中平 良

<figure id="attachment_329146" aria-describedby="caption-attachment-329146" style="width: 876px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="059d0994"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/4fe6d5cd41ef64018dcdb558efd593be.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329146" class="wp-caption-text">懲役23年が確定した服部被告（PHOTO：蓮尾真司）</figcaption></figure>
’21年10月31日、走行中の京王線特急電車で乗客をナイフで刺し、車両に火を付けたとして、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた無職・服部恭太被告（26）。
映画『バットマン』の悪役・ジョーカーのコスプレをしていたことでも世間の注目を浴びた。
東京地裁立川支部は7月31日の判決で「自分勝手な理由から多数の乗客の生命を狙った無差別的な犯行であり、凶悪で卑劣」と、懲役23年を言い渡した。
そして8月14日までに検察官・弁護人双方が控訴しなかったことから判決が確定した。
服部被告は収監され、これから23年という長い月日を刑務所で過ごすことになる。一方、事件から2年近くたったいまでも、多くの被害者は心や体に傷を負ったままだ。
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事件当日、警備員の仕事に向かうため同じ電車に乗り、胸を刺された男性Aさん（72、年齢はすべて事件当時）は事件の翌年3月に退院したあと歩くことも困難になっている。手のしびれで字をうまく書けなくなり、箸を上手に持てないため、手で食べることもあるという。長く休職あつかいだった職場を昨年末に退職した。
いまでもリハビリに通うAさん。証人尋問で検察官に「被告人に言いたいことはあるか？」と問われると、
「責任とれないなら、なんもすんな。最低ですね。謝りもできない人間は相応の罪をつぐなってほしい」
と怒りをにじませた。
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そして論告では、Aさんの代理人が「被告人に対しての、『決して許せない』という気持ちは変わりません。被害弁償についても具体的な計画はありません。更生は困難であり、無期懲役が相当」と意見を述べた。
また、服部被告から逃げる途中で生まれてはじめて過呼吸になったという女性Bさん（21）は、検察官に「事件後、日常生活になにかはありましたか？」と聞かれると、
「男のひとが怖くなりました。外に出られなくなり、学校やアルバイトに行けなくなりました。生きた心地がせず、電車に乗れなくなりました。面接を受けられないので、就職活動ができませんでした。自分だけではなく、家族や周りの人にたくさん迷惑をかけました。つらかったです」
と嗚咽した。
そして論告では、Bさんの代理人が
「被告人は自分のことしか考えていません。そして生きづらさを抱えるひとを増やしました。なにがあっても、こちらの世界に来ないでほしい。同情するひとがいても、わたしは絶対に許さない」
と気持ちを読み上げた。
AさんやBさんだけでない。証言台に立った被害者の多くが、事件後も日常生活に負担を感じたと証言している。
<div data-friday-nextpage-lead="自分としか向き合っていない"></div>
<figure id="attachment_329147" aria-describedby="caption-attachment-329147" style="width: 715px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="92f6193d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/4c3b577731c63f90280fc6184d5f8945.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329147" class="wp-caption-text">捜査員に身柄を確保される服部被告（画像：「＠siz33」さん）</figcaption></figure>
3mほどの距離で服部被告がジッポライターに点火するのを見た男性（48）は、事件以降、電車に乗るのが怖くなり、空いてる車内で移動するひとを見るとフラッシュバックで体が震えるようになったという。そして、
「仕事中に事件が頭をよぎり、業務に支障が出ました。それで昨年から休職して、今年のはじめまで心療内科にかかっていました。それでも、なんとか今月から復職できました」
と最近まで事件の影響に苦しんだと話した。
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「すぐ後ろでバンという破裂音がして、振り返ると炎が見えた」と証言した男性（29）は「事件後しばらくは食欲がありませんでした。そして翌年の3月まで、週1程度、心療内科に通いました。いまでも新幹線など、一定区間、駅に止まらない電車に乗ると緊張します」といまだに事件の影響に苦しんでいる。
ほかにも、被害者の多くが「事件後、連結部分から出てくる人に恐怖を感じるようになりました」「電車に乗ると、緊急ボタンの場所を確認するようになりました」「事件直後は長い区間を止まらずに走る電車は怖くて、乗るのを避けていました」と、しばらくは事件の恐怖を忘れられなかったという。
そして
「この年齢で家族にも友人にも迷惑をかけてしまいました。リハビリを続けていますが、体はもとに戻りません。妻はわたしのことを心配してくれています。本当に迷惑をかけました」（Aさん）
「電車に乗ると過呼吸になり、救急車を見ると事件を思い出します。周りのひとにたくさんの迷惑をかけました。わたしが悪いわけでもないのに、申し訳ない気持ちになります」（Bさん）
と、AさんとBさんの代理人がいまの二人の気持ちを読み上げたが、被害者の多くが「職場に迷惑をかけた」「家族や友人に心配をかけた」と自分のことを責めていた。
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判決理由の言い渡し後、竹下雄裁判長は、「23年は長い期間になります。被害者との関係は終わったわけではありません。事件や被害者のことを考えて生活してください」と淡々とした口調で語りかけた。
たまたま服部被告と同じ電車に乗りあわせただけなのに、事件の後遺症に苦しみ、さらには「申し訳ない」という気持ちを抱えながらこれまで過ごしてきた多くの被害者。
被告人質問のなかで「いまの被害者への気持ちは？」と問われた服部被告は、「被害者のことを考えると、私のような人間に生きてる意味はないんじゃないかという気持ちと、これから罪をつぐなうためには生きていかなければいけないという考えで、葛藤があります」と答えた。
その発言からは、いまだ自分としか向き合ってないように感じられた。
<figure id="attachment_329148" aria-describedby="caption-attachment-329148" style="width: 3546px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1629ed57"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/c454c8c7ad90f5a9de5e89076f0a7218.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329148" class="wp-caption-text">服部被告のFacebookより</figcaption></figure>

中平良

’21年10月、走行中の京王線特急電車で乗客をナイフで刺し、車両に火を付けた無職・服部恭太被告（26）に対し、懲役23年が言い渡された。事件から２年がたとうとする今も、被害者の怒りは収まっていない。

懲役23年確定！京王線ジョーカー事件法廷で語られた「被害者の苦しみ」と「被告の身勝手すぎる発言」

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