<h3>「誰が買ってるの！？」…都内の新築マンションは、初の１億円超え</h3>
東京23区の上半期の新築マンション平均価格が１億円を超えた。”金利上昇トレンド〟の今、「勢いで買っている？」「状況を考えずに借りている？」「試算した？」とFPが気を揉んでいる。
７月20日に不動産経済研究所が発表した2023年１〜６月の新築分譲マンションの平均価格は、東京23区内で１億2962万円。前年同期に比べ約6割高い。上半期では1973年の調査開始以来初の１億円突破！ 平均価格ゆえ、２億を超える物件も珍しくはない。パワーカップルも躊躇する価格帯になりつつある。
土地価格の上昇に加え、資材や人件費、運送費等の建築費も高止まり。マンション価格が上昇しないわけはない、という状況だ。住宅購入相談を受けていると「誰が買っているんですか！？」と素朴で悲痛な声を聞く。
<figure id="attachment_335838" aria-describedby="caption-attachment-335838" style="width: 3408px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ae7cd475"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/b9f9cf1afaed898c56883c46ecf91f65.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-335838" class="wp-caption-text">前年同期比、約6割高！ 2023年１〜６月の新築分譲マンションの平均価格は、東京23区内で１億2962万円（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>9月に引き続き…住宅ローン金利も上昇中！</h3>
住宅価格が上昇すると、資金計画は見直しとなる。買換えでキャッシュ払いを予定していた人も例外ではない。頭金を増やすか、借入金を増やすか。やりたくないが、希望条件をあきらめて価格を下げることも選択肢の一つだろう。借入れ派にとって悩ましいのが、住宅ローン金利の上昇だ。この10月、大手行は住宅ローン金利を９月に続き引き上げた。
例えば、みずほ銀行だと10年固定の基準金利は前月比+0.10の3.55％。高かった３月の金利に並んだ。優遇後の金利は1.45％～となるが、これも同じく高水準。全期間固定型では、「フラット35」が、前月比+0.08の1.88％（※）、年初から+0.20、前年比は+0.40と明確な上昇傾向を示している。
だが、上昇しているのは「固定型」と言われる住宅ローン金利のみ。「変動型」は変わっていない。みずほ銀行だと、変動型の基準金利は2.475％、最優遇金利は0.375％と年初から変わらずだ。名称と裏腹のこの現象、そのカラクリは、金利の連動先の違いによるもの。住宅ローン金利の固定型は長期金利、変動型は短期金利に主に連動する。
先の日銀の政策修正による長期金利の上昇を金融機関が固定型に反映した結果だ。一方、マイナス金利政策が続くなか、各金融機関は短期金利に連動する変動型の金利を据え置き。りそな銀行が10月に変動金利を引き下げるなど、超低金利競争が継続中。この結果、固定型と変動型の金利差は開く一方となっている。 
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<h3>住宅ローン利用者の７割が「変動金利型」 </h3>
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査（2023年4月）」によれば、利用者の金利タイプは、「変動型」が約７割、「固定金利選択型」が約２割、「全期間固定型」が約１割という結果だ。調査対象は、2022年10月から2023年３月までに住宅ローンの借入れをした全国の20歳以上70歳未満の人。金利差が拡がれば、さらに変動型へシフトすると見込まれる。
変動金利は変動する。ただ、その「時期」はわからない。来月かもしれないし、5年後かもしれない。ありがたいのは、10月に金利が１％上昇したからといって、11月の返済額が１％上昇するわけではないという点。多くの変動金利型住宅ローンでは、半年ごとに金利が見直されるものの、5年間は返済額が固定される特約が付いているケースが多い。自分の契約内容を確認しておこう。なお、返済額が固定されても、その間の金利上昇分の利息は支払う必要がある。 
<figure id="attachment_335839" aria-describedby="caption-attachment-335839" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e0544c50"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/7f6f91592dbcb73ba5303e3ebab3d17d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-335839" class="wp-caption-text">スタイリッシュで美しく快適な住まいに出会うと、予算計画が甘くなる。高額の借入も「今、返せる」と目の前の条件で返済計画を立てがちだが…</figcaption></figure>
<h3>「変動型を借りちゃダメな人」ほど… </h3>
住宅ローンの金利が上昇しても、家計に余裕があればローン破綻とはならない。先の住宅金融支援機構の調査では、「変動型」利用者の33.1％は、「金利上昇時、返済目処や資金余力があるので返済を継続する」と回答している。「金利負担が大きくなれば全額完済する」という利用者も11％だ、素晴らしい。返済額が上昇すると確実に将来資金、とりわけ老後資金に影響する。「住宅ローンを完済したら、老後資金が足りなくなった」という事態は避けたい。
同じ変動型住宅ローンに分類される「固定期間選択型」の利用者は、金利上昇時の返済額増加対応として「一部繰上返済」との回答が29.1％と最も高い。両者の違いは興味深い。
家計に余裕があれば、当初から固定型を選択し、金利変動リスクを回避することも可能だ。一方、借入額が高額となり、固定金利は高くて選択できず、とにかく低い変動型で返済額を抑えるしかないという、”ジャストサイズの返済計画〟は要注意。金利上昇に伴い返済額が増えると、途端に家計は苦しくなる。変動型を借りてはいけない人ほど、変動金利を選択せざるを得ないという悩ましい構図である。
<h3>甘くなる予算計画…この際、リスクには目をつぶる？ </h3>
スタイリッシュで美しく快適な住まいに出会うと、予算計画が甘くなる。高額の借入も「今、返せる」と目の前の条件で返済計画を立てがちだ。「金利がいったい、いつ上昇するっていうのか。これまでも上がってこなかったじゃないか」と。超低金利とデフレにすっかり慣れた我々は今、物価上昇という局面にいる。変動型の住宅ローン金利が上がらないという保証は無いのだ。日銀が短期金利に関わる政策を修正すれば、あっという間に動くだろう。
住宅ローンの返済は、20年、30年と続く。50年返済の住宅ローンも増えつつある。その間、パワーカップルの高年収は続くのだろうか。一時的に年収が下がったり、シングルインカムとなったり、収入減の可能性はないのだろうか。「今が最高。将来のことは考えたくない」と様々な可能性に目をつぶるには、高額過ぎる買い物だ。リスク要因をピックアップし、対応策を考えておきたい。無謀なチャレンジをする必要はないのだ。団体信用生命保険が使えない万が一のケースに留意したい。 
<div data-friday-nextpage-lead="金利が上昇したら「借り換える」！？"></div>
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<h3>金利が上昇したら「借り換える」！？  実際は、「借換えたくても借換えられない」 </h3>
金利上昇時の返済額増加を吸収できない家計こそ、金利上昇リスクを回避することが望ましい。だが、同額を固定金利で借りると返済額の差は歴然。例えば、4000万円を35年・元利均等返済で借り入れると変動金利0.375％で101,639円、固定金利1.88％だと130,055円。年間では約34万円の差となる。
固定金利1.88％で返済額を変動金利並みにしようとすると、借入額は3120万円に低下する。頭金を880万円追加するか、希望の住まいや場所をあきらめて予算を下げるか。家計を見直して収支を捻出する方法もある。物価上昇の折、家計のオペレーションは難易度が高い。賃金アップが見込めると心強いが、果たして…。
そして、変動型の住宅ローン利用者はこう言う。「上昇したら、借換える」。
いったい何に借換えるというのであろう。固定金利はすでに上昇トレンド。変動金利が上昇してきたら、固定金利の水準は雲の上かもしれない。同時に繰上返済をして残債を減らさないと、返済できない金利となっていることもある。借換えたくても借換えられない状況は辛い。金融機関を変更する際は、手数料も必要となる。金利上昇トレンドの今、借換え戦略はすでに始まっているのだ。 
<figure id="attachment_335840" aria-describedby="caption-attachment-335840" style="width: 3843px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e93b4249"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/937b09262d2bc1e837ffe9d0e554d0b9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-335840" class="wp-caption-text">先の日銀の政策修正による「長期金利の上昇」を金融機関が固定型に反映した結果、固定型と変動型の金利差は開く一方となっている</figcaption></figure>
<h3>比較は「トータルコスト」で、が鉄則…シミュレーションしよう！ </h3>
「変動型」が悪いわけではない。「固定型」が絶対解でもない。変動型の低金利のメリットを享受しようとするなら、試算し戦略を立てて臨んでほしい。試算の際は、融資手数料や保証料等諸費用を含めることは言うまでもない。比較はトータルコストで行うことが鉄則だ。
試算は、「金利が１％上がったら返済額はいくら？」「２％あがったら？」と数パターンで行うと家計への負担度が〝見える化〟される。「1.5％上昇しても大丈夫」だとわかれば安心できるだろう。
ポイントはその先だ。「プラス1.5％は大丈夫。けれど1.8％上昇して2.175％になったら家計が厳しくなる」とわかれば、借換え先の固定金利が2.175％になる前に借換える必要がある。前年比＋0.40％の「フラット35」の金利は現在、1.88％（※）。借換えターゲットは意外と近いのかもしれない。
金利上昇時の試算をして「家計的に返済が厳しい」という結果を得たら、借り過ぎを疑おう。借入れは借金ゆえ、借り過ぎが家計破綻への扉を開ける。
※融資率９割以下、借入期間が21年以上35年以下の場合で、取扱金融機関が提供する最も多い金利

NPO法人日本FP協会認定上級ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。キャリアコンサルタント。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。老若男女を対象に身近な新聞をつかった経済教育、キャリアデザイン、資産形成などの講座や研修を大学、企業へ展開。個人向けには、客観的なファイナンシャルプランニング、ライフ・キャリアプランニングを提供している。金融リテラシーの普及活動が評価され、金融庁と日本銀行から2014年度金融知識普及功績者として評される。

大石　泉

東京23区の上半期の新築マンション平均価格が1億円を超えた。”金利上昇トレンド〟の今、「勢いで買っている？」「状況を考えずに借りている？」「試算した？」とFPが気を揉んでいる。

「億ション」購入のパワーカップル「借りちゃダメな人ほど〝変動型〟を利用している」とFPが驚く訳

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