聴かずにいるのは勿体ない! ここが凄いぞ『ヒプノシスマイク』 | FRIDAYデジタル

聴かずにいるのは勿体ない! ここが凄いぞ『ヒプノシスマイク』

漫画『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』でお馴染み・服部昇大氏とともに、ヒプマイの魅力に迫ってみた

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今、「アニソン」や「キャラソン」といった枠を超えたひとつの音楽プロジェクトが、大きなムーブメントを巻き起こしている。それが、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』だ。

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』キービジュアル。総勢12名の個性豊かなキャラクター達が勢揃い。木村昴、浅沼晋太郎、速水奨などのベテラン声優陣に加え、若手のホープ・斉藤壮馬や新人声優達も参加している
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』キービジュアル。総勢12名の個性豊かなキャラクター達が勢揃い。木村昴、浅沼晋太郎、速水奨などのベテラン声優陣に加え、若手のホープ・斉藤壮馬や新人声優達も参加している

2017年に始動したヒプノシスマイク(通称『ヒプマイ』)は、キングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSが手掛ける、声優による音楽原作キャラクターラッププロジェクト。『ダ・ヴィンチ』や『anan』といった雑誌でも続々と特集が組まれるなど、カルチャーの最前線にあるコンテンツとして大きな注目を集めている。

「僕は昔からHIP HOPが好きで、ヒプマイのことも結構早い段階でSNSで拡散されてきて知ったんです。話題になっているので動画を見てみたら、音楽的にもかなり本格的だし、声優さんのスキルも高い。特に木村昴さんは、素性を知らないで音源だけ聞いていたら完全に『プロのラッパーかな?』と思うレベルで、凄いな、と驚きました。日本のラップ音楽界全体を見ても、今はヒプマイが一番盛り上がってるんじゃないのかな? と一HIP HOPファンとしては感じます」

こう語るのは、邦楽HIP HOPを解りやすく紹介した漫画『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』の著者でもあり、生粋のヘッズ(※HIP HOP好き)でもある漫画家の服部昇大氏だ。(以下、「」内は服部氏のコメント)

服部氏も言う通り、第1弾MV「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」が発表された際の反響は大きく、当時全く無名のプロジェクトだったにも関わらず、YouTube急上昇ランキングにランクインしたほどだった。(2019年2月現在、視聴再生数は1344万回を突破)。

「最初は、YouTubeに上がっている動画と、公式HPのイラストと、テキストでの設定しか無いという状況に『えっこれだけ?』とビックリもしました。ゲームやアニメといった元々の原作があって発売されるようなキャラソン(※キャラクターソング)とも違うし、アニソン(※アニメソング)でもない。勿論、ディビジョンのような設定もあるし、それぞれのキャラ設定もあるけれど、あくまでメインは『曲』で、『ラップ』なんだな、と。そういうのは今までに見たことが無かったし、新しいなと感じました」

ヒプマイには、「人の精神に干渉することのできる特殊なマイク・『ヒプノシスマイク』を通し、ラップで戦う」、「各キャラクターは『イケブクロ』『ヨコハマ』『シブヤ』『シンジュク』等の区画(ディビジョン)で生活し、領土争い(テリトリーバトル)を繰り広げている」といった各種設定が存在しているものの、それらは公式ホームページ上や、第1弾ミュージックビデオの冒頭の文言などで語られるだけに留まっている。

CDには声優が演じるボイスドラマも収録されているのだが、あくまでもメインを張るのは楽曲。そのキャラがどういった個性や背景を持つのか、どういった主張を持ったキャラなのか、というのは、曲を聴くことによって解るようになっている。こういった『曲が原作』と言えるコンテンツは、今まであったようで無かった珍しいものだった。

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』相関図。三人兄弟で構成された『Buster Bros!!!』(イケブクロ・ディビジョン)、ヤクザ・警官・元軍人といった面子の揃った『MAD TRIGGER CREW』(ヨコハマ・ディビジョン)など、各ディビジョンにはそれぞれのカラーがある
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』相関図。三人兄弟で構成された『Buster Bros!!!』(イケブクロ・ディビジョン)、ヤクザ・警官・元軍人といった面子の揃った『MAD TRIGGER CREW』(ヨコハマ・ディビジョン)など、各ディビジョンにはそれぞれのカラーがある

「ラップって、どこから入っていいか解らない、何から聞けばいいか解らない、って人が多いと思うし、僕もそれで『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』という漫画を描いたんですが、ヒプマイは『キャラが気になるから』、『曲が好きだから』、『声優さんのファンだから』という風に、色んな入り方が出来るところが良いですよね。そういう間口の広さ、入りやすさというのも、ここまで人気になった理由の一つなのでは、と思います」

声優とラップ、という組み合わせにいまいちピンと来ない方もいるだろうが、中心メンバーの一人である山田一郎役の木村昴(現『ドラえもん』のジャイアン役!)は、個人でライブ活動を行っていたほどのラップ好き。Netflixの『DEVILMAN crybaby』(湯浅政明監督作)では、現役ラッパーのKEN THE 390般若と共にラップメンバーの一人として出演したこともあり、その実力は折り紙付きだ。

そもそも、彼ら声優は「言葉を扱うプロ」であり、「リリック(歌詞)」や「フロウ(言い回し)」を駆使してラップバトルする、というヒプマイの構造は、非常に相性が良かったのではないだろうか。言葉のプロ達が各々のスキルや持ち味を駆使して闘い、チームごとに熱い火花を散らすのだから、これが盛り上がらない筈がない。

一大ムーブメントを巻き起こした『HiGH&LOW』『クローズZERO』のような、所謂「不良たちのバトルもの」にも通じる熱さもあり、しかも、CDに同封されたBattleカードを介して各ディビジョンに投票し、その結果次第でバトルの勝敗が決まるといった、リアル参加型コンテンツとしてのワクワク感も味わえた。ライブイベントは着々と動員を伸ばし、昨年11月にはZepp DiverCity TOKYOと全国116館でのライブビューイングを埋める程にまで規模を拡大している。

「今思うと、少しずつ曲が発表されていって、その合間にライブイベントがあって、というのも凄く絶妙でしたよね。それぞれのディビジョン曲や個人曲が順番に公開されていって、だんだんキャラやディビジョンの個性が解っていったところでトーナメントが始まって、バトル曲が公開されて、勝敗の行方を見守って……一HIP HOPファンとして見ていた僕でも、どんどん注目度が上がっていってるのが解って『ヒプマイ、盛り上がってるな!』と感じたので、ファンの方はよりいっそう『このムーブメントに自分が参加している』という一体感があったんじゃないかと思います」

2018年に行われたトーナメントではシンジュク・ディビジョンが優勝を収め、優勝記念CD『The Champion』(2019年2月27日発売)では、なんと邦楽ラッパー界のレジェンド・Zeebraがプロデュースしている。

ヒプマイはこれまでにも、作詞や作曲に現役のラッパー(サイプレス上野、ラッパ我リヤ 、GADORO)やアーティスト(山嵐、三浦康嗣(□□□))を多数起用し、ハイクオリティな楽曲を送り出してきた。キャラクターごとやディビジョンごとにバラエティ豊かなのは勿論だが、ラップ史のクラシック(※名盤)へのリスペクトが感じ取れるようなサウンドがあったり、海外音楽シーンのトレンドを積極的に取り入れていたりと、その音楽作りには熱が感じられる。

「Zeebraプロデュースの新曲、僕も試聴しましたが、トレンドをしっかり抑えたトラップ(※アメリカの音楽シーンで流行しているジャンル。重低音を強調した遅いビートに、刺激的で派手な電子音や、高速ハイハットの音が加わるスタイルが一般的)サウンドでしたね。ヒプマイの曲は結構、難しいというか、作詞作曲したラッパーの個性が出ている曲があって、ラッパ我リヤ作詞の曲(麻天狼(まてんろう)『Shinjuku Style 〜笑わすな〜』)が解りやすいかもしれません。あのちょっとラップが遅れていく感じとか、あ~ラッパ我リヤだな~……! って僕のようなHIP HOPファンはなるんですが、声優さんはそういうラッパーの癖や、色みたいなものにも挑戦されてて凄いなと思います」

数々のビッグネームが楽曲提供しているヒプマイだが、実はHIP HOP界からだけではなく、意外な人物も参加している。シンジュク・ディビジョンの伊弉冉一二三(イザナミ ヒフミ、CV:木島隆一)の楽曲では、キャラクターの職業がホストということで、なんと作詞にオリエンタルラジオ藤森慎吾が起用された。話題性だけを狙ったネタ曲などでは決してなく、ホストクラブでのシャンパンコールを彷彿とさせるアゲ感溢れる楽曲となっている。

「僕個人の印象ですが、業界内での評価が高い、キャリアをもう充分に積んでいるラッパーの方々が、ヒプマイを通して新たな挑戦をしているように感じます。ヒプマイの楽曲で、初めてそのアーティストの楽曲に触れるという人もいると思いますし、もしかしたらそこから興味を持ってくれるかもしれない。既存のファンにとっても新しい発見や驚きがあるし、非常に良いコラボレーションになっているんじゃないでしょうか」

スマートフォン向けリズムゲームの配信も決定し、今後ますますムーブメントが過熱していくと思われるヒプマイだが、2018年12月には待望のコミカライズもスタートした。

講談社『少年マガジンエッジ』『月刊少年シリウス』、一迅社『月刊コミックZERO-SUM』の3誌で連載中で、メインキャラクターがそれぞれ異なる3つのストーリーが同時に展開していく。

公式コミカライズ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- The Dirty Dawg』第1話が掲載された『少年マガジンエッジ』1月号は完売し、次月号に急きょ1話を再掲載するという異例の事態となった
公式コミカライズ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- The Dirty Dawg』第1話が掲載された『少年マガジンエッジ』1月号は完売し、次月号に急きょ1話を再掲載するという異例の事態となった
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- side B.B & M.T.C』(『月刊少年シリウス』連載中)ではBuster Bros!!!&MAD TRIGGER CREW中心のストーリーが、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- side F.P & M』(『月刊コミックZERO-SUM』連載中)ではFling Posse&麻天狼を中心としたストーリーがそれぞれ展開していく
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- side B.B & M.T.C』(『月刊少年シリウス』連載中)ではBuster Bros!!!&MAD TRIGGER CREW中心のストーリーが、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- side F.P & M』(『月刊コミックZERO-SUM』連載中)ではFling Posse&麻天狼を中心としたストーリーがそれぞれ展開していく

「僕は昔は、『ラップが好き』と言うと『えっ!? ラップとか聞くの!?』ってリアクションをされるので、余り周りに言えなかったんです。というのも、昔は『ラップ』イコール『不良の音楽』って思っている人が多くて、“怖いもの”というイメージが強かった。それが今や、『フリースタイルダンジョン』でMCバトルが注目されたり、紅白の星野源さんのバックバンドにMPCプレイヤーのSTUTS(スタッツ)が参加していたり、ラップを取り扱った漫画やアニメが増えてきていたりと、HIP HOP文化が以前より確実に浸透してきているのを感じます。『ラップってカッコいいじゃん』と思う人が増えてきたからこそ、『ヒプノシスマイク』のようなプロジェクトが出てきたし、多くの人に受け入れられたんじゃないかと思います」

本格的なメディアミックスも始まり、今後、ますます注目度が高まっていくだろうヒプノシスマイク。「どうせオタク向けのキャラ萌えコンテンツでしょ?」と食わず嫌いでいるのは余りに勿体ない。殆どの楽曲はYouTubeの公式チャンネルで試聴できるようになっているので、是非一度騙されたと思って曲を聴いてみてほしい。声優×ラップの面白さは、そのパンチラインで実際にぶん殴られてみないと解らないのだ。


2019.2.27(水)ON SALE 『The Champion』/シンジュク・ディビジョン 麻天狼 ¥1,852+税/KICA-3275 【収録内容】 M-1 The Champion/麻天狼(CV.速水 奨・木島隆一・伊東健人) M-2 T.D.D LEGEND/The Dirty Dawg(CV.木村 昴・浅沼晋太郎・白井悠介・速水 奨) M-3 Drama Track 『Me Ageinst The World』 M-4 Drama Track 『証言』
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  • 取材・文大門磨央

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