斉藤 健仁

<figure id="attachment_336265" aria-describedby="caption-attachment-336265" style="width: 3280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b6c130f4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/306eda554f2a7def5a2d36a043305879.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-336265" class="wp-caption-text">W杯大会期間中、オーストラリア代表の練習を見守るエディー・ジョーンズヘッドコーチ。W杯で圧倒的勝率を誇った名将が同国初となる予選敗退の屈辱を味わった</figcaption></figure>
<p>昨年12月にイングランド代表の指揮官を解任され、今年１月に、母国オーストラリア代表の２度目の指揮官に就任したエディー・ジョーンズ。’15年ワールドカップ（W杯）では日本代表を率いて南アフリカ代表を下したことでも知られる世界的名将だ。</p>
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<p>「ワラビーズ」ことオーストラリア代表を率いて２度目のＷ杯に向けて、これまでオーストラリア、日本、イングランドを指揮してＷ杯を戦い、14勝３敗とＷ杯に滅法強いジョーンズヘッドコーチ（HC）は「目標は優勝」と言い切っていた。だが、Ｗ杯直前のニュージーランド、フランス等とのテストマッチで５連敗を喫した。</p>
<p>また、従来から「Ｗ杯の優勝には（スコッドの）総キャップは600キャップ必要」と経験値を重視する発言を繰り返していたが、125キャップのFLマイケル・フーパーや79キャップのSOクエイド・クーパーといったベテランを外した。５年契約を結んでいたジョーンズHCは’27年の自国開催のＷ杯を見据えていたこともあり、SOカーター・ゴードンなど若手を抜擢し、地元メディアの不安をよそに大胆な改革に着手して大会を迎えた。</p>
<p>初戦のジョージア代表戦こそ４トライのボーナスポイントを取って勝利した。しかし、続くフィジー代表戦では15-22と69年ぶりとなる敗戦を喫し、さらにウェールズ代表戦では６-40と記録的な大敗。結局、10大会目のＷ杯で、優勝２回のワラビーズが初めてＷ杯の予選プールで敗退するという屈辱を味わうことになった。</p>
<p>ジョーンズHCはウェールズ代表戦の敗戦後、素直に謝罪した。</p>
<p><span class="strongInContent">「オーストラリアの全サポーターに対して謝りたいと思います。私たちのパフォーマンスは、求められる水準に達していませんでした。その点について謝罪します。すべての責任は自分にあります。本当に残念です。若いチームですが、本当にがっかりしています」</span></p>
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<p>またＷ杯大会中には、８月下旬に日本ラグビー協会の関係者と接触したことが地元紙シドニー・モーニングヘラルド紙で取り沙汰された。そのことを問われると、「何を言っているのかわからない。私はオーストラリアのコーチに専念しています。オーストラリアのラグビーのために100%力を尽くす」と答えるにとどめていた。</p>
<p>選手たちもそのことが試合に影響したのではと問われて、主将のLOウィル・スケルトンは、こうかばった。</p>
<p><span class="strongInContent">「私たちも彼を全面的に信頼している。私は彼の言葉を信頼している。彼の長期的なビジョンと、オーストラリアラグビーを取り戻したいという思いは、ポジティブなものだと思う。メディアで見るジョーンズの人柄もそうだが、チームの前で１対１で話すジョーンズの姿、指示の出し方を見れば、選手たちは彼に従うし、私もそうだ。彼はラグビーIQの高い素晴らしいコーチだ。</span></p>
<p><span class="strongInContent">彼と一緒に仕事をしていると、毎日が勉強です。彼はラグビーというゲームをシンプルにしてくれるんだ。残念ながら、週末や数週間前の試合では、ここ数ヵ月のコーチングの成果を発揮することができなかった。それは選手たちの責任であり、私たちもそのことを自覚しなければならない」</span></p>
<p>&nbsp;</p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本ラグビー協会の土田会長とは旧知の仲"></div>
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<figure id="attachment_336262" aria-describedby="caption-attachment-336262" style="width: 2597px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="40609419"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/8b3f9bb2c9e575511550ffc4d76b85e3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-336262" class="wp-caption-text">’15年W杯の最終戦後。この光景が再び見られることになるのだろうか</figcaption></figure>
<p>結局、プール３位で大会を終えたワラビーズ。ジョーンズHCによれば、平均26.5歳のチームはW杯を戦うオーストラリア代表史上最年少だったといい、４戦を戦い終えた総括会見でも「結果には満足していないが、この大会に臨んだやり方には満足している」と明かし、経験値重視のこれまでのポリシーを180度転換したことについては間違っていなかったと主張。オーストラリア協会の首脳陣はジョーンズHCの続投を表明しているが、それでも先行きは不透明なのだ。</p>
<p>今後についてジョーンズHCは<span class="strongInContent">「（私は５</span><span class="strongInContent">年の）契約書にサインしているが、11月に（オーストラリア協会の）審査を受ける。それから話は進むだろう。私はただ、全責任を負うという事実に立ち向かい、チームが良くなる機会を与えていきたいと思っていますし、何度も言っているように、結果はそれを示していませんが、私たちはそうなっていると思います」</span>とまっすぐに前を向いた。</p>
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<p>オーストラリアに留まることを示しているジョーンズHCだが、いまだに日本代表への復帰も囁かれており、日本のメディアには「次期ヘッドコーチ」という言葉が並ぶ。そのことについて、イギリスメディアのインタビューに<span class="strongInContent">「「私は（オーストラリア協会と）長期契約を結んでいるが、協会の考えが変わる可能性はある。ヘッドコーチは雇われる側の人間です。状況が変わればどうなるかわかりません」</span>と含みを持たせているのだ。</p>
<p>ジョーンズHCは1997年からサントリーとの付き合いが始まっており、今季も東京サントリーサンゴリアスのディレクター・オブ・ラグビーを務めている。サントリー出身の日本ラグビー協会の土田雅人会長とジョーンズHCは旧知の仲でもある。</p>
<p>自分の信念を曲げてでも、’27年を見据えて若手を起用したがＷ杯では予選プール敗退という屈辱を味わい、Ｗ杯での神通力がなくなったかに見えるジョーンズHC。このまま母国を率いてオーストラリア大会を指揮するのか、それとも再び日本代表のヘッドコーチになるのか。</p>
<p>いずれにせよ、次のＷ杯もどこかのチームを率いている可能性は高いだろう。そして再びＷ杯での強さを証明してみせることができるか。エディー・ジョーンズの挑戦はまだ終わらない。</p>
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1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』（誠文堂新光社）、『ラグビー観戦入門』（海竜社）がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

斉藤健仁

アフロ

ラグビーW杯で２大会前の日本代表を率いたエディ・ジョーンズ氏が次期監督の候補の一人として報道された。今大会、豪州代表を率いて同国史上初の予選敗退の屈辱にまみれた同氏にかつての神通力はあるのか。

「神通力」は？率いた豪州代表がW杯初の予選敗退でもエディーHCが日本代表監督候補にあがる理由

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