球春到来!沢村賞投手 斉藤和巳が12球団の投手をズバッと斬る

ミスター沢村賞が見抜いた「ベストピッチャー」「心配なピッチャー」

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
菅野智之 リリースする指先にロスなく力が伝わる「理想に近いフォーム」(斉藤氏)が精度の高いボールを生む

「ソフトバンクのハイレベルなブルペンでも、ドラフト1位の甲斐野央(かいのひろし)(22)は目立っていましたね。2月1日に見たときは真っ直(す)ぐがシュート回転するクセが出ていましたが、16日には修正されていた。真っ直ぐの最速は150㎞台中盤。リリーフとしては十分、戦力になってくれるでしょう。ただ、個人的には先発をやらせてみても面白いと思います。本人は謙遜していましたが、球種は豊富ですし、フォークというウィニングショットも持っている。フォークでストライクも取れるそうですから、能力的には十分です」

通算勝率は驚異の.775。実働11年間で2度、沢村賞に輝いた斉藤和巳氏(41)は引退後、毎年12球団のキャンプを巡っている。6年目となる今年、”ミスター沢村賞”の目に留まった男はいたのか?

斉藤氏は「即戦力と言われる新人では甲斐野と西武のドラフト1位・松本航(わたる)が目立っていた」と言う。

「ドンッとくる球質の重そうなボールを投げていました。キャンプで僕が注目するのは身体の使い方。松本はスムーズでバランスよく投げていた。もともと馬力はあるので『目一杯、力を入れなくても、ボールが指にかかりさえすれば強いボールがいくだろう』と思わせるものがあった。先発として大事な能力ですよ」

高卒投手で一軍デビュー一番乗りとなりそうなのが日本ハムの柿木蓮(かきぎれん)(18)だ。

「真っ直ぐも変化球もしっかり腕を振って投げられている。簡単そうに聞こえますが、これがなかなか難しいんです。『クロスステップなので、右ひざが前に出ないように気をつけている』と自分でテーマを持っているのもプロ向き。栗山英樹監督は『身体ができている。できているのに上で投げさせないのは可能性を狭めることになる』と言っていたので、1年目から使うことも十分ありえます」

セ・リーグでは阪神の3年目右腕、才木(さいき)浩人(20)が開花しそうだ。

「上背があって、真っ直ぐも速い。ただ、全部が一所懸命なので、もう少し力の抜き方を覚えれば安定してくる。楽しみなピッチャーです」

その点、斉藤氏が「次元が違う」と絶賛するのが巨人の菅野智之(29)だ。

「ゆったりとしたフォームからは想像もつかないような剛速球を投げる。力の抜き方をマスターしているから、力(りき)みがなく、リリースの瞬間まで力を溜めて、ロスなくボールに伝達できている。フォームとしては理想形に近いですね。あとは再現性を高めるだけですが、それもかなりの確率でできている。今回、原辰徳監督のご厚意で真後ろから菅野の投球を見せてもらったのですが――マウンドから捕手のミットまで敷かれたレールがあって、そこにボールを乗せているだけ――に見えました。糸を引くような真っ直ぐというかね。余計な力が入らないので、コントロールを乱すことはない。ボールのキレ味も増す。スライダーなどの変化球も打者の手前ギリギリで曲がり始めるから、威力抜群です」

円熟の投球を見られそうだ。

輝きを失ったエースたち

ドラフト5位の柿木が今季中の一軍昇格を有力視される中、ドラフト1位の吉田輝星(18・日本ハム)は時間がかかりそうだ。フリーバッティングでの投球を見て斉藤氏はあることに注目した。

「去年の夏、吉田が甲子園で投げている姿をテレビで観て、『おおっ』と身を乗り出しました。高校生であれだけスピンが利(き)いた真っ直ぐを投げるピッチャーは久しぶりだったからです。バッターはスピードガンの数字以上に速く感じたでしょう。ただ、疲れの影響なのか、吉田がフリーバッティングで投げていた真っ直ぐは甲子園で投げていた真っ直ぐではなかったですね。あと、彼に関しては変化球が課題でしょう。変化球を投げる時に腕の振りが緩む。そこをプロのバッターは見逃しません。真っ直ぐでも変化球でも、しっかり腕が振れる柿木とは対照的です」

二人は2月16日の紅白戦に先発したが、吉田は大田泰示(28)にホームランを浴び、柿木は三者凡退に抑えた。

「いい経験になったでしょう。ここからですよ。実戦に入っていって、彼らがどうやって対応していくか。キャンプ中に二人と話す機会がありましたが、向こうっ気が強く、テーマを持ってキャンプを過ごしている柿木に対して、吉田は人懐っこくて、おおらか。高校生らしいというかね。吉田はじっくり時間をかけて育てていくのだろうと思います」

心配なのは柿木の大阪桐蔭の先輩で、甲子園春夏連覇を成し遂げた阪神・藤浪晋太郎(24)だ。ルーキーイヤーから3年連続で二ケタ勝利を挙げたが、ここ数年は四死球を連発して打ちこまれる場面が目立ち、昨季は5勝3敗、防御率5.32と自己ワーストの成績。不振による二軍落ちも経験した。

「いまのままでは、同じことを繰り返してしまうかなと思いました。ブルペンで投球練習を見ていると、ある程度、『こういう意識で投げているんだろうな』という狙いがわかるものです。藤浪の場合、何をしたいのかが見えてこない。一球一球、投げ終わった後に何らかのリアクションがあった。考えごとをしながら投げているように見えました。リズムに乗って投げ込む中で身体に覚えさせていく作業も大事だと思うのですが……藤浪を見ていると、やるべきことが絞れていないように感じましたね。フォームにも、考え方にもムダが多いというか」

極力、ムダを排除したフォームをマスターした巨人・菅野とは対照的だ。

「結果、一球ごとにフォームが変わっていた。フォームが不安定なのに、コントロールが安定するはずがないですよね。藤浪は自分の思い描いている通りに身体を使えていないんだと思います。もうちょっと、ものごとをシンプルに考えて、シンプルに身体を動かせたらいいのですが……」

イップス(精神的な原因による動作障害)を指摘する声もあったが、野球評論家の落合博満氏は「技術不足」とバッサリ。斉藤氏も基本的には同意見だ。

「イップスになると、投げるという動作自体、できなくなる。制球難=イップスではないのです。ただ、技術がないから制球できていないのは間違いない。一方で、投げるだけが技術でもない。自己分析をして解決法を探るのも技術のひとつ。藤浪の仕草を見ていると、周囲の目を気にしているように見えた。他人より、まずは自分を見つめ直すべきです」

最後にもう一人、気になるのが巨人のドラフト1位、高橋優貴(22)だという。

「シートバッティングで投げているのを見ました。腕の振りがシャープで、キレのある真っ直ぐを投げる。チェンジアップで空振りも取れるのですが――巨人のドラ1は春先で終わってしまう傾向がある。重圧なのか、指導法なのか、スカウトの問題なのかわからないですが……」

昨年は鍬原(くわはら)拓也(22)が自主トレ初日に脱落、一昨年も吉川尚輝(24)と2位の畠世周(はたけせいしゅう)(24)がケガで出遅れた。

“悪しき伝統”を打ち破れるか――!?

東洋大時代は守護神として活躍した甲斐野央は、ケガ人続出中のソフトバンクの救援陣の救世主に
紅白戦で力投する柿木蓮。144㎞の直球を武器に”台湾の4割打者”王柏融ら主力を三者凡退に
大田に速球をバックスクリーンに放り込まれて頭を掻く吉田輝星。連続四球に暴投と制球も乱れた
2月17日、日本ハムとの練習試合に先発した藤浪晋太郎は速球を狙われ、3回7安打2失点と不安を残した
北東北大学リーグでは150㎞の速球で三振の山を築いた高橋優貴。分厚い先発陣に割って入れるか

Photo Gallary6

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事