プレートにひずみが溜まり超危険… モロッコ大地震「1万km離れた日本も他人事でない」戦慄の事情
ユーラシアプレートによるM6.8の内陸直下型が深夜に発生 死者は2800人以上 世界遺産の街も倒壊
世界遺産にも登録された美しい街が、一瞬にして崩壊した――。
現地時間9月8日深夜、マグニチュード6.8の地震が北アフリカのモロッコを襲ったのだ。2500人以上が負傷し、2800人以上が死亡。モロッコでは’60年に発生した地震以来、最大の被害だという。今回の地震の原因について、立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学氏が語る。
「アフリカプレートがユーラシアプレートなどと衝突し、アフリカプレートに内にひずみが溜まり、活断層が活発化したのでしょう」
モロッコの地震は震度5強~6弱で、「それほど大きな規模ではない」と高橋氏は続ける。にもかかわらず甚大な被害が出た理由は、建物の構造にあるという。
「この地域の建物は泥で作られたレンガを積み上げただけで、鉄筋も何も入っていません。特にイスラム教のアーチ状の天井は、バランスが崩れると今回の規模の地震でも簡単に壊れてしまいます。しかも、崩壊したレンガの土は細かい粉塵(ふんじん)となって付近を覆うため、被災者はそれを吸い込んで呼吸ができず、『助けてください』と言えないまま窒息死してしまいます」(同前)
被害が大きかった地域の多くが山間部に位置しているため、救助は難航。静岡地震防災研究会代表の内山義英氏は、「1万㎞離れた日本も他人事と考えてはいけない」と語る。
「モロッコの地震はアフリカプレートにひずみが溜まったことが原因ですが、日本付近にある4つのプレートも同じような状況にあります。それぞれのプレートは一年中動き続けていて、今もひずみが蓄積され続けているのです。つまり、モロッコのような地震がいつどこで発生してもおかしくない状況に日本は置かれていることになります」
今回のモロッコの地震は内陸直下型であり、日本では’16年の熊本地震や’18年の大阪府北部地震などがそれに該当する。いずれも多数の家屋が倒壊し、死傷者が出る被害に。内山氏が警鐘を鳴らす。
「日本の建物の耐震強度基準はモロッコより高いですが、脆弱な建物は数多く残っています。そうした建物が密集する場所を直下型の地震が襲えば、甚大な損害が出るのは避けられません。特に首都で直下型地震が発生した場合、下町を中心にモロッコを超える被害も考えられます」
モロッコの悲劇を生んだ直下型の大地震に、日本が呑み込まれる日は遠くない。

『FRIDAY』2023年9月29日号より
PHOTO:アフロ、共同通信