【カップラーメン業界大研究】完全網羅!強すぎる「日清帝国」に死角はあるのか | FRIDAYデジタル

【カップラーメン業界大研究】完全網羅!強すぎる「日清帝国」に死角はあるのか

コロナ禍で大沸騰!絶対王者はコンビニの棚を独占 東洋水産は「ノンフライ麺」に強み、エースコックは海外に活路 「みそきん」と「一蘭」の参入で破壊された″300円の壁″

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編集部近くのローソン、ファミリーマート、セブン-イレブンを回って全商品を購入。こうして見ると壮観だ
編集部近くのローソン、ファミリーマート、セブン-イレブンを回って全商品を購入。こうして見ると壮観だ

日清食品の覇権は揺るがない――。

FRIDAY記者がそう実感したのは、編集部近くにあるセブン-イレブンへ昼食を買いに行った時のこと。店内中央を占めるカップ麺コーナーに並んでいた商品の多くが、同社のものだったのだ。

夏休み中の部活帰りなのだろう、記者の横で棚を見つめるジャージ姿の高校生が選んだのは、やはり一番人気の「カップヌードル」(254円)だった。

「’71年に発売され、今なお絶大な人気を誇るカップヌードルは、米・ニューヨークのタイムズスクエアでの大きな広告が話題を呼ぶなど圧倒的な存在感で、名実ともに業界ナンバーワンの看板商品です。元祖人気カップ麺といえばサンヨー食品が’75年に発売し、現在は乃木坂46と日向坂46がイメージキャラクターを務める『カップスター』(254円)を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ブランド力で言えば大きな差がついています」(フードアナリストの重盛高雄氏)

カップヌードルシリーズは「シーフードヌードル」(254円)や「チリトマトヌードル」(254円)、「パクチー香るトムヤムクン」(254円)に「花椒とゴマ香るコク旨たんたん」(254円)など様々なバリエーションの商品を展開しており、シリーズだけで年間1000億円以上を売り上げる。

カップヌードルから視線を横に移すと、「店主モノ」と呼ばれる有名店監修の商品が目を引く。特に多くの在庫が用意されているのが、セブン-イレブン限定の「すみれ 札幌濃厚味噌」(321円)、「一風堂 赤丸新味博多とんこつ」(321円)、「山頭火 旭川とんこつ塩」(321円)だ。

「’00年と’01年に日清が手掛けたコラボ商品です。発売されるや否や大好評を博し、店主モノの人気に火が付きました。その後も『蒙古タンメン中本 辛旨味噌』(237円)や『中華蕎麦とみ田』(321円)など、継続的に店主モノを置くことで、日清とセブンの関係は強固なものになっています。

コンビニは売り場のスペースが限られているうえ、入れ替わりも激しい。その中でもセブンは少数精鋭で種類を絞っているので、定番中の定番の商品以外はほとんどが日清のものなんです」(ラーメン研究家の石山勇人氏)

大人気ユーチューバーのヒカキンが監修し、転売する者まで現れるなど大きな話題を呼んだ「みそきん濃厚味噌ラーメン」(300円)も、セブン-イレブンと日清のタッグが生んだ商品だ。また、セブン-イレブンほどではないにせよ、ローソンやファミリーマートの棚でも日清の商品が多数を占めており、業界最古参・最大手の王国はしばらく揺るぎそうにない。

「ユニークなコマーシャルなど、宣伝の強さも武器。昔からアーノルド・シュワルツェネッガーを起用したり、原始時代の設定にしたり、クセになるアニメーションや音楽を使ったりと、観ているだけで面白いCMで消費者の購買意欲を掻き立てるのがうまい。また、『カップヌードルミュージアム』を作ってカップヌードルやチキンラーメンを自作できる機会を提供するなど、他の企業にはない発想で、商品を広めています。正直、話題性においても売り上げにおいても、日清を超える企業が現れることは考えづらい」(自作ラーメン研究家の神田武郎氏)

各社の「日清帝国」対策とは

もちろん、競合他社も手をこまねいているわけではない。東洋水産は、自社の特性を活かして高齢者層から人気を集めている。

「もともと水産会社ですから、どの商品も煮干しの味がしっかりと感じられます。『赤いきつね』『緑のたぬき』(254円)のほか、ラーメンでいえばノンフライ麺を使った『マルちゃん正麺』(300円)など、ロングセラー商品を複数持っているのも強みです」(即席麺研究家の大山即席斎氏)

’17年に発売した「QTTA」(254円)など続々とヒットを生み出す東洋水産は、国内市場で日清に次ぐ業界第2位だが、アメリカ、メキシコの即席麺市場では日清を抑えてトップシェアとなるなど、国外での存在感が大きいのが特徴だ。

袋麺の雄「サッポロ一番」の「みそラーメン」と「塩らーめん」(254円)がカップ麺市場でも存在感を示すサンヨー食品も、国外市場に打って出ている。

「実は、即席麺の世界シェアで日清は2位なんです。台湾発祥の中国企業・康師傅(カンシーフ)が1位です。そして、この康師傅の共同筆頭株主が、サンヨー食品です。世界ナンバーワン企業のノウハウを吸収することで、日清を脅かす未来があり得るかもしれません」(前出・石山氏)

業界初のデカ盛りカップ麺「スーパーカップシリーズ」(259円)や、「わかめラーメン」(254円)を販売するエースコックは、海外売上比率がなんと7割。4割前後の日清食品や東洋水産に比べると図抜けて高い。

「ベトナムでの即席麺シェアは弊社が1位で、現地の方からベトナム企業と誤解されることもあるくらいです」(エースコック広告宣伝室の林誉之氏)

またエースコックは、人気アーティストYOASOBIとのタイアップ商品「電光石火のごま香るホッと幸せ塩とんこつラーメン」(ikura監修・259円)、「電光石火のにんにく香るビリッとやみつき旨辛醤油ラーメン」(Ayase監修・259円)など、年間30種類以上のコラボカップ麺を販売している。

「アーティストとのコラボもありますが、基本は名店監修のものが多い。商品開発部の人間が日本中のラーメンを食べ歩き、『これだ!』と思った店をピックアップし、企画が通れば実店舗に飛び込み営業をかけるんです。相手は職人ですから、『カップ麺なんかで再現できるか!』と断られるケースが多く、10年ほど前は約1割しか発売にこぎつけられなかった。店主から開発の許可を得るため、皿洗いをして頼み込んだ営業マンがいるとの伝説もあるくらいですよ(笑)」(林氏)

伝説の営業マンの努力の甲斐あってか、現在の成功率は5割以上だという。

商品の価格からも、業界の変化が見てとれる。

「昔は300円に収めないと厳しいと言われていましたが、300円のみそきんや、人気チェーン『一蘭』カップ麺(490円)のヒット、そして昨今の物価高の影響で高額商品も珍しくなくなってきました。
カップ麺はお湯を注ぐだけで作れるため災害時に強く、コロナ禍の巣籠もり需要で爆発的な売り上げを記録しました。カロリーも店のラーメンに比べれば低く、チキンラーメンやカップヌードルを開発した安藤百福氏は即席麺を毎日食べて96歳まで生きたそうです」(前出・大山氏)

毎日食べるのは少々やりすぎな気もするが、どんな時も庶民の味方なのがカップ麺。日清帝国とそこに追随する各社の闘いは、果てしなく続く。

セブン-イレブンのカップ麺コーナー。蒙古タンメン中本など、日清が手掛ける商品が数多く並んでいる
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9月11日発売の「特上カップヌードル」シリーズ。写真のトリュフ風味を含め、4種類が展開されている
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東京都新宿区にある日清食品の東京本社。社屋からも「帝国」の趣を感じてしまうのは本誌記者だけだろうか
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『FRIDAY』2023年9月29日号より

  • PHOTO時事通信社(日清食品東京本社社屋)

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