岸博幸・慶應大大学院教授インタビュー「過酷な闘病? 僕にとっては面白い経験ですよ!」
テレビでおなじみの経済学者が生存率40%の多発性骨髄腫から生還「おじさんのハゲなんて5分で慣れるんですよ」
「まさか、こういう面倒くさい病気に自分がかかるとは思っていなかったです。今回治療しても10年後どうなっているかはわからない。参ったなと思いました」
今年7月24日、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)などでおなじみの経済学者、岸博幸氏(61・慶應大大学院教授)が多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)に罹患(りかん)したことを公表した。
「この10年は格闘技を習っていて、曜日ごとに鍛える部位を変えていく『ドウェイン・ジョンソン流トレーニング』もしていました。それでも、昨年末から妙に疲れやすくて変だなと思っていました」
身体に異変を感じた岸氏は、今年の1月に人間ドックを受診。そこで血液内科での検査を勧められたことで疾病が発覚したという。その後、即治療を開始した。
「人間ドックを受けるのは、実に5年ぶりでした。ラッキーだったのは、病気の疑いがあると言われてから、治療開始まで2週間もなかったこと。○○の疑いがあると言われると、自分なりに調べて勝手に不安になるじゃないですか(笑)」
今年7月末からは、抗がん剤による治療に挑んでいた。
「猛烈な吐き気に襲われました。服用後5日間は何も食べられなくて辛かったですが、主治医は『吐き気の収まる期間がすごく早い』と驚いていました」
人によってはこの吐き気に2~3週間苦しむことも。タフな岸氏だが、もう一つの副作用の影響はしっかり受けていた。
「抗がん剤を投与して数日後、髪の毛が抜け始めました。その前に3mmの坊主にしていたのですが、それでも髪の毛が抜けていくのは超不愉快でした(笑)。ただ、見た目に対するショックはなかったですね。周りの反応を見ていると、おじさんのハゲなんて5分で慣れるんですよ」
岸氏が罹患した多発性骨髄腫は、治療を施しても、その後5年以内に6割の患者が亡くなっている病で、完全な治癒は難しいと言われている。そうした病気の治療さえ面白い体験と捉えられるのだと岸氏は語る。
「今回、僕はハゲちゃった。自分の人生の予想になかったことだけど、学者になってるくらいですから、未知の体験にワクワクする質(たち)なんですよ。また、バラエティ番組に出演して、ハプニングが起きても、それを面白がる現場の空気に触れてきた。何でも面白がるって、すごく大事なことだと思うんです」
入院中、『脱力タイムズ』のメインキャスター・『くりぃむしちゅー』有田哲平(52)からは、「番組復帰を待っている」と励ましの言葉が送られてきたという。
今回、岸氏の入院期間は、わずか4週間。病院から「今回治療をすれば10年は生きられる」と説明を受けた岸氏は、今後も難病を抱えていくことになる。
「最初、命にかかわる病気だと告げられても、ピンとこなかったんです。目の前の仕事が忙しすぎて、やり残したことなど考えたことなかったし、昔から太く短く生きたいって思っていた。
病気になって、人生、もっと好き勝手に明るく生きたほうがいいと再認識しました。そう思うと、僕の場合、案外あと10年で十分なんじゃないかと思うんですよ」
″シン″岸博幸の暴れっぷりが楽しみだ。



『FRIDAY』2023年9月15・22日号より
PHOTO:蓮尾真司