1974年、埼玉県生まれ。大学卒業後にITメディア等でスポーツ取材を開始し、現在はフリーランスとしてサッカー、ラグビーを中心としたスポーツ、芸能を取材。週刊誌やスポーツ誌に寄稿。2000年代のW杯、ユーロ、五輪はほぼ網羅。欧州を中心とした海外取材の経験豊富

栗原 正夫

<figure id="attachment_333215" aria-describedby="caption-attachment-333215" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6a9c6c82"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/1709983e37bff3a268c9c97cbdb1793f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333215" class="wp-caption-text">現在は「92歳になった父の世話やプロサッカー選手となった息子のサポートをしている」というリティ。かつて横浜ＦＣやアビスパ福岡で監督を務めた天才ドリブラーは「日本人も日本食も大好き。求められればいつでも協力するよ」</figcaption></figure>
「試合前、願望も込めて２-２のドローを予想していたけど、ドイツイレブンの序盤のパフォーマンスを見て『難しいな』と思った。ドイツ人としてリアクションが難しいけど、日本は十分に世界のトップと戦えるポテンシャルを示したよ」
９月９日、日本代表が敵地で行われたドイツ代表との親善試合に４-１で快勝。Ｗ杯優勝４度を誇る強豪から昨年のカタールＷ杯に続く金星となったが、元西ドイツ代表ＭＦで’93年のＪリーグ開幕元年にジェフユナイテッド市原（現ジェフ千葉）でプレーしたピエール・リトバルスキー氏（63）は冒頭のように感想を述べ、「私は驚かなかった」と言うのだった。
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昨年のカタールＷ杯ではシュート数で26本対12本とドイツに圧倒されながら、後半に立て続けに２点を奪って逆転という薄氷の勝利だった。翻って今回はドイツのシュート11本に対し、日本は14本。枠内シュートはドイツの３本に対し、日本は11本と好機の数でも上回った。
「最初から最後までゲームをコントロールしていたのは日本だった。守ってからのカウンター（速攻）ばかりでなく、ドイツのプレッシングに対してもＧＫからしっかり我慢してビルドアップを行い、狭いスペースでも（味方をフォローするように）三角形を作りながらポンポンとパスをつないでいた。そして、最後はサイドチェンジから左では三笘薫（26）、右では伊東純也（30）が仕掛ける。日本はドイツに勝つべくして勝ったといえる」
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元々日本人選手はボールを扱う技術が高いとされてきたが、その技術をコンタクトの激しい国際試合などで発揮することに苦労してきた。しかし、長年日本サッカーを内外から見てきたリトバルスキー氏は「時代は変わった」と断言する。
いまや代表選手のほとんどが欧州トップリーグでプレーする時代。今回の遠征メンバーも26人中21人は欧州組で、そうした個々の成長が日本代表を一段階上のレベルへと押し上げているという。
「日本人選手は昔から細かいパスはうまかったが、それが攻撃につながっていなかった。でも、いまは相手にプレッシャーをかけられてもナーバスになっていないし、ミスも減った。今回のドイツ戦でも、斜め前や斜め後ろとあらゆる角度にパスが出せていた。とくに攻撃に有効なサイドチェンジのパスは低いライナー性のボールが多く、クオリティが高かった」
<div data-friday-nextpage-lead="評価する7人のサムライ"></div>
天才ドリブラーとしてＷ杯決勝の舞台を３度経験しているリトバルスキー氏は、評価するサムライの名を７人挙げた。
「三笘はゴール前ラスト20ｍのドリブル、パス、シュートの選択が絶妙で、（左サイドから）縦にも中央にも仕掛けられる。それ以上に目立っていたのが伊東。ドイツの左サイドバックは一つのウィークポイントだったが、伊東のスピードとタイミングの良い仕掛けは見事で、オーバーラップしてきた右サイドバックの菅原由勢(ゆきなり)（23）とのコンビも秀逸だった。日本が前半に挙げた２得点はいずれも右サイドが起点だったのは偶然ではない。遠藤航(わたる)（30）と守田英正（28）のダブルボランチはバランスがよかったし、遠藤はときにはファウルも厭(いと)わず相手の攻撃の芽を摘むなど状況判断がよく、ここ数年で１対１の強さはさらに増した」
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前半終了間際にはブンデスリーガでも屈指のスピードスターとして知られるレロイ・サネ（27・バイエルン）の突破に対し、冨安健洋(たけひろ)（24）が決死のタックルで失点を防ぐ場面もあった。守備については個の活躍はもちろん、チーム全体として統率が取れていたと高く評価した。
「（冨安の）サネへのスライディングは凄かった（笑）。最近のＤＦは、ビルドアップの技術なども重視されているが、まずは１対１の守りで負けないことが大事。その点、冨安も板倉滉(こう)（26）も身体は強いし、ポジショニングもいい。日本はサイドバックも含め、組織としてドイツにスペースを与えずにうまく守れていた」
そして――今回、一番の驚きだったとして、ＣＦ（センターフォワード）に起用された上田綺世(あやせ)（25）の名前を挙げた。
「上田はリュディガー（30・レアル・マドリー）のような強さのあるＤＦとマッチアップしながらも、よくボールをキープしていた。三笘や伊東、遠藤らの活躍に注目が集まっているが、彼らをより生かすためにも前線でボールを収められる選手の存在は重要になる。日本は長く前線で攻撃の起点になるＣＦタイプの選手の不在に苦しんできたが、上田は日本にとって大きな可能性を秘めた選手であることを証明したと思う」
４バックでスタートし、後半は５バックにフォーメーションを変えるなど、森保一監督（55）の巧みな手腕も「見逃せない」と評価した。
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「森保監督とは試合前に話したが、自分なりのアイデアを持ちながら、選手の意見を取り入れてチームを指揮できる珍しいタイプ。サッカー強豪国の監督は一切他人の声などを聞かないタイプが少なくないが、森保監督は聞く耳を持っている。だからこそ、試合の途中でシステムを変更しても選手がすぐにフォローアップしてくれるのだろう。サッカーの戦術はＷ杯のある４年ごとに大きく変わるが、森保監督は戦術面についてもよく勉強していて、それが結果に結びついている」
日本代表の悲願である「ベスト８」については、「自分たちの力を信じることだよ」と苦笑いした。
「ベスト８をかけて戦った’18年のロシアＷ杯のベルギー戦も、昨年のカタールＷ杯でのクロアチア戦も、日本は悪くない戦いをしていた。もう代表には長友佑都（37）も吉田麻也（35）もいないけど、代わりに若い世代が台頭してきている。ドイツ戦では久保建英（22）、堂安律（25）、浅野拓磨（28）らがベンチスタートになったくらい層が厚い。強豪相手にハイプレッシャーを受けて混乱しているように見えることもあるが、それはどのチームにもある課題。私が日本に行った30年前は、スポーツといえば野球か相撲。サッカーのルールがわからない人も多かった（笑）。でも、いまは選手だけじゃなくて、サッカーにかかわるあらゆることが成長した。日本代表は世界の強豪と渡り合えるところまで来た。これはお世辞ではないよ」
日本に連敗したドイツはその後、世界ランキング２位のフランスに勝利した。
日本がベスト８入りしても、リティは「驚きはない」と言うに違いない。
<figure id="attachment_333217" aria-describedby="caption-attachment-333217" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7cee86f7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/30d6e4ead464ec460e6b3d9a34cd869d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333217" class="wp-caption-text">「上田綺世を起点にせよ！」　ドイツとの親善試合、１-１で迎えた前半22分に上田が勝ち越し弾。「今までとは違うパフォーマンスを出せた」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_333216" aria-describedby="caption-attachment-333216" style="width: 2267px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="91d95a0c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/f4649adbd78c012ea43055aeaea5983c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333216" class="wp-caption-text">ドイツとの親善試合前に日本代表の練習を視察。Ｊリーグ時代に何度も対戦した森保監督（右）と旧交を温めた</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年10月6日号より

栗原正夫

渡辺航滋

元西ドイツ代表としてW杯決勝を３度戦った天才ドリブラー"ピエール・リトバルスキー氏"にスペシャルインタビュー！「サムライたちはもう世界トップと戦える」その理由を語り尽くす。

《スペシャルインタビュー》元西ドイツ代表・リトバルスキー「サムライたちはもう世界トップと戦える」

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