390万人が被災し、被害額は2兆円…「北京を守るために周辺の街を堀に!?」中国の驚くべき台風対策 | FRIDAYデジタル

390万人が被災し、被害額は2兆円…「北京を守るために周辺の街を堀に!?」中国の驚くべき台風対策

隣接する河北省は数百万人が被災し、4万軒以上の家屋が倒壊 死者・行方不明者100人超

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街も車も完全に水につかった北京郊外の街で住民の救助活動にあたるレスキュー隊員
街も車も完全に水につかった北京郊外の街で住民の救助活動にあたるレスキュー隊員

7月から8月にかけ中国を襲った台風について、波紋を広げている発言がある。

「北京の洪水圧力を軽減せよ。首都を守る『護城河(ごじょうが)(堀)』の役割を果たせ」

こう指示を出したと中国の各メディアが報じたのは、北京市に隣接する河北省のトップ倪岳峰(げいがくほう)氏だ。つまり倪氏は河北省が「堀」として犠牲になり、北京の豪雨被害を減らせと命令したのだ――。

台風5号は、中国東部を中心に甚大な損害をもたらした。7月末から8月頭にかけての北京の降水量は744㎜以上となり、観測記録の残る140年間で過去最多。死者・行方不明者は100人を超えている。

「北京では50人以上が亡くなるか行方がわからなくなっていますが、被害のほとんどが郊外で中心部では冠水などの損害はあまり見られません。一方で隣に位置する河北省の被害は甚大です。約390万人が被災し、4万軒以上の家屋が倒壊。被害総額は960億元(約2兆円)にのぼると思われます」(全国紙中国駐在記者)

なぜ北京中心部の被害は軽微で、河北省は深刻なのだろうか。背景には冒頭で紹介した、河北省トップの命令があるようだ。中国情勢に詳しい、ジャーナリストの高口康太氏が説明する。

「中国では『蓄滞洪区(ちくたいこうく)』と呼ばれる、溢(あふ)れた水を流し込む地域が全土で100ヵ所ほど指定されています。北京などの大都市を水害から守るために、『堀』として使用されるんです。今回は7つの蓄滞洪区が使われましたが、その内2つがある河北省涿州市の被害が最も甚大でした」

日本にも、治水プロジェクトにより水を流し込む遊水地があるが基本的に無人だ。しかし被害の大きかった涿州市では約70万人が生活。さらに、損害が広がった背景には「当局のズサンな対応があるのでは」と高口氏は続ける。

「多くの住民に、水を流し込むことを事前に伝えていなかったようです。『蓄滞洪区』の制度自体を知らない住民も多数いたとか。海外メディアは『なんの連絡もないまま水が流れてきた』『雨が止(や)んでからも水量が増した』と、地元民の不満の声を伝えています」

過去の冠水記録やハザードマップ(被害想定地図)が、住民に配布されることもなかったようだ。

「北京には国家主席の習近平氏が肝入りで進める、副都心プロジェクトがあります。しかし当該地は、もともと沼沢地(しょうたくち)で浸水しやすい。習氏の重大計画に配慮して多くの蓄滞洪区を開放したため、被害が大きくなったと批判的な見方をする人も多くいるんです」

北京周辺の街を水没させた巨大台風。被害拡大には、人災の要素も少なからず影響していた。

河北省や郊外に比べ、北京中心部では台風の猛威がほとんど感じられない
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水没した北京郊外の車。中心部(上)と比べると違いは一目瞭然
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記録的な降雨量となった台風5号は中国各地で家屋を押し流した
記録的な降雨量となった台風5号は中国各地で家屋を押し流した

『FRIDAY』2023年9月1日号より

  • PHOTOAP/アフロ ロイター/アフロ

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