オールブラックスを目指す17歳・三宅駿の挑戦

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これまでは、センターやフルバックとして試合に出場してきた三宅駿

日本ラグビー界の有望株が集まるTID(Talent IDentification=人材発掘・育成)キャンプという合宿に、日本代表を目指していない日本人選手が参加していた。

三宅駿。身長171センチ、体重83キロの17歳だ。ニュージーランドのクライスト・カレッジへ留学中で、卒業後も現地でプロ選手を目指す。最終目標は、オールブラックスことニュージーランド代表に入ることだ。

現在世界ランク11位の日本代表はこれまで多くの外国出身者を招いてきたが、日本で生まれ育った選手が上位国の代表へ入るのはレアケースと見ていい。司令塔のスタンドオフというポジションを担う青年は、新たな可能性を示してくれるかもしれない。

「スキルを完璧にしたい。自分の強みを活かせるような選手になろうとしています」

幼少期から中学3年まで、兵庫県の芦屋ラグビースクールで楕円球を追った。スポーツ専門チャンネルなどで海外ラグビーに親しみ、なかでも「基礎スキルだけで(相手を)抜いていく」というニュージーランドのスタイルに惹かれた。いまの高校では、元オールブラックス主将のルーベン・ソーンヘッドコーチに指導されている。

「オールブラックスになるのが夢でした。そもそもニュージーランドでラグビーがしたかったし、それと英語の勉強も。英語は、(日本でも)それなりには勉強してきましたが、実際に向こうに行ってみると(相手の話を)聞いてもわからなかったです。最初の6か月くらいは、宿題もわからなかったです。いまは、楽しいです」

2月17~20日のTIDキャンプに呼んだのは水間良武。日本のパナソニックでアシスタントコーチを務める41歳だ。

三宅の通うクライスト・カレッジは、元オーストラリア代表監督でパナソニックを指揮するロビー・ディーンズの出身校でもある。そのため現役部員が群馬のパナソニックのグラウンドを訪れたり、水間が現地へ出向いて直接コーチングを施したりと、両者の間に交流があった。

水間は今年、ジュニア・ジャパン、20歳以下日本代表という若手連合軍の指揮官を兼務する。両軍のセレクションを兼ねたTIDキャンプを開くにあたり、かねてより実力を認めていた三宅にラブコールを送ったのだ。

「戦力になると判断しました」

なお今度のTIDキャンプでは、海外の学校に在籍する日本出身者が3名いた。

練習をサポートする元パナソニックの田邉淳もまた、学生時代をニュージーランドで過ごしている。自らの経験から、水間に助言していたという。

「きっと海外にも色々な選手がいますよ」

合宿最終日。東京・栗田工業グラウンドでは実戦形式の練習があり、三宅は日本のプロ選手と同組に入った。年上たちの真剣勝負に混ざりながらあちこちへ目を配り、見つけたスペースをラン、パスで攻略する。

「最初に(招集を)聞いた時は『え? 行けるんかな』と。高校日本代表でも高2の選手は少ししか選ばれていないのに、それを飛ばしてという感じだったので。実際に来てみたら、大学生も優しくてやりやすかったです。個人的には、スキルの部分では自信がつきました。フィジカルではほぼ当たり負けしましたけど、これからウェイトトレーニングをやっていけば(筋力は)ついていく」

本人が手応えを掴むなか、水間も目を細めた。

「やっぱり、彼は間違いなかった。フィジカルのところでどれくらいやれるか…とは思いましたが、そこも大丈夫でした。状況判断ができるのと、それを実行するためのコミュニケーション上の発信力、受信力、エクスキューション(遂行力)もある。前にも(ランを)仕掛けられて、身体が小さいのにゴールキックがかなり飛んで、その精度も高い。大きな得点源になります」

国際統括団体のワールドラグビーは、選手が代表資格を得られる国を「本人が国籍を持つ国」「両親、祖父母の誰かが生まれた国」「本人が3年以上連続で住んだ国(2020年以降は5年以上に延長)」と定める。一方、ひとつの国の代表やそれに準ずるチームで試合をすると、それ以外の国で代表を目指すのが難しくなる。

三宅はそのルールに加え、ジュニア・ジャパンが日本代表に準ずるチームであることも把握。水間に称賛されながら、3月に活動するジュニア・ジャパンのメンバーには加わらなかった。当面は、20歳以下日本代表入りが期待される。本人は言った。

「向こう(ニュージーランド)の高校代表に入るのが、今年の目標です」

水間は「正しくセレクションし、一番の選手を選んでいく」と立場を示しながら、「駿がハッピーだったらそれでいいよ」と17歳の決断を認める。

「他の選手にも、スタッフにも言っていますよ。ハッピーか? って。ハッピーじゃなかったら、いい仕事はできない」

ラグビーは多様性のスポーツとされる。様々な身体的特性を持った選手が力を合わせていく、また、様々な人種のアスリートがひとつのチームを作る。何より、ひとりひとりが自分に合った競技生活を形成できる。三宅の一挙手一投足が、改めてそう伝えてくれる。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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