<figure id="attachment_329102" aria-describedby="caption-attachment-329102" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="94851a3e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/41ee92ed03a1549aa40af2bc28ef1025.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329102" class="wp-caption-text">映画『仁義なき戦い 頂上作戦』の製作発表会見（左から）菅原文太さん、梅宮辰夫さん、松方弘樹さん、小林旭さん（’73年）</figcaption></figure>
今年は菅原文太さんの生誕90周年で、CS放送の東映チャンネルが『生誕90年記念「菅原文太主演作特集Vol.1」』として、8月から2ヵ月にわたり、文太さんの代表作『仁義なき戦い 4Kリマスター版［R15＋］』など主演10作品を放送している。
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文太さんは’33年8月16日生まれで、’14年11月28日に81歳で亡くなるまで、『仁義なき戦い』シリーズや『トラック野郎』シリーズをはじめ、数多くの映画やテレビドラマに出演し、日本を代表する俳優の一人として活躍した。
文太さんの人気、俳優としての地位を不動にしたのが『仁義なき戦い』（’73年、深作欣二監督）だった。
終戦直後の広島で起きた広島市の組と呉市の組の暴力団抗争が、日本最大の暴力団も関与する大抗争に発展した「広島やくざ戦争」の当事者の一人、美能幸三・美能組組長の獄中手記をもとに、飯干晃一氏が週刊誌に連載したノンフィクション『仁義なき戦い』を深作欣二監督、菅原文太主演で映画化して大ヒット。任侠路線に代わる東映の新たなドル箱としての実録路線としてシリーズ化された。
’72年12月、文化部映画担当記者だった当時、東京・銀座の東映本社で行われた製作発表を取材した。文太さん（役名は広能昌三）と一緒に出席した元美能組組長・美能氏は
「私は嘘は書かなかった。これまでの広島の組の争いで、何十人もの人間が死んでおる。しかし、やくざの社会の中でなんといっても、親分に盾を突くのが一番悪いことなんや。それをわしがやったこと。そして手記を書いたこと。その辺を読み取ってほしいんですわ」
などと語っていた。物静かな話しぶりだったが、醸し出す元本物の存在感に圧倒された。
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登場人物や組織名は変えてあったが
「あくまでドキュメンタリーに徹したい」
という深作監督の〝実録路線〟のリアルなドラマ展開や、金子信雄が巧みに演じる優柔不断な組長や、菅原文太をはじめ、松方弘樹、渡瀬恒彦、梅宮辰夫らが演じる組員たちの怒号や銃弾が飛び交い、裏切りと陰謀が渦巻く〝仁義なき〟やくざ群像劇が人気を呼び、’73年1月の公開時には、東京・銀座の丸の内東映の一画を1周する長蛇の列ができるなど記録的大ヒットとなった。
文太さんは
「普通だったら、例えば『まむしの兄弟』なんかの場合ですと、100％あるところを、120％も菅原文太を見せようとする。でも、この『仁義なき戦い』では、それを半分ぐらいに抑えたんです。
〝実録〟とついているんで菅原文太は引いたんです。結果としてはこれがよかったんじゃないですか」
と語っていた。
<div data-friday-nextpage-lead="「物申す俳優」として私生活でも…"></div>
それ以来、撮影現場や製作発表などで何度か文太さんを取材したが、演技に関することだけでなく、所属していた東映などを相手に、歯に衣着せぬ批判・主張・提言を、ときに熱弁し、またクールに持論を語り続け、「物を言う」俳優といった印象が強かった。
『仁義なき戦い』シリーズが5作目の『仁義なき戦い 完結編』で完結してから、『新仁義なき戦い』シリーズ（‘00年まで5作製作された）の1作目に主演した’74年12月、文太さんは
「東映には言いたいことをどしどしぶつけていくつもりだ」
と言い、
「いつまでも実録・仁義なき戦いで追っていっても消耗するだけ。『仁義なき戦い』を超えようとすれば冒険がないとダメ」
とズバリ指摘した。
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そして愛川欽也と共演した『トラック野郎』シリーズ（’75年～’79年）で、マドンナに一方的に惚れ込むコミカルな演技も見せるなど新境地を見せてヒットし、全10作が製作された。
さらに、NHK大河ドラマ『獅子の時代』（’80年）では、幕末から明治を生き抜く会津藩の下級武士・平沼銑次役で主演して話題を呼んだ。このとき、文太さんを取材すると
「NHKに大部屋がないのは俳優を軽視している」
と批判して対策を考えるよう要求し、NHKを慌てさせたことがあった。
「映画なら撮影所に一人部屋、二人部屋、五人部屋、十人部屋、大部屋があって、仕出し（エキストラ）だって、畳の一畳か二畳はもらえて、ごろっと横になれる。役者は肉体労働。休める場所、スペースは全員に与えられてしかるべき。
先輩役者や大先輩の役者さんが、部屋なしで（控室の）鏡の前に座ってぽつんと待っている光景も見ている。個室をもらってもケツが落ち着かない。かといって交代しますというのも偉そうで」
と語っていたのが印象的だった。
NHKの担当プロデューサーは
「基本的にドラマの芯になる人には個室を用意するようにしているが、絶対数が足りないのは確か。それが当たり前と、これまでは役者も私どもも思っていたので文太さんの指摘は新鮮でした」
と語っていた。
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一方で、テレビの場合はドラマだけではなくバラエティ番組や歌番組、教養番組などあって出演者は膨大な数になるので、俳優のための部屋を増やすのは事実上難しい面があり
「今は飽和状態で工夫が必要」
と語っていた。
’77年6月、文太さんから家に来てくれと言われて都内の自宅に行くと、隣りの幼稚園が設置した境界線上のフェンスが約20センチ食い込んでいると主張。幼稚園経営にも問題があるなどとして提訴するという。
5年前に引っ越してきた自宅を同年5月に新築したのを契機に、隣家との境界に塀を作ろうとして幼稚園側と話し合いを持ったがこじれていた。義理人情に篤い文太さんを刺激したらしかった。
この裁判は幼稚園側が名誉棄損と損害賠償で逆提訴などして続き、最終的に和解したが、文太さんは
「役者といえども一市民としてやるべきことはやらなければということです」
「白黒（裁判の判決）はどっちでもいい、幼稚園問題は継続して戦う」
と言って「幼稚園問題を考える会」を設置するなど活動をしたのも「物申す俳優」といわれた文太さんらしかった。
『仁義なき戦い』『トラック野郎』など、幅広い役柄を熱演して観客を魅了した菅原文太さんは、様々な主張で各方面に一石を投じた「物申す俳優」として存在感を発揮し続けた俳優だった――。

Webマガジン『PlusαToday』を始め、芸能、映画、ハリウッド情報などの記事を執筆。日本映画ペンクラブ会員

阪本 良（ライター、元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長）

共同

『仁義なき戦い』や『トラック野郎』シリーズなどに主演し’14年に亡くなった菅原文太さん。現在は生誕90周年を記念して映画などが続々放送されている。そんな彼の素顔は……

「生誕90周年」菅原文太さん　『仁義なき戦い』NHK大河ドラマなどで見せた「物申す俳優」姿

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