芳賀  慧太郎

<figure id="attachment_333844" aria-describedby="caption-attachment-333844" style="width: 1280px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="bfcc0b60"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/1e70564115195c3897748e1f1a4dc9b6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333844" class="wp-caption-text">「レンタル元受刑者」のサービスを提供するフナイムさん</figcaption></figure>
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多くの人がSNSを当たり前のように使うようになったからか、最近「レンタル○○」というサービスがブームになっている。
「レンタル○○」は基本的に数千円～数万円でその人に数時間何かをやってもらうというサービス。○○にはさまざまな言葉が入り、「レンタル彼女」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
そのようなブームもあってか、「レンタル○○」が次々生まれているが、その中でもかなり異色なものに「レンタル元受刑者」というものがある。「元受刑者」にはどのような需要があるのか。特殊詐欺で実刑を受け、出所後に「レンタル元受刑者」として活動するフナイム氏にサービスの実態を聞いた。
「基本的には何でも屋です。飲食店の手伝いから引っ越しの手伝いまでなんでもやりますが、僕自身が元詐欺師ということもあってか、犯罪に関する相談が多いです。依頼主は犯罪の被害者、加害者、加害者家族が多く、アプリで知り合った人に投資詐欺に遭って、1000万円をだまし取られてしまった。警察はまともに取り合ってくれなくて、弁護士に頼むカネもない。どうすればいいのか、といった相談です。それ以外にも、興味本位で元犯罪者の話を聞いてみたいという依頼もありますね」
料金体系はメール相談500円、通話相談7000円、３時間作業１万円、１日作業２万円の四段階。メールや通話の依頼は少なく、対面での相談の依頼が多いという。フナイム氏は特別な資格を持っているわけではない。犯罪被害者にアドバイスを求められても、的確なアドバイスを送ることは難しいように思えるが、それでも定期的に依頼が来る理由は何なのだろうか。
「話をしながら状況を整理して、今後の行動について選択肢を提案します。例えば犯罪被害者の人には消費生活センターへの相談や、法テラスでは３回まで無料で電話相談ができることをお伝えしています。
これらは少し調べれば誰でもわかる手段ですが、犯罪に遭った人はパニックに陥っていたり、途方に暮れてしまっていたりするので、気づかない人は多いです。また、僕自身が犯罪者だったこともあって、犯罪者の思考回路や行動パターン、嫌がることがわかるので、それらをお伝えすることもありますね。
被害者、加害者、加害者家族の皆様に共通していることですが、まわりに話を聞いてくれる人がいないんです。たとえ詐欺の被害者であっても、身内や友人に話すと『そんなのに引っかかるなんて馬鹿じゃないの?』と責められることがあります。“社会の最底辺”である元受刑者だからこそ、話せることもあると思うんです」
依頼は断続的に届くが、実際に稼働するのは週１～２件ほど。断る依頼も少なくないという。その最たる例が「一緒に詐欺をやりましょうよ」といった犯罪の勧誘だ。今でこそ「やるわけねぇだろ馬鹿！」と断っているが、かつては10年以上詐欺で生計を立てていたバリバリの犯罪者だった。何が彼を変えたのだろうか。
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<div data-friday-nextpage-lead="心を入れ替えるきっかけは高校の教科書だった⁉"></div>
「刑務所に入った時に、高卒認定や資格の勉強をするため、刑務所に教材を持ち込んでいたのですが、このなかに倫理の教科書がありました。繰り返し読んで３～４ヵ月が経った頃、ふと、同じ人間なのに、なぜ僕は、教科書に出てくる人たちと真逆の考え方をするようになったのだろうか…と深く考えるようになりました。思えば幼少期から、自分の思い通りにいかないと家族やまわりの人を殴るような人間でした。人が自分に尽くしてくれるのは当たり前だと思っていて、感謝の気持ちを返したことがなかった。自分が本当に利己的な人間ということに気づいたんです。
そりゃあ犯罪者になるわな。そう思った瞬間、自分で自分のことを殺してやりたいと思ったんですよ。自分がどうしようもない人間だと知って涙が流れました。このまま出所してもまた繰り返すだけ。本気で変わろうと決意しました。『黄金律』と呼ばれるイエス・キリストの言葉『人にしてもらいたいと思うことはなんでも、人にしなさい』のように、出所後は人のためになることやりたい。そのために何をやればいいのか、今でも模索しています」
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’21年に出所し、５月からX（旧Twitter）の運用を始めた。「社会に出ても一生受刑者」という戒めの意味を込め、活動名を服役中の称呼番号2716から「フナイム」とし、元受刑者であることも公表した。すると犯罪の被害者や加害者からXを通じて様々な相談が寄せられるようになる。活動の幅を広げるために’22年から始めたサービスが「レンタル元受刑者」だ。
「信じてもらえないかもしれませんが、この活動はお金のためにやっていません。報酬は活動を続けるための最低限に設定しています。今やっているYouTubeの活動で収益が得られるようになったら、無料にするつもりです。犯罪をすると被害者や加害者家族はもちろん、加害者自身も皆不幸になってしまうということを世の中に伝えたいと思っています」
フナイム氏が関与した事件の被害者は３名で被害総額は約6000万円。全員と和解していて、２名には全額返済しているが、被害額が大きい１名への弁済は終わっていない。詐欺師時代は最大で月収2000万円あったというが、現在はレンタル元受刑者、アルバイトの二足のわらじで月収13万円程度なのだという。
月収2000万円から月収13万円への転落。身から出た錆ではあるが、相当なストレスのはず。犯罪の誘惑に駆られることはないのだろうか。
「全くないですね。2000万稼いでいたときは欲望まみれでした。風俗、キャバクラ、ブランド品、旅行と毎日贅沢していました。でも、そんな生活してても、なぜか虚しかったんです。何かが手に入るとすぐにもっと良いものが欲しくなる。心に小さな穴があって、いつまでも埋まらない感覚がありました。
今は自分が誰かの役に立っているという実感があります。これはあの頃どれほど贅沢しても感じられなかったもので、すごく満足しています」
「レンタル元受刑者」には贖罪だけではない思いが込められていた。フナイム氏の更生の旅路は続く。
<figure id="attachment_333845" aria-describedby="caption-attachment-333845" style="width: 1277px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="e76ac21f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/2ef7d9e4b7b1aee2de7e65efe573b948.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333845" class="wp-caption-text">フナイムさんは犯罪の結果、家族との縁が切れてしまったと語った</figcaption></figure>
<figure id="attachment_333846" aria-describedby="caption-attachment-333846" style="width: 1277px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="d4735fe7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/5c439ca176155958f2a6c9ca8030d440.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333846" class="wp-caption-text">「レンタル元受刑者」を無料にする代わりに、YouTubeの動画を撮らせてもらうという</figcaption></figure>
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結束 武郎

元受刑者を借りられるサービスである「レンタル元受刑者」。詐欺で逮捕されたフナイムさんがなぜこんな活動を始めたのかやこれからどうなりたいのかを直撃取材した！

「6000万円」だまし取った元詐欺師が借りられる「レンタル元受刑者」が犯罪被害者の間で人気なワケ

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