芳賀  慧太郎

<figure id="attachment_329218" aria-describedby="caption-attachment-329218" style="width: 2268px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ef554e3a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/d92a8975c779aa8ed611ad5268ff1122.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329218" class="wp-caption-text">被害にあった横浜家系ラーメン「武道家　心」の店主・米田さん</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「朝方、警備会社から『ガラスが割られている』という連絡が入りました。『イタズラかな』と思いつつも急いで店に駆けつけたら、なんと券売機が消えていたんです。まさか券売機ごと盗まれるなんて……」</span></p>
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<p>千葉県佐倉市の横浜家系ラーメン「武道家　心(しん)」の店主・米田(まいた)博正さんは当時の衝撃を振り返る。７月28日早朝のことだった。券売機に入っていた現金は３日分の売上を含むおよそ70万円。発券機自体の価格は１台約70万円で、ガラスを交換する費用などを含めると被害総額は150万円近くに上るという。</p>
<p>この時点で被害は甚大だが、さらに追い打ちをかける問題が米田さんの脳裏に浮かんだ。それは家系ラーメンの〝根幹〟に関わる部分だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「昨年５月の創業以来、継ぎ足しで作り続けてきたスープです。厨房は荒らされてはいませんでしたが、店内に窃盗犯が踏み込んだことは明らかで、スープにイタズラをしていないという確証はない。私自身、店に入って最初に思ったことは『気持ち悪い』でしたから。そんなスープをお客様にお出しすることはできない。断腸の思いで廃棄することにしました」</span></p>
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<p>さかのぼること14年前の’09年。当時、都内の繁華街でホストをしていた米田さんは昼職への転身を決意。タウンワークで目に留まった「二代目武道家」（東京都中野区）にアルバイト店員として入店した。青森県出身の米田さんにとって家系ラーメンは馴染みがなく、家系は「やけい」と読むと勘違いしていたという。のちに社員に登用されてからは首都圏の系列店を転々とした。</p>
<p>５店舗以上で修行を積み、ようやく開業した店が「心」だった。「武道家　本店」（東京都新宿区）からは独立の〝儀式〟として「魂のタネ（種）スープ」が送られ、それを寸胴に注ぐことで「心」の歴史がスタートした。店主として悪戦苦闘した日々も、このスープとともにあったのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「実はスープを捨てるまでは、不思議と感情は波立ちませんでした。下を向かず前に進もうという気持ちが強かったからかもしれません。ところが寸胴から雪平鍋を使って一杯ずつスープを捨てていると、次第に怒りの感情が湧き上がってくることに気づきました。</span></p>
<p><span class="strongInContent">うちの歴史は１年ちょっとですが、このスープは本店が創業した’06年から17年間繋げてきたものです。みんなの想いや、思い出がたくさん詰まったスープを、何でこんな形で捨てなくてはならないんだと…」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="店主の覚悟と本店の心意気とは…"></div>
<p>X（旧Twitter）で、</p>
<p><span class="strongInContent">《このスープが千葉に来るまで武道家本店でいろんな人が真剣に自分の仕事と向き合ってできたスープだぞ。物は金で買えても職人の情熱や気持ちは買えねーぞ。これを俺がどんな気持ちで捨てるか考えろや》</span></p>
<p>と、犯人に投げかけた。普段、荒っぽい言葉は呟かないように心掛けているが、抑えることができなかった。重い気持ちで「本店」に報告した。</p>
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<p><span class="strongInContent">「本店店主の滝坂（滋晃）さんに事情を説明し、無理を承知でまたスープを分けてくれないかとお願いしました。すると、ありがたいことに『いいよ。取りに来なよ』と。すぐに車で東京に向かって、タネスープを30リットルほど譲り受け、急いで千葉に戻って仕込みを始めました。</span></p>
<p><span class="strongInContent">通常、水からスープを作るとなると最低３日はかかりますが、タネスープのおかげでなんとか翌日の夕方に開店することができました。徹夜作業で頭は朦朧としていましたけどね（笑）」</span></p>
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<p>その後、事件を知った客が続々と応援に駆けつけているという。店主として落ち込む姿は見せられないと気丈に振る舞ってはいたが、親切なお客様や仲間たちの支えは大きく、</p>
<p><span class="strongInContent">「人を傷つけるのも人だけど、人を助けるのも人なんだとしみじみ思いました」</span></p>
<p>と米田さんは目を細める。家系ラーメンに関わる人たちの〝心〟に支えられ、とろみの強い独特なスープは復活を遂げることができた。卑劣な窃盗犯にも負けない「心」の第二章が幕を開けた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="盗まれた券売機とスープを仕込む米田さん"></div>
<figure id="attachment_329230" aria-describedby="caption-attachment-329230" style="width: 2268px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1079e3ab"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/e399f4b7e530b301b2a07768399193fe.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329230" class="wp-caption-text">発見された旧券売機から札を回収し、新券売機に取りつけている。「事件のことを忘れないため」。窃盗犯がこじ開けた跡が生々しい</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_329227" aria-describedby="caption-attachment-329227" style="width: 2268px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d4b99a80"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/9204665dc0a46bd6a576be54cfc2e050.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329227" class="wp-caption-text">「券売機も大切な仲間」と米田氏</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_329214" aria-describedby="caption-attachment-329214" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="43c14c06"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/5a3a82f693a13d18fa8997d5238f3767.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329214" class="wp-caption-text">営業再開当初は以前とは異なる味だったが、その後１ヵ月間にわたり仕込みを繰り返し、今では事件前の味に戻ったという</figcaption></figure>
<figure id="attachment_329228" aria-describedby="caption-attachment-329228" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="46e7f6ec"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/0d41f9ec06c17e773724a69a85494537.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329228" class="wp-caption-text">家系ラーメン店らしい外観</figcaption></figure>


芳賀慧太郎

7月28日、千葉県佐倉市の横浜家系ラーメン武道家 心（しん）のガラス戸が破られ、現金が入った券売機が持ち去られた。店長は迷った末、開業時から守ってきたスープを捨てる苦渋の決断を下した。その理由は...

家系ラーメンファンに与えた衝撃と感動！券売機盗難被害でスープ全て廃棄「店主の覚悟と本店の心意気」

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