<h3>東京都は徹底したゴミ対策で苦情が約91％減！ 北日本も鳥インフルエンザで激減</h3>
東京都心部のカラスが減っている。
都の今年4月の報告によると、都内約40ヵ所の合計生息数は’01年度に約3万6400羽だったのが、’22年度は約8700羽と約76％減少。都庁に寄せられた苦情・相談件数は’01年度に比べて約91％減った。
<figure id="attachment_326871" aria-describedby="caption-attachment-326871" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3bc8f2d7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/3b2c67712694f60be2d0f45b71a49a42.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326871" class="wp-caption-text">‘00年前後は早朝の繁華街や商店街でカラスがごみを食い散らかす光景が当たり前のものだったが……</figcaption></figure>
カラスはなぜ、これほど激減したのか。カラス研究に取り組んで20年の宇都宮大学特任助教でCrowLab（クロウラボ）代表取締役の塚原直樹さんは、こう分析する。
「東京都が’01年からカラス対策に取り組み始めたことが大きいのではないでしょうか。都はごみの収集に力を入れ、夜間収集や早朝収集など徹底してやりました。それによって食べ残しや生ごみなど人の生活から出るカラスの食べ物が減少し、繁華街や住宅地が魅力的な餌場ではなくなったことで、都心部のカラスが20年の間に徐々に減っていったんだと思います」
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都内では繁華街や住宅地だけでなく、明治神宮など緑地のカラスも減っているらしい。
「明治神宮や皇居は、カラスが夜に寝に帰って朝まで過ごすねぐらなんです。カラスにとっては餌場とねぐらが近いほど、エネルギーを消費せずに済むので便利。繁華街や住宅地など餌場のカラスが減少すれば当然、明治神宮をねぐらとするカラスも減るでしょうね。 
明治神宮には昔からオオタカが生息していますが、カラスとオオタカの数のバランスも関係しているかもしれません。オオタカなどの猛禽類はカラスを捕食することがあります。
カラスが圧倒的に多かった頃はカラスが群れでオオタカを追い回すほどで、オオタカを恐れる必要はなかったけれども、ねぐらにするカラスが減るにつれ襲われる確率は高くなる。さらに、オオタカが都心に増えたことによって、カラスのねぐらを移す行動に拍車がかかった可能性は十分考えられます」
東京都心と同様に札幌市でもカラスが20年前に比べて半減しているようだが、減少理由の一つに高病原性鳥インフルエンザが挙がっている。
「去年は特に、北日本の地域でカラスの死骸から鳥インフルエンザの陽性反応が確認された例が多かったんです。 
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カラスは鳥インフルエンザにかかるけれども死ににくいと、昔は言われていました。元気な状態で農場を移動してウイルスを運ぶので、農家からするとすごく迷惑な存在だったんです。それが近年は、鳥インフルエンザが検出されたカラスの死亡例が増えている。、ウイルスの変異によって、もしかするとカラスにとってすごく毒性が高くなっているのかもしれません。
結果として、我々が知らないところで鳥インフルエンザにかかって死んだカラスも多数いるのではないか。そう考えると、個体数が減っている原因の一つである可能性はあります」 
<div data-friday-nextpage-lead="カラスの減少とネズミ増加の関係は？"></div>
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<h3>都内の繁華街でネズミの大群が…</h3>
カラスの駆除を請け負う害鳥駆除会社のホームレスキューが3月、自社サイト内のコラムでこんな懸念を示した。
人間社会からカラスがいなくなると、カラスが捕食していたネズミや甲虫類などが増えると推測される――。
<figure id="attachment_326872" aria-describedby="caption-attachment-326872" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1aba0133"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/d9965971e8d6e47bcfdda7f6b0cbdf05.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326872" class="wp-caption-text">20年前は東京都内に約3万6400羽も生息していたカラスが、’22年度には約8700羽にまで減少</figcaption></figure>
今年の5月頃からSNSで、都内繁華街などでネズミの大群を目撃したとの投稿が相次いだが、カラスの減少はネズミの増加に関係しているのだろうか。
「どうでしょう。ネズミに関しては専門外なのでよくわかりませんが、栄養価の高いものが大好きなカラスにとって、生きた動物が魅力的な食べ物であるのは確かです。ネズミが簡単に捕まえられる状態であれば、当然、狙うでしょう。 
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ただ、カラスは積極的に狩りをする鳥ではなく、どちらかというと動物の死骸を食べることが多いんです。ネズミが増えているのだとしても、カラスの減少が直接の原因とは考えにくい。他に要因があるような気がします。たとえば、繁華街の人出が戻って飲食店から出るごみの量が増えたためとか。ごみの夜間収集は、夜行性で夜もごみをあさりに来るネズミには関係ありませんから」 
確かに、繁華街に餌が十分あるのであれば、ネズミが集まってきてもおかしくない。では、カラスはどうか。ごみ対策が徹底されていれば、戻ってくる心配はないのだろうか。
「結局はごみの出し方にかかっていると思います。 
カラスは非常に学習能力が高い鳥です。記憶力もすごくいい。たとえば、飲食店のごみ置き場でおいしい肉を食べた記憶があると、その後しつこく餌をあさりにいきます。ごみの管理が悪ければ、カラスはすぐにその場所を大切な餌場として認識するでしょう」
塚原さんが代表取締役を務めるCrowLabは東京都足立区のごみ集積所のカラス被害を調査しているが、足立区はカラスによるごみ荒らしが深刻だという。
「足立区はごみ集積所のカラス被害をなくすために、蓋つきのごみ収集ボックスや防鳥ネットを貸し出すなど、すごく努力しています。それらのツールは効果的なんですが、住民のごみの出し方が悪いとどうしても荒らされる。そこで今、人の行動変容と動物行動学の知見を生かして、どんなごみの出し方ならカラス被害に遭いにくいかを実証実験しているところです」
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だが、カラスによる被害はごみ荒らしに留まらない。
「農業地域ではカラスによる食害が大きな問題です。農林水産省の調べでは、’21年度の全国の農作物被害は約13億円にも上る。カラスに果物を食べられて廃業した果樹農家もいると聞いたことがあります。 
自動車メーカーでは、新車のモータープールなどでワイパーのゴムや窓ガラスのパッキンが破壊される、ボディを傷つけられるといった被害が発生しているようです。 
電力会社はカラスの巣にかなり困っています。カラスが電柱に作った巣が、停電の原因になる場合があるからです」
東京都心や一部の都市以外の場所では、カラスによる被害は決して減ってはいないのだ。
<div data-friday-nextpage-lead="カラス対策の切り札は？"></div>
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<h3>カラス対策の切り札は？</h3>
「要するに、日本全体で見るとカラスの数はそれほど変わっていないんだと思います」
結局、カラスとはこれからも付き合っていくしかないのだろう。
「カラスも生態系の一部ですし、そもそも人と生活圏がかぶります。イノシシやシカなどの野生動物と違って、山に追いやることができません。共存していくしかないんですよ」 
<figure id="attachment_326873" aria-describedby="caption-attachment-326873" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d01a7920"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/529dd1e96e7dfc49044400c3fdc65377.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326873" class="wp-caption-text">「カラスは記憶力が抜群で、食べ物に結びつくことは特によく覚えている」と塚原さん。人の顔を覚えるという研究結果もあるとか</figcaption></figure>
カラスと共存するにしても、一定の距離は保ちたい。
「私の会社では、カラスの音声コミュニケーションを利用してカラスの行動をコントロールする手法を対策のためのサービスとして提供しています。カラスが警戒する時などに発する鳴き声を組み合わせ、その音声を被害が起きている現場で再生するんです。そうするとカラスは、警戒しているカラスが近くにいると勘違いし、自分も危険な目に遭うんじゃないかと思って別の場所に移動します。 
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カラスが日頃使うコミュニケーション手段のため慣れにくいという特徴はあるものの、同じ音声を繰り返し使っていると必ず慣れます。カラスが慣れてきたところで新しい音声に交換することで、慣れが解消される。慣れることを前提とした点が、これまでの対策と大きく異なります。 
伝統的なカラス対策にカカシがありますが、いつも行く場所に見慣れない物体が置かれていると、カラスは警戒して近づきません。このようなカラスが忌避していると思われる現象を、私は“カカシ効果”と呼んでいます。ただ、この効果は一時的なものです。カラスが慣れてしまうと、まったく効き目はなくなります。 
カラス対策の基本はやはり、カラスの食べ物を減らすことに尽きるでしょう。カカシ効果で対症療法的に被害を防ぎつつ、ゴミの出し方を徹底する、農地に規格外の作物を放置しないなど、しっかりカラスの餌を管理することが大事だと思います」 
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塚原直樹（つかはら・なおき）CrowLab代表取締役。1979年、群馬県生まれ。宇都宮大学農学部卒業。同大大学院農学研究科修士課程、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了。2017年、CrowLab代表取締役に就任。’18年、宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター特任助教に着任。著書に『カラスをだます』（NHK出版新書）がある。
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<figure id="attachment_327081" aria-describedby="caption-attachment-327081" style="width: 1305px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7612e51d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/eab0dddbff679d5565f544c3fd5c3c2c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327081" class="wp-caption-text">バチカンのサン・ピエトロ広場で、アンジェラスの祈りの最中に教皇フランシスコと一緒に子供たちによって放たれたハトが黒いカラスに襲われる（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_327082" aria-describedby="caption-attachment-327082" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c49d9959"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/9bfc61e6919d244479ef1792f2e3865a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327082" class="wp-caption-text">イタリア国立動物保護局は、ローマでハトを放すことは「死刑を宣告する」ようなものだと述べた（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>

斉藤さゆり

東京のカラスが減っている。都の今年4月の報告によると、’01年度に約3万6400羽だったのが、’22年度は約76％減少。都庁に寄せられた苦情・相談件数は’01年度に比べて約91％減った。なぜなのか？

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