WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

安倍川 モチ子

<h3>いま人気の「異世界転生」ものや「悪役令嬢」に「婚約破棄」etc…。人気コミカライズ作品が生まれる場所 </h3>
一般の人が手がける「web小説」発のコンテンツ化が加速している。 
マンガアプリで目にする小説やマンガはもちろん、アニメやドラマ、さらには映画作品でも、web小説を原作にしたものが増加中だ。日本アカデミー賞などを受賞した映画『君の膵臓を食べたい』、興行収入が27億円を突破して続編もうわさされる『わたしの幸せな結婚』も、原作はweb小説なのだ。 
まさに、隠れ飛ぶ鳥を落とす勢いといえるweb小説業界の今について、大手web小説サイト『小説家になろう』を運営する株式会社ヒナプロジェクトの代表取締役の平井幸氏にうかがった。
<figure id="attachment_339318" aria-describedby="caption-attachment-339318" style="width: 1302px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f35a7c4d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/031fff7399cdb0e84a1cddd7d9b30f56.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-339318" class="wp-caption-text">現在の登録者数は約250万人超、これまでに一度でも小説を投稿したことがあるユーザー数の累計は43万人！　日本最大級の無料小説投稿サイト『小説家になろう』</figcaption></figure>
<h3>ケータイ小説とは異なる進化を見せた「web小説 」</h3>
インターネット普及後、アマチュアや作家志望が手がける小説といえば、ガラケー文化の流れを汲む「ケータイ小説」が担っていた。『恋空』や『Deep Love』といった有名作品も多数生まれ、記憶に残っている人も多いだろう。
かつての盛り上がりは消えたものの、ケータイ小説は今も歩みを止めず、昨年公開の映画『カラダ探し』、今年公開の『交換ウソ日記』として実写映画化が続いている。さらに、この12月には『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の公開も控えている。
<figure id="attachment_339319" aria-describedby="caption-attachment-339319" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="05304efe"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/950b10bc8dc9411560ef683b0ee5d008.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-339319" class="wp-caption-text">マンガアプリで見る「異世界転生」や「悪役令嬢」は、web小説原作作品がほとんど</figcaption></figure>
今回注目するのは、ケータイ小説より少し遅れて登場した「web小説」だ。パソコンからweb上に投稿されたことからスタートしたジャンルで、場合によってはケータイ小説と同一視されることもある。しかし、発祥や比重を占めるジャンルや文章構成における特徴などが違うため、”別物“と見なされることが一般的とされている（諸説あり）。
web小説では、「異世界転生」や「悪役令嬢」といったファンタジー作品が豊富で、近年ではマンガアプリでも人気のジャンルとなっている。
理由は言うまでもなく、プロではなくとも、小説を愛するアマチュアや作家志望の書く作品のレベルが上がってきているからだろう。
それを証明するように、平井幸氏は「毎日のように出版社やレーベルから問い合わせが来る」と話す。
<div data-friday-nextpage-lead="「レーベルからの問い合わせはほぼ毎日」"></div>
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<h3>「レーベルからの問い合わせはほぼ毎日」の引っ張りだこ状態 </h3>
『小説家になろう』は、’04年に個人サイトのような形でサービスを開始した。パソコンと携帯のデータを連動させて、両方で投稿・編集ができることを強みに成長してきた日本最大級の小説投稿サイトだ。
<figure id="attachment_339320" aria-describedby="caption-attachment-339320" style="width: 7371px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="857a7d6e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/608f94d374e9e7356d055cf3704f5fb8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-339320" class="wp-caption-text">書店では、web小説から書籍化・コミカライズ化した作品が数多く並んでいる</figcaption></figure>
‘09年に、続きがすぐに読めるしおり機能などの読者向けサービス向上を目的とした大幅なリニューアルを実施すると、ユーザー登録者数が急激にアップ。現在の登録者数は約250万人を超えている。さらに、これまでに一度でも小説を投稿したことがあるユーザー数は累計43万人、掲載作品数は100万点以上にも上るという。
「『小説家になろう』は、基本的には無料で掲載作品が読めるため、書籍化・コミカライズ化されると、ストーリーのネタバレや原作と書籍との違いを楽しむことを目的とした訪問者が増えます。 
そのため、書籍化・コミカライズ化される作品が増える度にPV数が上がってきました。現在の平均月間PV数は21億ビューくらいです」（平井幸氏・以下同）
小説を愛する人のたまり場ともいえる『小説家になろう』だが、そのビジネススタイルは極めてシンプルだ。
「弊社は、小説の無料投稿サイトの運営と開発を柱にしています。収益源は広告収入のみで、斡旋は事業にしていません。 
しかし、『掲載されている作品を書籍化したいので、作者様につないでほしい』という問い合わせは、ほぼ毎日いただきます。また、弊社が関わるのは、レーベルと作者をお繋ぎするまで。その後の動向についてはタッチしていません」
<figure id="attachment_339321" aria-describedby="caption-attachment-339321" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5f16f8a2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/87efb7135d922392ab8c1cb3f8de6539.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-339321" class="wp-caption-text">『小説家になろう』から書籍化・コミカライズ化された本が並ぶエントランス「こちらはほんの一部で、各出版様様からいただいた献本数は1万冊以上になります」（平井氏）</figcaption></figure>
『小説家になろう』の代名詞ともいえる「異世界転生」は、‘10年代に入ってから生まれたジャンル。ほぼ同時期に「悪役令嬢」が女性の人気を獲得して育ってきたという。
「当初はライトノベルの影響を強く受けていましたが、’10年代に『Re:ゼロから始める異世界生活』『転生したらスライムだった件』などの異世界転生ものが、サイトの知名度アップに貢献してくれて、その後は悪役令嬢ものと並走するような形になりました。 
最近は、再びライトノベルと合流しつつあるような気もしています。あとは、その時々に流行っているアニメやゲームといったサブカルチャーも影響していると思います」
ちなみに、web小説黎明期から見守っているが、作品の入れ替わりがかなり激しいために「次に何が流行るのかは全く分からないのが正直なところ」だと平井氏。それは、書籍・コミカライズ化に対しても同様で、レーベルから声がかかりやすい作品の特徴や読者数などの基準は特にないのだそう。
「レーベルにも様々なカラーがあるので、『選ばれやすいジャンル』はありません。ランキングに上がるような人気作品になれば、誰でも声をかけられる可能性はあると思います。ただし、問い合わせがあるからといっても、必ず作品が出版化されるとは限りません」 
<div data-friday-nextpage-lead="盛り上がる様々なコンテスト"></div>
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<h3>原石が生み出され続ける場所としての「仕掛け」 </h3>
新しい作品が生まれる土壌が整っていること以外にも、web小説ブームを盛り立てようとする追い風が他方から吹いている。そのひとつが、一年を通して開催されている様々なコンテストだ。
<figure id="attachment_339322" aria-describedby="caption-attachment-339322" style="width: 1651px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fca9de73"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/8c11098fd21d99bb9563d94e7c21039b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-339322" class="wp-caption-text">’22年より新規の公式企画として開催している「秋の歴史」</figcaption></figure>
『小説家になろう』では、サイト内の歴史ジャンルを盛り上げようと、昨年から「秋の歴史」という公式企画を開催している。参加規程のハードルを下げて広く募集しているため、約1ヵ月ほどの募集期間中に150を超える作品が集まったという。 
そんなマニアックな企画もあれば、賞金に加えて商業作品化が約束されている出版社などとのコラボコンテストも多数開催されている。
出版業界が、まだ見ぬ作家を見出そうと動く一方で、サイトに眠っている良作品を掘り起こす「スコッパー」と呼ばれる人たちの存在も忘れてはならない。
「『スコッパー』とは、ランキングに入らない埋もれてしまった良作を発掘したり、個人的なオススメ作品を紹介したりしているweb小説好きなインフルエンサーといった存在です。 
我々の当面の課題として、数ある作品の中から、読者が読みたいと思う作品にアクセスしやすい環境を整える、というものがあるのですが、これがなかなか難しくて……。なので、スコッパーの方々には、とても助けられています」
小説は、数ある創作活動の中で比較的取り組みやすく、挑戦する人も一定数いるジャンルだ。『小説家になろう』のような投稿サイトも多く、新しい小説が毎日生まれている。
「誰かが小説を投稿すると、その中から次のブームや有名作品が現れて、また新たに発展していき、それを読んだ人が、また新しい小説を投稿する。そんな“創造のループ”をこれからも見守っていきたいですね」 
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<a href="https://syosetu.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">■『小説化になろう』サイトはコチラ</a>
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安倍川モチ子

アフロ

いま人気の「異世界転生」ものや「悪役令嬢」に「婚約破棄」etc…、人気コミカライズ作品が生まれる場所…。一般の人が手がける「web小説」発のコンテンツ化が加速している。web小説業界の今について聞いた

「出版社からの問い合わせはほぼ毎日です」映画・漫画の原作…「小説投稿サイト」発の作品が人気のワケ

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