中川 いづみ

<h3><span class="strongInContent">室町時代は今よりもっと「暖かかった」！？　</span></h3>
<p>猛暑の影響で紅葉が遅れている今年の秋。今のように温暖化にはなっていなかったであろう昔は、いったいいつごろ紅葉が見ごろになったのだろう。</p>
<p><span class="strongInContent">「室町時代、15世紀前半の京都での紅葉の見ごろは11月下旬から12月上旬だったようです」</span></p>
<p>こう言うのは、大阪公立大学の青野靖之准教授。「草根集」「実隆公記」など、京都付近で記された昔の日記や歌集などを調べると、京都の紅葉が盛りだった時期がわかるのだという。</p>
<figure id="attachment_341427" aria-describedby="caption-attachment-341427" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="bb78e864"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/7c2ffa54b277ec09a822c1acf0c93faa.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341427" class="wp-caption-text">地球温暖化と関係ないはずの「室町時代」の紅葉の時期は、いまと同じ！？（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<p>桜は２月１日からの平均気温の合計が400℃になったら開花すると言われる。それと同じように、青野准教授の研究によると、９月30日以後の平均気温が25.1℃より低くなった日における、平均気温と25.1℃との差の合計が546.6℃になった数値をもとに計算すると紅葉の見ごろがわかるのだとか。</p>
<p>これを逆算すれば、紅葉の盛りの日&#8221;紅葉日&#8221;から、10月の平均気温を推定することができる。そうして計算すると、</p>
<p><span class="strongInContent">「15世紀前半は比較的暖かかったと推定されます」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>そのため、紅葉の見ごろが今と同じような時期になったらしい。</p>
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<p>ところが、15世紀後半になると、紅葉日は11月中旬になることが多くなることから、10月の平均気温は14℃と推定される。ちなみに’22年の京都の10月の平均気温は18.1℃。急激に寒くなったのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「それが16世紀には16℃くらいになります。17世紀はデータが少なくて推定できませんでしたが、18世紀にも16℃くらいで、1820～1830年代には14℃くらいに下がる。それ以降は現在までジワーッと上がり続けています」</span></p>
<p>昔の気候は穀物の収穫量などで半年単位ぐらいでは解明されているけれど、月単位ではわかっていない。古記録をもとに、桜の開花時期から３月の平均気温を、紅葉日から10月の平均気温をと、昔の気温を月単位で解明していこうというのが青野准教授の研究だ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">実は、太陽活動の影響で200年に一度の寒い時期が到来！？</span></h3>
<p>気温が急激に下がった1820～1830年代の期間は、古記録によると11月上旬が紅葉日になっている年が多い。「天保の大飢饉」が起こったのも、この期間だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「1820～1830年は、とくにアジア地域で寒かったという記録があります。アジア地域は太陽活動の影響を受けやすく、この時期は太陽活動が不活発だった。気温が低くなったのは、そのせいだろうと考えています」</span></p>
<p>青野准教授の研究によって、太陽活動が不活発な時期は気温がどのくらい下がるかわかったわけだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「美しい紅葉」は見納め！？"></div>
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<p>最近200年間で３℃以上、平均気温が上がっているのは、</p>
<p><span class="strongInContent">「半分は温暖化、半分は太陽活動が活発になってきたことと、都市温暖化の影響だと思います」</span></p>
<p>17世紀はなぜか古記録に紅葉に関する記述が少なくて、いつが紅葉日かわからないが、1670～1680年代は太陽活動が不活発だったと青野准教授は言う。15世紀と19世紀、さらに17世紀にも寒い時期があったとすれば、200年ごとに寒い時期が訪れていることになる。</p>
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<p>今はまさに200年目に突入しようとしている。温暖化による災害が心配されているが、太陽活動が不活発になり、寒くなるかもしれない？</p>
<p><span class="strongInContent">「そう言っている研究者もいます。でも、私には先のことはわからない」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_341430" aria-describedby="caption-attachment-341430" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="242745bc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/675c1991086dd7a7f1b6a9383e0d39da.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341430" class="wp-caption-text">「美しい紅葉」は見納め！？</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">温暖化が進むと…「美しい紅葉」は見納め！？</span></h3>
<p>木の葉は日光を浴びて、自らの葉緑体から栄養分を作り出す。光合成と呼ばれるものだ。もともと葉には、緑色のクロロフィルと、光合成をサポートする天然色素のカロチノイドが含まれていて、寒くなって、光合成が行われなくなると、クロロフィルが分解されて、緑色の色素が薄くなり、カロチノイドの黄色が目立つようになる。イチョウなどの葉が黄色く染まるのは、そのためだ。一方、赤く染まるのは赤い色素をもつアントシアニンが増えるから。</p>
<p>急激に気温が低くなる日が２～３日続くと、木々は紅葉（黄葉）する。</p>
<p>京都の紅葉が有名なのは、盆地のため、一気に冷え込むからだろうと青野准教授は言う。</p>
<p>もし、このまま温暖化が続くとどうなるのか？</p>
<p><span class="strongInContent">「紅葉の時期は遅れるでしょうね。冷え込みが弱くなると、きれいに色づかないかもしれません」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p>桜は？</p>
<p><span class="strongInContent">「ある程度まで開花は早まりますが、それからは逆に遅くなります。桜の花の芽は冬に入るといったん眠りに入り、冬の寒さにさらされると目を覚まします。冬にしっかり気温が下がらないと、なかなか目が覚めないからです」</span></p>
<p>温暖化が進んできれいな紅葉が見られなくなるのか、それとも寒い秋がやってくるのか。四季折々の景色が楽しめる気候がいちばんいいのだけど。</p>
<p><span class="strongInContent">青野靖之　</span>大阪公立大学生態気象学研究グループ准教授。気象観測値や気候データ・植物の発育に関するデータ・人工衛星データ・古記録や古文書によるデータなどを併用しながら、植物生育の気候変化による影響の評価に関する研究、近代気象観測開始前の時代における気候条件の復元、ならびに気候変化のメカニズムに関する研究、都市域における熱環境、あるいは都市に生きる人間に関する温熱環境評価に関する研究を行っている。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="関東の紅葉の名所"></div>
<figure id="attachment_341431" aria-describedby="caption-attachment-341431" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8e86b4ae"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/87d392127134d6064f61093d8c644337.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341431" class="wp-caption-text">等々力渓谷（東京都世田谷区）12月上旬</figcaption></figure>
<figure id="attachment_341436" aria-describedby="caption-attachment-341436" style="width: 2666px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="db7ba346"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/67c21a4554bb89dcee7c091340272816.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341436" class="wp-caption-text">旧古河庭園（東京都北区）11月下旬</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_341437" aria-describedby="caption-attachment-341437" style="width: 2154px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="bf54fd1c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/4ea5db8df15fb09fd4cfc1aadc1cef2d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341437" class="wp-caption-text">三溪園（横浜市中区）12月上旬</figcaption></figure>
<figure id="attachment_341438" aria-describedby="caption-attachment-341438" style="width: 2592px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="97ccafe4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/9738779cc545c95b51dfb2e8a67baca1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341438" class="wp-caption-text">国営昭和記念公園（東京都立川市）11月中旬</figcaption></figure>
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中川いづみ

アフロ

今のように温暖化の影響がなかったであろう昔は、いったいいつごろ紅葉が見ごろになったのだろう。京都付近で記された昔の日記や通記類、歌集などを調べると、京都の紅葉が盛りだった時期がわかるのだと言う。

美しい紅葉はそろそろ見納め！？　昔の日記や歌集の「紅葉」の時期を調べてわかったこと

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