'77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『絶対貧困』『遺体』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『格差と分断の社会地図』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』などがある。

石井 光太

「怒羅権」の知られざる現実が明らかに…！中国残留孤児２世「日本では年金月２万円以下」極貧の生活

「生きたい」という気持ちを逆手にとり…風俗嬢が明かす「自殺願望のある人も利用する」卑劣闇ビジネス

ノンフィクション作家・石井光太が社会・事件に迫る！衝撃ルポ

<figure id="attachment_327799" aria-describedby="caption-attachment-327799" style="width: 3883px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0d9a95d3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/55d972c2f6c89bfd6c6f117eddcac6c5.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327799" class="wp-caption-text">行き場を失った女性が闇バイトのターゲットになるケースは多い（写真はイメージで一部加工しています）</figcaption></figure>
<p>ＳＮＳを介して自殺願望のある人を誘い出し、犯罪に巻き込む事件が多発している。</p>
<p>今年７月にも、都内の風俗店で働く赤井環（25）が昏睡強盗と窃盗の疑いで逮捕された。</p>
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<p>赤井はもともと一般企業に勤めていた、ごく普通の女性だったらしい。事件当時は、新宿区内にある高級マンションで暮らしていた。</p>
<p>だが、一部報道によれば、会社員をしていた頃から夜の仕事を掛け持ちしていたという。違法ドラッグに手を染めて逮捕されたこともあったそうだ。周りの人たちの目には、彼女の奇行が目立つようになっていたらしい。そうしていくうちに、どんどん夜の仕事の深淵へと引きずり込まれていったに違いない。</p>
<p>そんな赤井が事件を起こしたのは、今年の３月のことだった。</p>
<p>この少し前から、赤井はＳＮＳで知り合った40代の女性とメッセージのやりとりをしていた。その中で40代の女性は自殺願望があることをほのめかしていた。金に困っていた赤井は、そのことを知ると、彼女をカモにして金銭を奪おうと考える。そして、こう言った。</p>
<p><span class="strongInContent">「一緒に死のうよ」</span></p>
<p>集団自殺をしようと誘ったのである。</p>
<h2>被害女性の実家へ「弁償してくれ」</h2>
<figure id="attachment_327800" aria-describedby="caption-attachment-327800" style="width: 1243px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4406c0cc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/87d5904976f6b86717f101561d523612.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327800" class="wp-caption-text">本業で高収入が望めなくなった風俗嬢が闇バイトへ（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>赤井はこの40代の女性を自宅のマンションに招き入れ、向精神病薬剤を見せた。これだけあれば楽に死ねる、と。そして赤井は、遺族のためという理由で遺書に金融機関の暗証番号を記させた。</p>
<p>個人情報を手に入れた赤井は、用意していた向精神病薬剤を40代の女性に飲ませた。彼女がこん睡状態に陥ると、赤井は自分では薬を飲まず、彼女の私物を漁って財布に入っていた１万5000円を奪い取り、さらにキャッシュカードで17万5000円を引き落とした。</p>
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<p>これだけでも悪質な犯罪だが、犯行はまだ終わらなかった。赤井は被害女性の実家に連絡をして、こう言ったのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「娘さんが暴れて、うちの家具が壊れた。弁償してくれないか」</span></p>
<p>そして、弁償代として約200万円を求めたのである。</p>
<p>後日、被害女性はこん睡状態から回復して一命を取り留めた。この時、財布や銀行口座から金がなくなっていたことが発覚し、事件化したのである。</p>
<p>この事件は、20代半ばの女性が単独で行う犯罪としては、極めて大胆不敵と言わざるをえない。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="犯人の同僚風俗嬢の戦慄告白"></div>
<figure id="attachment_327802" aria-describedby="caption-attachment-327802" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a0118a48"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/d1a058d05a14935ebb53686bf070dc9e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327802" class="wp-caption-text">一度犯罪の沼に落ちると抜け出すことは困難だ（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>一般企業に勤めていた彼女が夜の街に片足を突っ込んだところまでは想像できるとしても、そこからＳＮＳをつかって自殺願望のある女性を誘い出し、自殺に追い込んで金品を奪ったばかりか、実家にまで電話をかけて金を脅し取ろうとするとは……。</p>
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<p>実は今回、赤井と同じ店で働いていたという風俗嬢のＡ子から連絡が届いた。Ａ子によれば、次のような事情があるのではないかということだった。</p>
<p><span class="strongInContent">「コロナ後は、物価高や昼職があんまり稼げないということもあって、夜の仕事に来る人が増えています。でも、結局、夜の仕事で働く人の数が多くなりすぎて、店でベスト３に入るような一部の子以外はほとんど高収入は見込めないんですよ。</span></p>
<p><span class="strongInContent">ライブ配信だとか、素人の自作ＡＶだとか、いろんなものができているけど、そっちも人が多くなりすぎてる。みんなお金を求めて夜の仕事をはじめても、思うようにならないっていうのが現状なんです。それなのにホストとか、ドラッグとか、変なことだけ覚えてお金はどんどん必要になってきてしまう」</span></p>
<p>昔から、低収入や借金などで昼間の仕事の収入では足りないという人たちが、夜の仕事に流れる傾向はあった。そこで週に何度か働いていれば、それなりの額を稼ぐことはできた。</p>
<p>ところが、風俗で働くことのハードルが下がり、大勢の人が流れてくるようになった一方で、買春客は格差や少子化もあって減っている。それによって需要と供給が合わなくなって値崩れが起きているのだ。</p>
<h2>窃盗グループに売り払われる客の個人情報</h2>
<figure id="attachment_327806" aria-describedby="caption-attachment-327806" style="width: 3888px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ed30e4b3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/b21bd5f3cd74bd556511786d1e306cc9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327806" class="wp-caption-text">夜の街にうごめく男女の欲望（写真はイメージです）</figcaption></figure>
<p>Ａ子はつづける。</p>
<p><span class="strongInContent">「風俗の仕事だけでは足りないということで、もっとやばいことをするようになる人が増えているんです。赤井環の事件だってそんな感じだと思いますよ。私の周りにいる子たちもいろんなバイトをしています」</span></p>
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<p>風俗で働く女性の中には、もともと裏社会に片足を突っ込んでいることもあって、違法行為に走ることに抵抗がない者もいるそうだ。</p>
<p>Ａ子の知るある女性は、店で知り合ったハーフの風俗嬢に教えてもらい、盗品の転売を行っていたという。このハーフの風俗嬢は化粧品買い取り専門店に知人がおり、盗品でも買い取ってくれるルートを持っていたらしい。それで風俗業で知り合った女性たちに声をかけて盗品の転売をさせ、店側からちょっとしたマージンをもらっていたそうだ。</p>
<p>もっと悪質な女性は、金を持っていそうな客と外で個人的に会って住所を聞きだしたり、人気ホストと一晩寝て自宅の場所を確認したりする。それを夜の街で知り合った窃盗グループに教えるそうだ。そうすれば窃盗であげた利益の一部をもらうことができるという。</p>
<p>夜の街にはさまざまな犯罪者が跋扈しているので、その気になればツテを得るのは難しくない。それで、アルバイトとして犯罪に手を染めることがあるそうだ。</p>
<p>Ａ子は赤井が自殺願望のある人を誘い出した点について次のように述べた。</p>
<p><span class="strongInContent">「あの子が自殺したがっている人を見つけてお金を盗ろうとしたのは、そういう女性の方が簡単にだませると知っていたからじゃないですかね。夜の世界では、結構前からＳＮＳで自殺したがっている人を見つけ出してビジネスで利用したり、犯罪に巻き込んだりしようとすることが多いんです。</span></p>
<p><span class="strongInContent">みんな間近でそういうのを見ているし、自分自身がそうされたっていう子もいます。だから、あの子も、そういう手口を自然に覚えていったんじゃないですかね」</span></p>
<p>Ａ子によれば、風俗で働く女性たちの中には自殺願望を持っている人が多いらしい。では、その自殺願望のある人をターゲットにしたビジネスや犯罪とは何か。</p>
<p>その生々しい証言については【後編：風俗嬢が明かす「自殺願望のある人も利用する」卑劣闇ビジネス】で詳しく述べたい。</p>
<figure id="attachment_327807" aria-describedby="caption-attachment-327807" style="width: 3888px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e981901b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/d51bd24a444a7c0648416e924f28b82a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327807" class="wp-caption-text">繁華街にはさまざまな魔の手が潜んでいる（写真はイメージです）</figcaption></figure>
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<p>【<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/327809">後編：風俗嬢が明かす「自殺願望のある人も利用する」卑劣闇ビジネス</a>】</p>
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石井光太

風俗嬢による闇バイトが悪質化している。本業で高収入が望めないため高額な報酬を求めて副業を。自殺願望のある女性や親族から金を巻き上げ……。ノンフィクション作家・石井光太氏が描く戦慄のルポ前編だ。

自殺願望ある女性や親族から多額の金を…20代風俗嬢「本業では高収入望めない」戦慄の闇バイト実態

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