<h3><span class="strongInContent">「日本人の行列好き」はインバウンドにも有名</span></h3>
<p>中国では９月29日から国慶節の大型連休が始まった。中国による日本産水産物の禁輸など対立が続くものの、旅行先として日本人気は根強く、多くの中国人が訪日するという。こうしたインバウンドの復活に慢性的な人手不足なども重なり、日本中、人気の飲食店や観光地など、どこに行っても行列が絶えない状況だ。</p>
<p>例えば、インバウンドにも人気の東京・新宿にある高島屋タイムズスクエアの12階から14階を占める食堂街「レストランズパーク」を訪れてみると、和洋中を問わず各店とも行列で、店の前に用意された椅子に多くの人が長時間並んでいたりする。</p>
<p>こうした状況に、フランスからの観光客（男性40代）は、「なぜ日本人が行列に並ぶのか不思議。時間の無駄だと思うので並ばない」と言う。また、「多くのレストランは予約制。予約ができない店では、番号札や発信機を受け取り、他で買い物をしてから店に戻ったりする」 （香港からの女性30代）との声も聞かれる。</p>
<p>「日本人の行列好き」はインバウンドでも有名なようだ。「行列ができるレストラン」「行列ができる相談所」というように、日本では、行列は人気のバロメーターとなっていたりする。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>行列があることで、「美味しいに違いない」「何かお得なことがあるのかも」と期待値が高まり、とりあえず並んでみるかと、行列が、さらに行列を生んでしまうこともあったりする。</p>
<figure id="attachment_334670" aria-describedby="caption-attachment-334670" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="595e1714"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/26b71011834f41a828459bcd25f3b379.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334670" class="wp-caption-text">日本の味とともに、行儀よく並ぶ文化も輸出された？　写真は、福島第一原発の「処理水」放出後の８月25日、香港のスシローに行列する人たち（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">実は、日本人も行列はきらい</span></h3>
<p>飲食店に限らず、スーパーマーケットやテーマパーク、コンサートやフェス会場、美術展などのイベント、スタジアムなど、日本各地で発生している行列。行列好きの日本人といわれているものの、行列に並ぶ時間、つまり、時間を浪費すること自体を好む日本人は、外国人と同じく、ほぼいないのではないだろうか。聞かれれば、「行列は嫌い」と答える日本人は多い。そもそも「行列には並ばない」という日本人も少なくない。</p>
<p>実際、予約ラボによる’21年時の「行列に関する調査」では、「お店の行列に並ぶことが好きですか」という質問に対して「いいえ」と答えた人は70.1％に達していたりする。</p>
<h3><span class="strongInContent">行列により生じる「トラブル」と「経済的損失」</span></h3>
<p>時間の浪費となること以外にも、例えば、行列に長時間並ぶことで、炎天下の夏であれば熱中症のリスクもある。立ちっぱなしで疲労やストレスが溜まったりもする。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>行列によりトラブルや苦情が発生することも多い。行列の順番が前後する、割り込みといった顧客同士のトラブル、顧客と店舗とのトラブルだけでなく、騒音やゴミ、交通渋滞などで周辺住民とトラブルが生じることもある。</p>
<p>行列による経済的損失もバカにならない。国税庁『令和４年分 民間給与実態統計調査結果』によると、日本人の給与所得者の平均給与は458万円であり、OECD「2021年年間労働時間」によると、日本の全就業者平均の年間実労働時間は1,607時間となっており、働く日本人が行列に並んだばかりに失う機会費用は、１人１時間当たり2850円にもなる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「デジタル化」で行列を減らす対応は進むが…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<h3><span class="strongInContent">「デジタル化」で行列を減らす対応は進むものの…</span></h3>
<p>こうしたなか、経済的損失を伴う行列を減らし、顧客満足度を上げるための対応も進んではいる。</p>
<p>例えば、イオンモールや高速道路のサービスエリアなどにあるフードコートの呼び出しブザーなどは、皆さんも利用したことがあるのではないだろうか。レジで注文し出来上がるとブザー音と振動で通知が来るあれだ。 呼び出しブザーがあることで、利用者は行列に並ぶことなく、料理ができるまで席で座って待つことができる。</p>
<p>また、最近は、スマホ注文や事前決済なども増えてきている。スターバックスコーヒーでは、スマホなどで事前注文して決済することで、レジに並ばずに受け取れる「モバイルオーダー＆ペイ」を全国全ての直営店にて導入済だ。</p>
<p>プロ野球の楽天イーグルスの楽天モバイルパーク宮城や日本ハムファイターズのエスコンフィールドHOKKAIDO、Jリーグのヴィッセル神戸のノエビアスタジアム神戸などでは、完全キャッシュレス化が実現しており、「QRチケット」などチケットレスやモバイルオーダーなどとの組み合わせで入場時や飲食店などでの行列の軽減化が図られている。</p>
<p>さらに、飲食店・レストランなど人気店の順番待ちや空席をネット予約できるEPARK（イーパーク）など、様々な行列解消のためのアプリも登場してきている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3><span class="strongInContent">行列により得られる一体感や達成感</span></h3>
<p>いまやスマホアプリで簡単に予約ができたり、キャッシュレス化も進んでいるにもかかわらず、なぜ、日本人は行列をつくるのだろうか。</p>
<p>その理由の一つには、同調行動が挙げられる。同調行動とは、「まわりの言動にあわせて、自分も同じような行動をしてしまうこと」である。日本では、幼稚園や小学校のころから、朝礼や運動会など整列する機会も多くあり、和を乱さない、チームワークを大切にする、忖度する、右に倣え、集団行動や組織に属することを大切にする、といった風潮も根強くある。</p>
<p>また、本来、時間を浪費しストレスであるはずの行列が、まわりのみんなと同じ行動となることで、ある種の一体感や親密感が生まれて仲間意識を持つことができたりもする。コンサート、フェス、フードイベント、ディズニーランドやUSJなど、若い世代を中心に、日本人は行列をイベントの一環として意識しているのかもしれない。</p>
<figure id="attachment_334672" aria-describedby="caption-attachment-334672" style="width: 3000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4ff9ce90"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/6165b03bef1ba77754e33cc8fc9b5222.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334672" class="wp-caption-text">’74年（昭和49年）４月20日～ ６月10日に東京国立博物館で開催された「モナ・リザ展」。会場は「ナゾのほほ笑み」を一目見ようという人たちで身動きができない状態に。入場者過去最高の約151万人を記録し、現在でもトップ（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3> <span class="strongInContent">なぜ「富裕層」は行列に並ばないのか</span></h3>
<p>一方で、富裕層と呼ばれる人たちは、概して行列には並ばないものだ。筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、数多くの富裕層と直接接してきた。こうした経験則からいえる富裕層の特徴として、①人と同じはいや、②面倒くさがり、③時間泥棒が大嫌い、といった点が挙げられる。</p>
<p>長距離移動にプライベートジェットやヘリコプターを使うように、富裕層にとって時間はお金よりも大切だったりする。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>富裕層は、概してお金よりも時間が大切であり、人と同じことはいやで、面倒くさがりなので、その３つの要素がぴったりと揃う、行列に並ぶ、混雑するところに行く、といった行動を避けることになるのだ。</p>
<p>こうした富裕層の行動から学ぶ点はあるのかもしれない。一方で、ある程度の行列なら苦にならない、ある程度は仕方がない、と考える人も多く、人気のある店やイベントに並ぶのは当然、行列により得られる一体感や達成感があったりするという人もあり、デジタル化の進展はあれど、日本から行列がなくなることは当面はないのかもしれない。</p>


株式会社マリブジャパン代表取締役、事業構想大学院大学客員教授、金融アナリスト。1969年、岐阜県生まれ。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。三菱銀行、シティグループ証券などを経て、2013年に同社を設立。世界60か国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スターウォーズ」の著名コレクターでもある。著書に『銀行ゼロ時代』（朝日新聞出版）、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』（講談社+α新書）、『地銀消滅』（平凡社）など。

高橋克英（たかはし・かつひで）　

インバウンド復活に慢性的な人手不足なども重なり、日本中、人気の飲食店や観光地等、どこに行っても行列が絶えない。こうしたなか、経済的損失を伴う行列を減らし、顧客満足度を上げるための対応も進んでいるが…。

「行列ができるレストラン」と喜んでいる場合か…行列は「経済損失」だけど、日本から無くならない訳

あなたへのオススメ

関連記事