<figure id="attachment_332040" aria-describedby="caption-attachment-332040" style="width: 791px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c1fb6190"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/da98b2b999479bffaaca0aeddc9cab6c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-332040" class="wp-caption-text">昨年11月のイングランド戦では13-52と敗れたが、流は18日のイングランド戦でこんな姿をイメージしているだろう</figcaption></figure>
<p>’19年のワールドカップ日本大会で史上初の決勝トーナメント進出を果たし、日本列島に熱狂を巻き起こしたラグビー日本代表が、４年後のフランス大会でも好スタートを切った。９月10日の初戦でアメリカ地区予選を勝ち上がったチリに42-12と勝利。持ち前のスピーディーなアタックで６トライを奪い、ボーナスポイント（４トライをとれば１ポイント加算）付きの勝ち点５を獲得した。</p>
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<p>６試合を戦って１勝５敗と苦しんだ７、８月の前哨戦から一転、ワールドカップ本大会に入り別のチームになったかのようなパフォーマンスを見せた日本代表の選手たち。中でも絶大な存在感を示しているのが、スクラムハーフ（SH）の流大（ながれ・ゆたか）だ。</p>
<p>今回のワールドカップ日本代表登録メンバーでは、キャプテンの姫野和樹とともにチームを牽引するバイスキャプテンに任命された。チリとの初戦は姫野がふくらはぎの違和感で欠場したため、ゲームキャプテンとして先発出場。プレッシャーのかかるファーストマッチで大役を担うこととなったが、重圧をものともせず緩急自在の球さばきと精度の高いキックで試合をコントロールし、３本のトライをアシストしてチームを快勝に導いた。</p>
<p>前回大会に続き自身２度目となるワールドカップで、いまがピークと感じさせる円熟のプレーを披露している31歳の流。その原動力となっているのが、並外れた向上心と負けん気の強さだ。’16-’17シーズンにサントリーサンゴリアスで入社２年目の流をキャプテンに指名し、４季ぶりのトップリーグ優勝を果たした当時の沢木敬介監督（現横浜キヤノンイーグルス監督）は、かつて主将任命の理由を<span class="strongInContent">「常に100パーセントでトレーニングに取り組む。誰よりもうまくなりたい気持ちが伝わってくる」</span>と語っている。</p>
<p>どんなに強い相手でも、どんなに厳しい状況であっても、勝負である以上負けていい試合などない。そんな断固たるリーダーの意志が、目指す高みへとチームを引っ張り上げる。帝京大学で、サントリーで、そして日本代表で、流が数々の栄冠を獲得してきた理由がそこにある。</p>
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<p>日本代表で背番号９を争う齋藤直人は、サントリーでもしのぎを削るチームメイト。５歳下の盟友にしてライバルを<span class="strongInContent">「僕にはないものを持っているし、全部のプレーがうまい」</span>と評する一方、練習では常に緊張感あるバトルを繰り広げ、お互いに高め合う引き締まった関係性を築いている。これもまた流のキャラクターのなせる業であり、チームにもたらす影響は大きいだろう。</p>
<p>’17年の韓国戦で初めてテストマッチ（国代表同士の正式な国際試合）デビューを果たし、今年で代表７シーズン目。その間には、少なくない困難にも直面してきた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="代表辞退に突然の体調不良……"></div>
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<figure id="attachment_332043" aria-describedby="caption-attachment-332043" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4ad16d9f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/4f3b93f159a7b65d4ce97321cbdf7c45.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-332043" class="wp-caption-text">所属する東京サントリーサンゴリアスの合宿中の一コマ。コロナ感染の不安と隣り合わせだったため、食事一つにも神経を使っていた様子がうかがえる</figcaption></figure>
<p>大成功を収めた’19年のワールドカップ後、新型コロナウイルスのパンデミックにより予定されていた国際試合のスケジュールが次々とキャンセルされ、’21年はモチベーションを見失い一時代表活動を辞退した。同年秋に復帰し健在ぶりを示すも、翌’22年はフッカーの坂手淳史とともに共同キャプテンに任命されながら６月の宮崎合宿初日に突然の体調不良に見舞われ、離脱を余儀なくされる。10日間ほど入院し、運動制限で<span class="strongInContent">「１ヵ月半くらいはほぼ何もできない状態」</span>という辛い日々を過ごした。</p>
<p>そんな苦境を乗り越え、再出発を果たした’22年９月の別府での合宿で、流は’23年のワールドカップを最後に日本代表から退く意思を明かした。選手引退後のキャリアへの準備も考慮し、フランス大会ですべてをやり切って終えることを決意したという。</p>
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<p>強靭なメンタリティを誇る生粋のリーダーとのイメージが強いが、実は繊細で気遣い屋の一面を持つ。サントリーでのキャプテン初年度は周囲を引っ張ろうとするあまりさまざまなことが中途半端になり、沢木監督から<span class="strongInContent">「雰囲気を見るな。いいたいことをいって、やりたいことをやれ」</span>と指摘されたことがあった。８月15日に行われたワールドカップ日本代表メンバー発表記者会見でも、キャプテンに就任した帝京大学の２学年後輩である姫野和樹を「頼りない」と評して笑わせつつ、<span class="strongInContent">「（姫野は）責任感が強いので、考えすぎないよううまくリラックスさせながら、お互いに自分らしくやっていきたい」</span>と副将としてサポートしていく思いを口にしている。</p>
<p>厳しい勝負の世界でタフな経験を積み重ね、充実の時を迎えた流は、その記者会見の席上で今回のワールドカップの目標を力強く宣言した。</p>
<p><span class="strongInContent">「ファンのみなさんも現実的ではないと思っていると思います。ただ、僕らは（優勝を）できると信じています。’19年のときも、誰も僕らがアイルランドに勝てると思っていなかったし、スコットランドに勝って全勝でベスト８に行くとは想像できなかったと思います。でも、僕らはそれをできる準備ができています。見ていてください」</span></p>
<p>世界最高峰の頂はまだまだ高い。ただ、そこにたどり着くためのステップは重ねてきた。着実に近づいている実感はある。</p>
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1975年熊本市生まれ。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、３年時には花園に出場した。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』（講談社）

直江光信

共同通信社（1枚目）、東京サントリーサンゴリアス提供（2枚目）

ラグビー日本代表が18日に挑むイングランド代表は過去10戦して一度も勝ったことがない。帝京大では4年間大学日本一、サントリーでも主将として優勝した流大の頭の中には奇跡のシナリオができている。

「優勝できる準備はできている」大学時代から勝ち続けるラグビー日本代表・流大が乗り越えてきた苦境

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