斉藤 健仁

<figure id="attachment_334305" aria-describedby="caption-attachment-334305" style="width: 3886px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e5d92312"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/f205599cd533cbc7d6ab438e6474305e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334305" class="wp-caption-text">後半20分過ぎ、軽快な走りでサモア代表戦士を置き去りにして50ｍを走り切ったが、直前に味方がノックオンの反則をおかしていたため、”幻のトライ”となった</figcaption></figure>
<p>ラグビーワールドカップ（以下、W杯）で史上初のベスト４進出を目指す日本代表はサモア代表と対戦。28-22で振り切り、グループステージD組で２勝目をあげ、同組２位に浮上した。次戦10月８日のアルゼンチン代表戦に勝てばグループステージ突破が決まる。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>日本代表は９月18日（日本時間）に、「ラグビーの母国」で優勝経験のあるイングランド代表に12－34で敗れて１勝１敗の状態でこの日のサモア代表戦を迎えていた。イングランド代表戦を含めて見事なステップから繰り返し快走を見せたのは、コロナ禍の４年間でBK唯一の〝海外組〟だったWTB松島幸太朗（東京サントリーサンゴリアス）だった。</p>
<p>10-3で迎えた前半32分、リーチマイケルのトライにつなげる突破を見せた。アタックだけでなく、25-8で迎えた後半13分過ぎには、サモアが日本代表のディフェンス網の裏に抜け出て、トライを奪われるピンチを背負ったが、松島が相手選手にタックルして、パスミスを誘い、大ピンチの芽をつんだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「ベスト８につながる勝利なのでチームで喜びたい。ただ、直すべきところはたくさんありますし、自分たちのぬるい部分が時々出てしまったところもありましたので、気を引き締めないといけないと思います」</span></p>
<p>桐蔭学園時代から得意のランで花園を沸かせ、前回のＷ杯日本大会で開幕戦からハットトリックを達成するなど５トライを挙げる決定力を見せた〝フェラーリ〟の異名を取るWTB松島。イングランド代表戦、12－20で迎えた後半17分、自陣からステップとハンドオフで大きく抜け出し、チャンスを作った。</p>
<p><span class="strongInContent">「身体のキレ自体は悪くない。（ゲインした場面は）外にFWがいてチャンスだなという感覚はあった」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>イングランド戦は、パスが頭に当たり、ノックオンにならず、そのボールがイングランド代表のトライにつながるというアンラッキーなシーンを境に流れが相手に傾いたが、後半20分までは十分互角に戦うことができていた。</p>
<p>試合中の（トップスピードの）ランの距離は両チーム合わせてトップの86mだった松島は<span class="strongInContent">「みんな身体を張って、しつこくディフェンスもいけていましたし、（相手に）隙を与えないところは良かった。手応えはめちゃくちゃあったし、そんなに嫌な負け方をしていない。今日のような強度で戦いを続けていけば相手も嫌がるし、勝利が見えてくる」</span>と自信をのぞかせていた。</p>
<p>Ｗ杯３大会目の出場で、今回のサモア戦も含めて全12試合で先発出場を果たしている松島はフランス大会に向けて並々ならぬ意気込みを明かしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「（自分のラグビーキャリアの）集大成となるくらいの気持ちです。（30歳という）年齢は気にしていないが、自分の気持ちがどこまで続くかわからないので最後のような気持ちで臨みます」</span></p>
<p>実は日本ラグビー史上、初めてＷ杯でベスト８に入った’19年大会後、松島は日本代表へのモチベーションは<span class="strongInContent">「なかったです」</span>とキッパリと言った。</p>
<p>ただ高校卒業後、日本だけでなく南アフリカ、オーストラリアでもプレーして来た松島に、’20年にフランスの強豪クレルモンからオファーがあり、欧州で２シーズンプレーしたことが転機となった。</p>
<p><span class="strongInContent">「フランスに行ったこと、自分の環境を変えたことが、ハングリー精神をさらに加速させた。（海外の）クラブで試合をしていくうちに、日本代表で試合をやりたいという気持ちがすぐに出てきた。（代表へのモチベーションは）消えてなかったんだな……」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本に帰国するきっかけになった「家族」の存在"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<figure id="attachment_334074" aria-describedby="caption-attachment-334074" style="width: 5472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="42a17c00"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/1ffb5afadaddf1f637f8adfbc1685e0f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334074" class="wp-caption-text">イングランド代表戦後、松島は愛娘と一緒に激闘の余韻が残るピッチを歩き、抱きかかえた</figcaption></figure>
<p>またこの４年間、松島にはもう一つの転機もあった。’21年に一般女性と結婚し長女が生まれたことだ。フルバックとして、フランスだけでなく欧州一を決める舞台でも活躍していた松島には当然、クラブ側からも熱烈な延長オファーがあり、フランスでプレーを継続することもできた。’23年Ｗ杯がフランス大会だったこともあり、個人的にはそのままフランスでのプレーを続けるのでは、と思っていた。</p>
<p>しかし、松島は<span class="strongInContent">「プレーするのは日本でもフランスでも良かったが、家族のことを考えて」</span>日本の古巣である東京サントリーサンゴリアスに戻ってくることを決めた。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>クレルモンの本拠地、タイヤメーカーのミシュランがあることで知られるフランス中部の高地にあるクレルモン＝モンフェランは人口15万人ほどの都市で、お世辞にも都会とは言えない場所だった。日本食屋さんはあったというが、買い物一つとってもパリまで車で行くとなると４時間以上かかり、プロのラグビー選手として遠征も多かった松島は家族を残していかなければならず、奥さんや子どもの負担を減らしたいという事情が日本復帰の背景としては大きかったようだ。</p>
<p>ただ松島にとって、初の欧州挑戦の地であるフランスへの思いは強く<span class="strongInContent">「フランスでプレーしていた分、こっちで応援してくれた人に会うのも楽しみですし、思い切ったプレーで応援してくださった人たちをワクワクさせるようなプレーを見せることができれば」</span>と語気を強めた。</p>
<p>過去、勝ったことがなかったイングランド代表に初勝利を奪えず、ロッカールームでは落ち込んでいる選手もいたようだが、日本代表53キャップと経験豊富な松島は<span class="strongInContent">「僕自身はやれたという感覚があった」。</span></p>
<p>サモア代表戦に勝った日本代表は10月８日、グループステージ最終戦のアルゼンチン代表戦が控え、勝てばベスト８が決まる。イングランド代表戦ではノートライに終わっても前向きな手ごたえを明かした〝フェラーリ〟松島が勝利につながるトライを重ねることが、日本代表の２大会連続の決勝トーナメント進出への起爆剤になることは間違いない。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>


1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』（誠文堂新光社）、『ラグビー観戦入門』（海竜社）がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

斉藤健仁

アフロ（１枚目）長尾亜紀（2枚目）

３大会連続W杯出場の松島幸太朗は相手が格上でも”フェラーリ”と呼ばれる鋭いランで日本代表を鼓舞してきた。しかし4年前の日本大会後、「モチベーション」があがらない苦悩と戦っていた。

サモア戦で攻守に奮闘　一度は「モチベーションが消えた」日本代表の“フェラーリ”松島を蘇らせた転機

Photo Gallery全2枚

あなたへのオススメ

関連記事