<figure id="attachment_334760" aria-describedby="caption-attachment-334760" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08ead925"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/020658d5993152deb83467db1aa55107.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334760" class="wp-caption-text">神田さんが描いたイラスト</figcaption></figure>
<p>我が家にはルールがある。夏は夫婦揃って休みを取り、一緒に旅行に行く。年末年始は各々(おのおの)休みを取り、私は母と、夫はケンドーコバヤシさんはじめ芸人さん仲間で旅行に行くのだ。</p>
<p>そのルール通り、この夏も夫とニューヨークに行ってきた。ニューヨークといえば、この連載のタイトルの通り、私がこの世で一番愛している都市だ。</p>
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<p>けれど、私は知っている。今回は完全に″夫のニューヨーク″だということを。</p>
<p>実はこれまでもそうだった。夫が海外旅行に行かれるのはせいぜい年２回。一方私は年６回行かれる時もある。当然、夫の１回の旅行に懸ける思いが100％尊重される旅になる。ところが、連日仕事が続き、その流れで飛行機に乗り込む夫は、大抵到着して２日目に熱を出す。それはそれで私にとってはラッキーで、朝のうちに一日分の夫の食糧を置いておき、一人で好きな所に行くことが出来ていた。</p>
<p>ところが今回はなんと、初日は部屋で睡眠を取ると言うのだ。さらに、２〜３時間寝たら、夜ご飯は近くのお店に一緒に食べに行きたいと言うではないか。（こりゃ数時間しかないぞ!?　えーい、早く寝ろ!!）。景色を眺めながらゆっくり動く夫をそそくさとベッドに横たわらせ、睡眠時無呼吸症候群対策の呼吸補助器をパパッと装着させて、部屋を出た。</p>
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<p>今回私が一番行きたかったのは、『センチュリー21』というディスカウントデパート。中〜高級ブランドのお洋服やバッグ、インテリアグッズやスーツケースまで幅広い商品を格安で販売している。ドラマや映画にも登場し、出勤初日の服装が相応しくなくて、上司から「センチュリー21に行って来い！」と言われるシーンがよくある。観光客にも人気の老舗デパートだ。しかし新型コロナの影響で’20年秋に倒産。その後、日本でいう民事再生法によって、今春再オープンした。</p>
<p>嬉しいのなんの。訪れないわけにはいかない。しかしこれまでの経験から言って、一度入ったら５時間は出てこられない。それだけ品数が多い。（掘り出し物があるかも？）という空間に入ったら最後、すべてを見ずに帰るなんてことは出来たためしがない。買い物は一期一会。″その時″を逃したら出会えないバッグや靴の気配を感じながらお店を出る……そんな情けない人間になりたくないのだ。だからこそ、たった２〜３時間しかない今回は行くのをやめ、近場の小さなディスカウントストアへ行った。買い物好きとしてのプライドを高く持ち続けることを、強い決意で選択したのだ。</p>
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<h2>忘れられないあなた</h2>
<p>旅行３日目、夫のしたいこと第１位の″マンハッタンを縦に歩き切る″を実行することに。セントラル・パークからスタートして、賑やかなタイムズスクエア、オシャレな店が立ち並ぶソーホーを抜け……（ん？　あれは……？）。突如、白い翼を広げたアート作品のような建物が見えてきた。（……ワールドトレードセンター駅だ!!）。頭の中で点と点が線になり、ゾッとした。駅の向かい側には、センチュリー21があるのだ。（やっちまった！）と心臓がドキドキし始めた。もう思いを断ち切ったあの人。その彼がこの先にいるなんて。ダメだダメだ。今回は会わないって決めたんだから。もーなんでこんな目に遭わなきゃならないの!?　（くそぉ！　これが結婚かぁー!!）。</p>
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<p>一方、夫は、駅の造形について感想を言っている。聞いていないことがバレないようそこそこに返事をしながら、（あぁ……ついに来たよぉ。生まれ変わったんだね。もう大丈夫だよ、あなたがいるから私は幸せなんだから!!）と熱く心の中で語りかけた。イメージカラーの赤で塗られた大きな看板。躍るように書かれた『Ｃｅｎｔｕｒｙ21』の文字。その勇姿を瞳に焼き付けた。</p>
<p>そして目の前に差し掛かった時、入り口がファッと開いた。センチュリー21の紙袋を持った人が店内から出てきたのだ。あの紙袋の中身は私が出会うべきものではなかろうか!?　眼球を目一杯斜め下に向けなんとか覗こうとしたが、見えない。（でもこの人、まだ店内の空気をまとっているはず！）。その人の髪の内側に入り込んでいる、店内の空気が漏れ出す。それを（逃すまい!!）と、肺の奥深くまで吸い込む。そして目を閉じて、（……年末の母との旅行はまたニューヨークにする！）と決めたのだった。</p>
<figure id="attachment_334761" aria-describedby="caption-attachment-334761" style="width: 3004px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-334761 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/695002d97b11ca3cd791054813aeec37.jpg" alt="" width="3004" height="3734" data-expapp-media-credit="PHOTO：下村一喜"><figcaption id="caption-attachment-334761" class="wp-caption-text">©下村一喜</figcaption></figure>
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<p>かんだ・あいか／1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中</p>
<p>『FRIDAY』2023年10月13・20日号より</p>
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神田愛花

夏は夫婦で旅行に行く神田愛花、この夏はニューヨークへ。お目当ては再オープンした"センチュリー21"ディスカウントデパートだ。しかし、予想外の展開が…せめて店内の空気だけでも！と奇妙な行動へ……

フリーアナウンサー・神田愛花「くそぉ！　これが結婚かぁー!!」

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