<h3><span class="strongInContent">猛暑も引き金に…「値上げしてもコスト上昇をカバーできない」</span></h3>
<p>牛乳やヨーグルトなど乳製品を日常的に購入している家庭では最近、値上げが相次ぎ、高くなったと感じている人が少なくないのではないか。諸コストの上昇が背景にあるが、一連の値上げでもコスト上昇分をカバーしきれていないという。経営難で酪農家の廃業が止まらない。国産牛乳の入手が難しい時代がくるかもしれない。何が起きているのだろうか。</p>
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<figure id="attachment_328136" aria-describedby="caption-attachment-328136" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="46c87835"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/7e610efd5d2bef7b51cf9387abead4e5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328136" class="wp-caption-text">経営難で酪農家の廃業が止まらない（写真はイメージ／PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">再々値上げ…</span></h3>
<p>よつ葉乳業（北海道）は「よつ葉牛乳」などの乳製品を製造販売する。同社のホームページ（ＨＰ）を見ると、今年８月１日から製品価格を値上げし、成分無調整牛乳で平均８％の値上げなどとなっている。同社は今年４月１日にも、成分無調整牛乳で平均８％などの値上げを実施したばかり。</p>
<p>よつ葉乳業は消費者の理解を得ようと、値上げの理由についてＨＰで詳しく説明している。値上げの理由は、①牛の飼料代の高騰、②燃料や資材価格の高騰の二つだ。飼料はトウモロコシや大豆かすなどの穀物や牧草で、多くを輸入している。昨今の円安も輸入価格の上昇要因となる。</p>
<p>コスト上昇分はすべて値上げすればいい、というわけでもない。</p>
<p><span class="strongInContent">「値上げすると、需要は確実に落ちる」</span></p>
<p>と、磯沼牧場（東京都八王子市）の経営者は話す。乳製品の相次ぐ値上げでも、</p>
<p><span class="strongInContent">「ここ１、２年のコスト上昇分に届いていないという酪農家が多いと聞いている」</span></p>
<p>と話すのは、生乳生産者や販売者などの業界団体「Ｊミルク」の関係者。コスト上昇で大きいのが飼料という。このほか、夏が暑いと牛の体調が悪くなるため、牛舎で扇風機を回すなど電気代がかかり、冬が寒いと灯油を焚いて暖かくするなど、光熱費もばかにならない。大規模な酪農家になると、</p>
<p><span class="strongInContent">「電気代だけで年間1000万円とか2000万円になる」（「Ｊミルク」関係者・以下同）</span></p>
<p>と言う。飼料や資材を運ぶトラックのガソリン代も上昇している。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="資金の返済計画が崩れた…"></div>
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<figure id="attachment_328137" aria-describedby="caption-attachment-328137" style="width: 5616px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="bc06613f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/a0122a722394d8b5be71aadc9f6bbb33.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328137" class="wp-caption-text">コロナ禍の自宅待機による学校給食の取りやめなどで、牛乳など乳製品の需要が急減…</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">コロナ禍「資金の返済計画が崩れた」</span></h3>
<p>酪農家は、こうした足元のコスト高のほかに、構造的な問題を抱えており、廃業する人が加速しているという。</p>
<p>国内の総需要量は生乳換算で年間1200万トンくらい。このうち国内生産が750万トン前後。足りない分は輸入している。酪農業界は国内で増産するため、この10年くらい、借金で増産投資をしてきた。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「酪農・畜産業は初期投資や規模拡大の投資が、農業のなかでも水田・畑作に比べ大きい」</span></p>
<p>最近の規模拡大の投資は酪農家にもよるが、数千万円とか、数億円、数十億円の規模になっているところがあるという。</p>
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<p>そこに、コロナ禍の自宅待機による学校給食の取りやめなどで、牛乳など乳製品の需要が急減した。酪農家は規模拡大投資をしたものの、</p>
<p><span class="strongInContent">「資金の返済計画が崩れた」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>と、「Ｊミルク」の関係者は困惑を隠せない。</p>
<p>さらに、ロシアが欧州の穀倉庫といわれるウクライナに侵略して、飼料やエネルギーの価格が高騰し、多くの酪農家はコスト上昇の圧迫をまともに受けることになった。</p>
<p>酪農家は後継者難に、高齢化もあって、担い手は長期的な減少傾向にあった。国内の酪農家戸数は農林水産省の畜産統計で今年２月、１万2600戸。</p>
<p>酪農指導団体の中央酪農会議の関係者は、酪農家戸数の減少について、</p>
<p><span class="strongInContent">「これまで３～４％くらいの減少だったのが、直近は７～８％くらいの減少になっており、異常な落ち込み」</span></p>
<p>と話す。</p>
<p>酪農家にとっては、規模拡大投資の資金返済が本格化するときに、収入が少なくなり、資金繰りが苦しくなっているという。こうした事態が好転する見通しは立っていない。</p>
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<h3><span class="strongInContent">追い討ちをかける「子牛の価格低迷」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>酪農家にとって、さらに追い打ちをかけているのが、子牛の価格低迷。枝肉相場が低迷するなかで、飼育コストが上昇しており、子牛の市場価格が急落している。Ｊミルク関係者によると、酪農家は雌の牛から乳を搾り、ホルスタインの雄の子牛が生まれると、市場に出すという。</p>
<p><span class="strongInContent">「酪農家の副収入だった子牛の価格が低迷し、トリプルパンチ」（中央酪農会議関係者）</span></p>
<p>国内の酪農家には経営の苦しい状況が続いている。消費者にとっては、安心で安全な国内産の牛乳など乳製品が入手しにくい時代がくるかもしれない。食料安全保障という観点からも、難しい局面を迎えている。</p>


浅井秀樹

アフロ

値上げが相次ぐ牛乳やヨーグルトなど乳製品。諸コストの上昇が背景にあるが、一連の値上げでもコスト上昇分をカバーしきれていないという。経営難で酪農家の廃業が止まらない。国産牛乳に何が起きているのだろうか。

「このままでは国産の牛乳が飲めなくなる」値上げが追いつかず…酪農家の「廃業相次ぐ」特殊事情

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