ブームの高級炊飯器 10万円超の理由は「底」にあった
「女優・奈津子のプライベート家電ライフ」 高級炊飯器編
家電女優の奈津子です。いま、皆さんの自宅にある炊飯器の価格はいくらですか? 実は家電業界では2006年以降、10万円を越える「プレミアムモデル」と呼ばれる高級炊飯器が続々と発売されています。
でも正直なところ、リーズナブルな炊飯器との違いは一体どこにあるのでしょう? 高級炊飯器があると生活がどう変わるのか、価格の差は性能にどのぐらい影響があるのか。ぶっちゃけ、10万円あれば他に色んな贅沢ができるし……。
詳しく知るために、日本初の保温機能専用電子ジャーを発売し、創業101年目の老舗メーカーである象印に「高級炊飯器のヒミツ」について教えてもらいに行ってきました。
炊飯器の高級路線がブームに
前提として炊飯器には大きく分けて下図のように3つの加熱方法があります。
上にいくほど炊きムラを抑えられ、米の弾力も増すため、価格帯も上がるそうです。当然、象印いちばんのプレミアムモデルである『炎舞炊き』も「圧力IH型」になっています。では、各メーカーが高級炊飯器を発売する狙いはどこにあるのでしょうか?
「実はお米の消費量自体は、年々減少傾向にあります。約30年前には1人あたり1日平均約4.3合(茶碗8杯分)も食べていたのに、2016年の時点では約2.5合(茶碗4杯強)になっています。ところが、バブルが弾け外食派から内食派が増えたあたりから、ごはんを単なる主食としてだけでなく嗜好品としてこだわる消費者が増えてきたんですね。これを裏付けるようにして国内の炊飯ジャー市場は『売り上げ数量は増えていないのに平均単価が上がっていく』という家電としては珍しい状況になりました」(第一事業部マネージャーの稗田雅則さん)
その人気は日本だけに留まらずアジア各国からも支持され、外国人観光客のお土産としても高級炊飯器は「爆買い」されたとか。購入者層のメインとしては国内の半分以上が50代以上であるものの、最近ではQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上を図る若い世帯にも少しずつ受け入れ始めているのだそう。
高級な理由は「かまど炊き」!?
綾野剛さんのTVCMでもおなじみの象印『炎舞炊き』は、発売当初の価格がなんと約12万3000円(一升炊きモデル)! ちょっと驚くお値段ですが、そこには革新的な技術がもりもり詰まっていました。
「従来の炊飯器と比べると『加熱方法』がまず大きく違います。開発チームで試行錯誤を重ねた結果、昔ながらの『かまど炊き』の持つ、炎のゆらぎと強さに美味しさが隠されていることを解明したんです。かまどの炎って、風などで常にゆらいでいますよね? 赤外線カメラで確認してみると、これにより釜内で激しく複雑な対流が発生し、米や水が大きくかき混ぜられていることが分かるんです。
我々としては、それまで『規則正しく均一に』加熱することが美味しさの原点だと考えていたのですが、実は『加熱の不規則性』が更なる旨味をひきだすためには必要だということが分かった訳です。それを家庭でも再現できるように業界初となるIHコイルを3つ使用する『ローテーションIH構造』を採用しました。(広報部の濱田捷彦さん)」
ほおー、コイルが内部に3ヵ所もあるのは、外観だけでは分からない点ですね。驚くべきことにこの『炎舞炊き』、通常は1年間で4トンの米を炊いて食味と検証をするところ、半年間で3トン(5kgの米約600袋分)ものお米を使って最高の炊飯プログラムを導いたんですって。
試食…、マジで美味しい!
実際に試食してみると、うおぉぉ〜!甘みと弾力がスッゴイ!
噛むたびに優しい甘さと粘りが口の中に広がり、これならおかずがなくても「1品料理」として十分成立するんじゃないかと思うほどの美味しさです。我が家で毎日使用している2万円台の炊飯器のごはんと比べると、味わいはもちろんのこと「香りの豊かさ」と「粒のツヤ感」が圧倒的に際立っていました。
取材終了後、数時間冷凍してからレンジで解凍したものを試食もしたのですが、炊飯直後の美味しさをほぼキープしていました。おそるべし高級炊飯器……!
「内釜に関しても、蓄熱性、発熱効率、熱伝導率に優れた業界初の新素材を採用しています。この炎舞炊きでは約40時間保温が可能で、リーズナブルな価格帯の炊飯器と比べても10時間以上長く保温ができ、ごはんの美味しさが変わらないんです」(稗田さん)
使い勝手も抜群
デザイン性に関しても、パーツを洗うときの手間が省けるようになっており「玉手箱」のようなデザインに進化したそう。操作ボタン部も天面側に移動あるので、このおかげで随分とスタイリッシュさが増してみえます。
緻密に計算し尽くされた内部の加熱プログラムと外観のスマートさ。つまり高級炊飯器とリーズナブルな炊飯器の違いというのは、目で分かるデザインなどのソフト面プラス、目では確認できないハード面の両面で質が違うということなのですね。
それにしてもこんなに美味しいごはんを家庭で毎日楽しめるのなら、毎回新鮮に感動できそうだしQOLがとても向上しそう。今後の高級炊飯器市場の見通しについて、稗田さんは「プレミアムモデルは各メーカーの技術を凝縮させているものなので、蓄積された最先端技術を搭載していくモデルとして今後はさらに各社でバリエーションが増えていくと思います」と言います。
簡単にお財布のヒモをゆるめられる価格帯ではないものの、長期的な視点で考えると1日単位1杯数十円で極上のお米が楽しむことができる高級炊飯器。「暮らしを楽しむ道具」として、決して高くはない買い物なのかもしれません。
<奈津子プロフィール>
女優・タレント。SDN48在籍中、秋葉原の町で家電に興味を持ったことをきっかけに猛勉強して家電製品アドバイザー ゴールドグレードを取得。現在は9本の連載に加えてFM東京「Skyrocket Company」内「家電で快適! 生活向上委員会」コーナー(毎週火曜18:10頃)、テレビ東京系「開運!なんでも鑑定団 」(毎週火曜 20時54分)にレギュラー出演中。
奈津子 亜希子 オフィシャルブログ「ナツアキブログ」、ツイッター:@natsuko_twins、Instagram:@natsuko_kaden