<figure id="attachment_265609" aria-describedby="caption-attachment-265609" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="90899185"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/d866d4b6d8a106251a6439a75b3705b4.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-265609" class="wp-caption-text">昨年6月、東京駅を後にする六代目山口組・司忍組長。’05年に組長に就任して以来、今年で18年目を迎えている</figcaption></figure>
<p>国内最大の暴力団「6代目山口組」が分裂し、脱退した「神戸山口組」との対立抗争は‘23年８月27日で８年となった。６代目山口組は巨大勢力を維持しているが、神戸山口組は傘下の中核組織の離脱が相次ぎ、勢力の縮小傾向が止まらない。</p>
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<p>警察庁が公表している最新データを比較すると‘22年の６代目山口組の構成員は約3800人で、神戸山口組は約330人となり10分の１以下となっているのが実態だ。勢力差に大きな開きがみられるが、神戸山口組側が組織を解散するような動きはなく、対立抗争は９年目に突入することになる。</p>
<p>6代目山口組が分裂したのは‘15年８月のことだった。分裂時の6代目山口組の構成員は約6000人で神戸山口組は約2800人だった。勢力差では２対１以上の開きがあったが、当初は神戸山口組に勢いがあった。6代目山口組から処分を受けて組織を離れていた組織を加入させたほか、6代目山口組の傘下組織の移籍もあった。当初はにらみ合いが続いていたが、事務所への発砲や大型ダンプをバックで突っ込ませるなどのほか、偶発的な事件も含めて対立抗争が原因とみられる事件が全国各地で続発していた。</p>
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<p>しかし、6代目山口組側に転機となる出来事が起きる。ナンバー２の若頭・高山清司（75）が‘19年10月に出所したのだ。その直前、神戸市内で当時は神戸山口組の中核組織だった山健組の組員２人が同時に射殺されたほか、同年11月には尼崎市内で神戸山口組幹部が自動小銃で数十発の銃弾を浴びて殺害される残忍な事件も発生した。当時、警察当局で組織犯罪対策を担当していた捜査幹部は、</p>
<p><span class="strongInContent">「6代目（山口組）の傘下組織の組員たちが、高山の出所を機に自らの力を誇示しようと走り出した。そもそも、神戸（山口組）が脱退したのも、高山が服役していて社会不在だったのをチャンスとみて決行されたはずだ」</span></p>
<p>との見方を示していた。その後、次第に6代目山口組が引き起こす事件数が圧倒的となる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="趨勢を決した「あの名門武闘派組織」の離反"></div>
<figure id="attachment_287115" aria-describedby="caption-attachment-287115" style="width: 4001px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="529c1617"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/RE_SH537360.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-287115" class="wp-caption-text">今回の抗争のキーマンの一人である六代目山口組の高山若頭</figcaption></figure>
<p>神戸山口組は山健組組長の井上邦雄(75)、宅見組組長の入江禎（78）、池田組組長の池田孝志（78）、侠友会会長の寺岡修（74）、正木組組長の正木年男（76）の５人が中心となり、計13組織で結成された。しかし、6代目山口組が優勢となるなか、これらの有力組織の離脱が相次ぐ。</p>
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<p>特に山健組は５代目山口組組長の渡辺芳則を輩出した名門として知られていたが、井上から組長の座を継承した後任の組長が’20年に山健組を率いて脱退。資金力が豊富なことで知られた池田組も同時期に組織を離れた。</p>
<p>ここで神戸山口組にとって痛手だったのは、山健組が’21年９月に6代目山口組に復帰したことだった。池田組は独立組織としての活動が確認されため’21年11月に暴力団対策法に基づき指定暴力団として指定された。’21年の6代目山口組の構成員は約4000人に対して神戸山口組は約510人と差はさらに開いた。</p>
<p>‘22年にはさらに組織縮小の動きがあり、神戸山口組傘下の宅見組も離脱を表明し、侠友会は解散した。</p>
<p>分裂劇をウオッチし続けてきた指定暴力団幹部は、</p>
<p><span class="strongInContent">「分裂して８年になるが、（神戸山口組組長の）井上は本当に何をしたかったのか分からない。逆盃ということをしたのだから、その場からケンカになるのは分かっていること。だが、井上は打開策を講じず、神戸（山口組）は押されたままとなった。それで多くの若い衆が神戸を去っていった」</span></p>
<p>と批判的な視線を向ける。</p>
<p>その上で、さらに疑問を投げかける。</p>
<p><span class="strongInContent">「神戸（山口組）にとって、最も大きかった損失は、（井上の後任の）山健組組長が組織を率いて去ったことだろう。元の親分を置いて行ってしまったのだから。世間にも説明できない状況だった。さらに、6代目（山口組）に復帰してしまった。これは痛かったはずだ」</span></p>
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<p>井上をリーダーとした神戸山口組の結成に参加した最高幹部たちについても、さらなる疑問を呈する。「なぜ、賢い（宅見組組長の）入江や（池田組組長の）池田らが井上を担いだのか分からない。（侠友会会長だった）寺岡にしてもヤクザとして筋を通すことは曲げないなかなかの男。人としても立派といっても過言ではない。このような人たちがが、なぜ井上に付いて行ったのか今でも疑問だ」</p>
<p>警察当局で組織犯罪対策を担当する前出の捜査幹部も、</p>
<p><span class="strongInContent">「6代目山口組に押されたままで、神戸山口組は組織が縮小していくばかりだった。井上はふと気が付いたら、周囲に誰もいなくなったというのが現状ではないか」</span></p>
<p>と指摘した。</p>
<p>‘22年の勢力差は6代目山口組の約3800人に対して神戸山口組は約330人と10分の１以下と挽回は不可能な状態だ。宅見組については池田組同様に独立組織として今後、指定暴力団に指定される見通しだ。神戸山口組は四分五裂の状態だが、脱退した組織は今後も活動を続ける姿勢を見せている。９年目に入っても対立抗争の構図はしばらく続きそうだ。</p>


ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』（文藝春秋）

尾島正洋

濱﨑慎治　

8月27日に「山口組分裂抗争」が9年目を迎える。節目を迎え、激動の８年間と今後の展望について、ノンフィクション作家の尾島正洋氏が切り込む。

光る高山若頭の存在感、名門武闘派組織の離脱…9年目を迎える「山口組分裂抗争」軌跡とこれから

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