“がぶ飲み”派に朗報! EUとのEPA発効でワインが安くなる
2月1日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)により、EU産ワインの関税は即時撤廃となった。各社の値下げが相次ぐ中、今回のEPA発効でデイリー用テーブルワインは、実際どのくらいお得になるのか。
1000円台のボトルワインがお買い得に
「日欧EPAのインパクトは数千円の高価なワインより、1000円台のワインに相当な影響を与えると思います。実際は100~300円ほどの値下げになりますが、1500円だったものが1300円に、2000円を超えていたものが1000円台で買えるようになったことは、かなりお得感が高いと思います」
と話すのは成城石井でワイン仕入れを担当している商品本部の星野鉄兵さん。成城石井は、1980年代から商社を通さずに独自ルートでワインを直接買い付け、現在約2000 種類以上を取り扱っている。
今回、値下げになったEU産ワインから、星野さんのおすすめ商品を紹介してもらった。
「弊社で力を入れているフランスワインの中でも、1番の目玉は『シャトー ラ ヴェリエール ルージュ』。数十年にわたって愛され続けているボルドー赤ワインが、300円お安くなりました。とてもバランスの優れたワインなので、いろいろな食事に合わせやすいと思います」
そして、今回のEPA発効で見逃せないのが、スパークリングワインだ。これまで、関税がワインより高かったシャンパンやカヴァなどのスパークリングワイン類は、750ミリリットルで約136円の関税がゼロになる。
「泡のイチオシは『ヴーヴ アンリ』。シャンパーニュやカヴァと同じ瓶内二次発酵で造られた、辛口スパークリングワインで、ふくよかなボリューム感があるタイプです」
関税はワイン以外にも、ブドウ(7.8~17%⇒即時撤廃)やパスタ(1キロ当たり30円⇒15年後に撤廃)、チョコレート菓子(10%⇒11年後に撤廃)など、さまざまな食品や加工品で即時、または段階的に撤廃される。
「今回のEPAでは、ワインがクローズアップされていますが、実は、他にも関税が廃止されたり、低くなったものが多数あります。ヨーロッパの食文化を立体的に提案できる好機ととらえ、味や品質にこだわるお客様に向け、ヨーロッパ産ワインを軸に、ともに約1割の値下げになるオリーブ、生ハムといった食材とのマリアージュを提案しています」
サントリーは2月1日、メルシャンは3月1日の出荷分から値下げを実施
日本の輸入ワイン市場で30%以上のシェアを占める上位2社(日経産業新聞・2016年調査)の動きも気になるところだ。
サントリーワインインターナショナルでは2月1日の出荷分から、欧州産ワインの69品目で値下げを実施(出荷価格で20~140円程度の引き下げ)。また、600円未満のデイリークラスにおいて、フランス産ワインの新商品を発売するという。
一方、メルシャンでは3月1日出荷分より、欧州ワイン76品目が値下げ(参考小売価格で1~20%の引き下げ)になるほか、1000円前後の価格帯で、スペイン産のロゼやオーガニック、スパークリングワインの新商品が発売される。
「欧州産の中でも、ほかの産地に比べて価格が安いスペイン産ワインが注目を集めるのでは、と考えています」(メルシャン 広報・佐藤啓太氏)
このほかサッポロビールやアサヒビール、イオンもEU産ワインの値下げを表明している。
輸入量第1位のチリ産ワインを、欧州産が逆転するのか?
ワインと言えば、ヨーロッパをイメージする人も多いと思うが、実は、2015年から3年連続で日本のワイン輸入量第1位は、チリ産のワイン。これは、2007年にチリとのEPAが発効され、関税が低くなったことが理由とみられている(2007年より段階的に削減され、2019年4月に撤廃)。15%前後の関税の廃止に消費者の目は敏感だ。
世界のワイン生産量の上位3ヵ国(イタリア、フランス、スペイン)だけで50%以上も占めているというヨーロッパ産ワイン。今回のEUとのEPA発効により、ヨーロッパ勢の逆転劇は起こりえるのだろうか。今後の動きが気になるところだ。
今回の関税廃止が適用されるのは、2月1日以降に日本に輸入されるワイン。店頭やレストランで、このEPAの恩恵を実感できるのは、もう少し先の話になりそうだが、質が高く、味のいいワインが気軽に楽しめるようになることは、日常的にワインを飲む人だけではなく、酒好きにとっては嬉しい限りだ。
- 取材・文:葛畑祥子