市川猿翁さん死去で思い出す、妻・藤間紫さんと語っていた香川照之「歌舞伎入り」と澤瀉屋の“行く末” | FRIDAYデジタル

市川猿翁さん死去で思い出す、妻・藤間紫さんと語っていた香川照之「歌舞伎入り」と澤瀉屋の“行く末”

芸能リポーター・石川敏男の芸能界”あの出来事のウラ側は……”

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浅草で「お練り」をした澤瀉屋一門。市川猿翁(右から3人目)を中心に四代目猿之助(右端)と市川中車こと香川照之(右から4人目)(’12年)
浅草で「お練り」をした澤瀉屋一門。市川猿翁(右から3人目)を中心に四代目猿之助(右端)と市川中車こと香川照之(右から4人目)(’12年)

《芸能リポーター・石川敏男の芸能界“あの出来事のウラ側は……”》

女優の藤間紫さんが亡くなって14年。ご主人の市川猿翁さんも9月13日に不整脈で亡くなった。

紫さんが兄妹との財産争いから始まって、猿翁さんがいかに紫さんを支えてきたかを見続けてきたオレは、逆に紫さんが支え続けていたのが猿翁さんだということもよく知っていた。

東京・赤坂での小料理屋や長野軽井沢の別荘で、お弟子さんも含めて多くの澤瀉屋の俳優さんともお付き合いができた。思い出もいっぱいある。

紫さんの踊りにほれ込んだ猿翁さんは、結婚して子供まで生まれた女優・浜木綿子さんを捨てて、1年数か月で紫さんを選ぶことになる。18歳年上の紫さんを選んだ猿翁さんは、周囲の声を無視して同棲生活を始めてしまう。

その“捨てた子供”が香川照之さん(市川中車)だ。

《多くの人々に愛され、自らしかなしえない歌舞伎道を最後まで全うしたことは、私には掛買いの無い誇りです》

と、父の死にコメントを寄せた中車さん。京都・南座に出演中で、父に逢える時間が遅れてしまったのは「死に目にも会えない」役者の辛いところだ。

近親者のみで家族葬が行われ、後日「お別れ会」を松竹が開くという。

紫さんや猿翁さんと親しかったオレは、中車さんが歌舞伎の世界に入ってきた関係をおふたりから聞かされていた。

生まれてすぐに父と離ればなれになった中車さんは、25~6歳の時に母である浜さんの意見を聞かずに猿翁さんに会いに行く。だが父からは

「あなたか子供でもないし。会う必要もない」

と、冷たく言われてしまう。それから数十年たったころ。紫さんが猿翁さんに言った。

「たった一人の子供なんだから、ちゃんと会いなさい」

と。楽屋で会い親子関係が生まれた。

それから猿翁さんの楽屋をたびたび訪ねるようになった中車さんは、歌舞伎に世界を知りたくなる。何度も何度も猿翁さんに

「歌舞伎の世界に入りたい」

と申し込むが、猿翁さんの返事は

「ダメ」

の一点張り。

「生まれた時から歌舞伎の世界にいる人間は、舞台を降りても歌舞伎役者。それが身についている」

と紫さんは言っていた。

その紫さんが亡くなり、猿翁さんの体調が崩れた時から中車さんの“歌舞伎入り”への行動が本格化する。

いとこにあたる市川亀治郎さん(当時)を口説き、

「筋書きを描いた」(関係者談)

勧進元の松竹も大歓迎だ。

亀治郎さんは大きな名前になっていた猿之助を継ぐことに躊躇していたが、周囲の期待に押されて「4代目猿之助」を継ぐ。

その襲名発表記者会見。一緒に出席した猿翁さんに

「浜さん、ありがとう。恩讐のかなたにありがとう」

と、言わせた。

会場は猿之助襲名会見と言うよりも、中車と息子・團子さんの“歌舞伎入り”の扱いが大きくなった。それまではうまくいっていた“従弟同士”の関係が崩れた瞬間だったそうだ。

関係者のひとりは

「中車にはめられた」

と、4代目はかなり怒っていたと明かす。表向きはともかく、それから2人の関係はウラではずっとうまくいってなかった。

そんな中で中車さんの銀座ホステスへの「セクハラ問題」が起きる。

「しょせんそんな奴だよ」

という言葉が猿之助さんから聞こえてきたという。

だが、その猿之助さんが今度は心中未遂事件を起こしてしまう。

セクハラ問題に心中未遂……。「澤瀉屋」の歯車が狂い出したのは、猿翁さんと紫さんが止めていた中車さんが歌舞伎の世界に入ったからだと思わざるを得ない。

一番気になるのは、「澤瀉屋」の残された幹部たちが、中車さんを表面上はともかく“歌舞伎役者”として認めていないこと。歌舞伎界全体も彼を認めていないんだよね。

その中車さんが今は「澤瀉屋」の最高責任者になっている。これからの「澤瀉屋」を消さないために團子さんの頑張りが大切だけど、「澤瀉屋」の芸を伝えられるのは、4代目猿之助さんしかいないのだが……。

猿翁さんと紫さんが大きくした「澤瀉屋」。2人はこの状況を天国からどんな思いで見ているのだろうか――合掌。

  • 取材・文石川敏男(芸能レポーター)

    ‘46年生まれ、東京都出身。松竹宣伝部→女性誌記者→芸能レポーターという異色の経歴の持ち主。『ザ・ワイド』『情報ライブ ミヤネ屋』(ともに日本テレビ系)などで活躍後、現在は『めんたいワイド』(福岡放送)、『す・またん』(読売テレビ)、レインボータウンFMにレギュラー出演中

  • PHOTO共同

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