e66f5e091e49b17.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326689" class="wp-caption-text">トラブルになってしまうと煩雑な対応が求められる（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>近年はSNSの利用者の低年齢化とともに被害は10代にまで広がっている。中には要求された金を作ることができずに、特殊詐欺などの仕事を紹介され、犯罪に手を染める人もいるほどだ。</p>
<p>そもそも、なぜ簡単に裸の画像などを送ってしまうのか。冒頭の事件の犯人は、著者の取材に対してこう説明していた。</p>
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<p><span class="strongInContent">「今の若い女の子は、彼氏とキスする姿を写真に撮るとか、下着や軽いヌードを自撮りして送信するといったことを普通にします。中には、セックスしているところを撮影したという子も珍しくない。</span></p>
<p><span class="strongInContent">なので、断りにくい状況に持っていけば、ネットだけの関係でもヌード写真を送らせることは可能なんです。中高年が思っているほどのハードルはない。特に就活中の女性とかは、不安な時期に相談に乗ってくれている人をすごく信頼するので、そういうところを巧みに利用するんですよ」</span></p>
<p>若い人は、大学名を人に教えることにあまり抵抗を感じないかもしれない。だが、セクストーションにおいて、それは住所や勤務先を教えるのに匹敵するほどの個人情報であることを認識しなければならないだろう。</p>
<p>そんなセクストーションだが、最近になって少し違った犯罪の手口が生まれつつあるという。風俗や個人売春の世界にいる女性たちの一部が、男性に対してセクストーションを行うことがあるというのだ。</p>
<p>一体どういうことなのか。今回取材に応じてくれた女性の経緯を紹介したい。</p>
<h2>男性に自慰動画を送らせる</h2>
<figure id="attachment_326690" aria-describedby="caption-attachment-326690" style="width: 1999px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3265878b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/fc6484f140303625cf42ba309303d67b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326690" class="wp-caption-text">相手のためを思っての行為が犯罪につながることも（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>〇上田ひなた（仮名、27歳）</p>
<p>19歳の頃から上田ひなたは、神奈川県と東京都のキャバクラやラウンジで働いていた。それなりに稼いでいたものの、’20年のコロナ禍によって仕事を失うことになった。</p>
<p>彼女は80万円ほどの借金があったため、仕方なく風俗の仕事をするようになった。ところが、風俗もまたコロナ禍によって打撃を受けていて、思っていたよりも儲からなかった。ひなたは、SNSを使って個人売春をしたり、アダルト系のライブチャットをしたりして何とか糊口を凌ごうとした。</p>
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<p>だが、コロナ禍が収束しはじめても、風俗は飽和状態のままである上、若い子たちが次々に参入してきて、競争は一層厳しくなっていった。</p>
<p>そんな時、ひなたに声をかけたのが、以前働いていた風俗店で知り合った女性のA美だった。A美は言った。</p>
<p><span class="strongInContent">「マッチングアプリで稼げるバイトがあるんだけど一緒にやらない？」</span></p>
<p>詳しく聞いてみると、セクストーションによる恐喝だった。まず有名な不倫用のマッチングアプリに登録する。そこで不特定多数の男性とつながり、いかがわしい内容のメッセージの交換をする。時には自慰動画なども送らせる。</p>
<p>仲良くなると、フェイスブックなど個人情報が詰まっているSNSを教えてもらう。SNSから職業、家族、友人などの情報を抜き取る。そして準備が整ったところで、これまでやりとりしたいかがわしいテキストや動画を示してこう言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「家族や職場はすべてわかってる。これをバラまかれたくなければ、〇〇万円をよこせ」</span></p>
<p>男性にしてみれば、家族や仕事先の情報を握られているので、安易に断るわけにもいかない。警察に駆け込めば、家族の知るところとなってしまう。それゆえ苦渋の決断で支払いに応じるというのだ。</p>
<p>ひなたは儲かると聞いて乗り気になったが、警察に捕まるのではないかという一抹の不安があった。それを言うと、A美は答えた。</p>
<p>「大丈夫。1000万円よこせとか言ったら警察に駆け込まれるけど、数十万円ならみんなキャッシングとかで何とかお金を作って払う。相手に無理をさせなければバレない。そもそも悪いのはあっちなんだし」</p>
<p>ひなたがA美の誘いに乗ってやってみたところ、簡単に成功した。だが、やってみて初めて、そんな「バイト」の背後には大きなグループが存在していることを知った。ひなたは、否応にもそのグループの力に絡めとられるのである――。</p>
<p>なぜ体を売る女性たちがセクストーションに加担するようになるのか。その背後にあるグループとは何なのか。</p>
<p>その詳細と肉声は、【後編：風俗嬢がバイト感覚で荒稼ぎ「男性を性的画像で脅す」生々しい実態ルポ】で詳しく述べたい。</p>
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<p>【<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/326693">後編：風俗嬢がバイト感覚で荒稼ぎ「男性を性的画像で脅す」生々しい実態ルポ</a>】</p>
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石井光太

性的な画像や動画を利用して行われる恐喝や詐欺は「セクストーション」。就職の悩みにつけ込んで女子大生を凌辱。風俗嬢が加害者になるケースも。生々しい実態をノンフィクション作家・石井光太氏がルポ前編。

〈名前も大学名も押さえている〉…就職相談の女子大生を性的画像で恐喝「セクストーション」戦慄手口

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