<figure id="attachment_333734" aria-describedby="caption-attachment-333734" style="width: 5472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5ec68b36"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/717fefc731e3081b02405f316d2a2022.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333734" class="wp-caption-text">後半、力尽きたイングランド戦後、勝てなかったショックにうちひしがれることなく、スタンドに向かって拍手をして日本代表のファンにお礼をした姫野。穏やかな表情は巻き返しへの自信の表れか</figcaption></figure>
姫野和樹はいま、ラグビーワールドカップ（W杯）のフランス大会で日本代表の主将を務める。初優勝を目指す前段階として、いまは２大会連続での８強入りにまい進している。
現地時間９月17日、スタッド・ド・ニースで予選プール第２戦目に先発。左ふくらはぎの違和感から復帰し、今大会初出場を果たした。
フォワードの最後列にあたるナンバーエイトに入り、８度もボールをもらって前進し続けた。守っては再三、自陣で相手ボールに絡み、タックル成功数は両軍通じて３位タイの16本。状態のよさをアピールした。
主将に内定した７月中旬以降で、最高のパフォーマンスを披露したと言える。
「調子、いいです。どんどん、どんどん右肩上がりに、上げていけたらいいなと」
この日はイングランド代表に12―34と敗れたとあり、表情は浮かない。それでも29日以降に控えるサモア代表戦、アルゼンチン代表戦へ、いい兆しがあるのは確かだ。
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身長187センチ、体重108キロの29歳。グラウンドの外では、周りに目が行き届く資質が垣間見える。所属のトヨタヴェルブリッツでも、選手のみならず若手スタッフをコーヒーに誘う様子が好感を集めている。
その心意気に助けられた１人が、岩村昂太だ。姫野より１年前にヴェルブリッツに入団したスクラムハーフである。姫野には、他チームへの移籍を手伝ってもらったことがある。
ヴェルブリッツのヘッドコーチが代わったことで、岩村が徐々に出番を減らされていったのは&#8217;20年度以降。限られた選手生活を輝かせるため、’21年度限りでの退団と移籍に動いた。もともと社員選手だったが、新天地ではラグビー専業のプロ選手に転じるつもりだった。
ここで助け舟を出したのが、かねてから仲の良い姫野だった。
折しも姫野は、ヴェルブリッツからニュージーランドのハイランダーズへ期限付き移籍をしていた。それでも岩村と「ライン通話」をかわし、すでにプロ選手となった姫野を支えるエージェント会社を紹介してくれたのだ。
ちなみにその「ライン通話」は、画面付きではなく音声のみだった。
「ニュージーランドの電波が悪いらしくて」
日本と異なる環境に挑んで心身をすり減らす姫野に、門出を支えてもらった。
「仲が良かったんで寂しがってはいましたけど、後押ししてくれました」
姫野が携わるエージェント会社のおかげで、岩村は三菱重工相模原ダイナボアーズに移籍。昨季は、主将に抜擢された。姫野が主将を務めるヴェルブリッツとは、２度、試合ができた。
通算１勝１敗となるこの対戦は、姫野自身も楽しみにしていたものだったと話す。戦前の取材で、こう笑っていた。
「嬉しいです。めちゃくちゃ嬉しいです。相談をされて、僕も——もちろん一緒のチームでやりたかった気持ちもありましたが——移籍を勧めた１人だったので。それが（ダイナボアーズの）主将として花開いて…。絶対、タックルに行ってやろうと思います！」
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<div data-friday-nextpage-lead="姫野が岩村に打ち明けた悩み"></div>
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<figure id="attachment_333735" aria-describedby="caption-attachment-333735" style="width: 935px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0651c0cf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/1b1b961f3cb02fea11b0d77e2dfdf022.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333735" class="wp-caption-text">岩村がトヨタ在籍時代に撮影したオフショット。右から２人目が姫野和樹、岩村は左から２人目（岩村昂太のインスタグラム@i_kota09より一部抜粋）</figcaption></figure>
姫野の利他の心は、日本代表でも活かされていよう。今年の活動が始まるのと前後し、同じトヨタヴェルブリッツ所属で初選出の福田健太と行動を共にするようになっていた。福田が控えに甘んじている本大会中も然りだ。
もっとも本人はこうだ。
「まずは自分のプレーで見せる。試合だけじゃなく練習でも。ベストなプレーで、僕は『いくぞ』と見せるだけでいい」
意図的に周りを引っ張る言動よりも、自然と周りが引っ張られるような情熱的な姿勢が自分のリーダーシップなのだと強調する。きっと、己に言い聞かせているのだろう。
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姫野の帝京大時代の２学年先輩で、今度の代表で副将となった流大は「姫野は責任感が無茶苦茶、強い」と補足する。気を使う姫野に気を使わせないことが、姫野と一緒に勝つ最善手だと心得る。
「考えすぎることがいっぱいあるので、そこをリラックスさせながら、僕は僕なりのリーダーシップをとる」
姫野は大学卒業後まもなく、ヴェルブリッツの主将に抜擢された。移籍をサポートしてもらった岩村は、当時からよく姫野と食事に出かけた。「先輩に話を聞いてもらえない」など、重責を担う仲間の悩みを聞いてきた。
いまになっても、オフには姫野ら気心の知れた仲間と旅行や行楽に出かける。東京ディズニーランドに行ったある日、ファンに気づかれた姫野の「撮影係」をしたこともある。
そんな旧知の岩村にとって、姫野の調子のよしあしは「わかりやすい。いい時と悪い時が顔に出ますから」。どうやら、画面に映る肌質からその状態が伝わるという。
もしもいまの姫野が岩村から見ても好調であるなら、日本代表主将のW杯での活躍は約束されたようなものだ。
現地時間28日夜、スタジアム・ド・トゥールーズでのサモア代表戦に、姫野はどんな顔つきで現れるか。
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スポーツライター　1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』（双葉社）がある

向風見也

長尾亜紀（１枚目）

W杯で史上初のベスト４進出を目指すラグビー日本代表にとって29日のサモア代表戦は負けられない１戦。今大会の主将に選ばれた姫野和樹は仲間の窮地を救ってきた男気でチームを引っ張る覚悟だ。

【サモア戦勝利】「心身をすり減らしていても」仲間を助ける　ラグビー日本代表主将・姫野和樹の男気

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