放置された墓石の裏に多額の税金で巨大施設が…福島県双葉町 荒れ果てた墓が映し出す「悲痛な現実」 | FRIDAYデジタル

放置された墓石の裏に多額の税金で巨大施設が…福島県双葉町 荒れ果てた墓が映し出す「悲痛な現実」

53億円の原子力災害伝承館、35億円の産業交流センターができる一方で……

福島県双葉町で放置された墓石群。奥には、復興予算で建てられた巨大な建造物が見える
福島県双葉町で放置された墓石群。奥には、復興予算で建てられた巨大な建造物が見える

10月5日に2回目の処理水放出が始まった福島第一原発から2㎞ほど離れた地点に、倒れた墓石が大量に放置されている場所がある。人間の背丈ほどの雑草が生い茂る一方、背後には立派な二つの建物が――。この写真を撮影したフォトジャーナリストの山本宗補(むねすけ)氏が語る。

「ここは福島県双葉町の荒れ地です。私は気になって定期的に撮影しています。墓石は、東日本大震災による津波で流されてきたのでしょう。県と町は近くに二つの『箱物』を建てましたが、誰のための建造物なのか疑問を感じます」

荒れ地の向こうに建つ『東日本大震災・原子力災害伝承館』(上写真右)と『双葉町産業交流センター』(同左)は、それぞれ約53億円と35億円の復興予算を使って’20年にオープン。多額の税金が投じられた施設のそばで、墓石はなぜ放置されてきたのか。福島県土木部まちづくり推進課に尋ねるとこう回答した。

「所有者がわかる墓に関しては、今年6月に移転を終えました。(放置された)墓石は誰のものかわからず、警察に遺失物の届け出をしたところです。所有者が見つかれば返却しますし、見つからなければどうするかを検討する。一帯は避難指示解除準備区域だったので整備計画がありませんでしたが、現在は福島県復興祈念公園を作る工事が始まっています」

地方自治総合研究所で主任研究員を務める今井照(あきら)氏は、復興予算が被災者目線で使われていないと指摘する。

「元の街の面影がまったくない『復興』が進めば、避難した住民も戻る気力を失います。帰還困難区域になっている地域では家屋が倒壊し始め、田畑は原野となっている。『箱物』に使われている復興予算は、まず原発事故前の環境に戻すために使用されるべきです」

税金で建てられた巨大建造物の近くに放置された墓石群……。上の写真は、被災地の「悲痛な現実」を表している。

建設中の高架道路。双葉町の高速道路出口から墓石群近くの「箱物」へのアクセスを良くするという。多額の税金が投入される
建設中の高架道路。双葉町の高速道路出口から墓石群近くの「箱物」へのアクセスを良くするという。多額の税金が投入される

『FRIDAY』2023年10月27日号より

  • 取材・文形山昌由(ジャーナリスト)
  • PHOTO山本宗補

形山 昌由

ジャーナリスト

Photo Gallery2

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事