<figure id="attachment_342164" aria-describedby="caption-attachment-342164" style="width: 2508px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cd722135"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/a77327586b351bded1081bd9874c18ca.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342164" class="wp-caption-text">「パンコンチネンタル選手権」で２年連続決勝に進んだカーリング女子日本代表。決勝では韓国に敗れたが、メダルを手に笑顔。左から石崎琴美、吉田知那美、吉田夕梨花、藤澤五月、鈴木夕湖、J.D.リンドヘッドコーチ</figcaption></figure>
10月下旬、ロコ・ソラーレに連絡した。
彼女たちは今季の開幕戦を８月に開催された地元・北見市常呂町の「アドヴィックスカップ」に選び、そこで優勝すると、９月上旬にカナダ遠征に出発。６都市を転戦し11月に一時帰国するスケジュールを組んでいる。
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その６つのうちのひとつが、10月29日から11月４日までケロウナで行われたパンコンチネンタル選手権（以下PCCC）だ。彼女たちは日本代表として出場することになる。そこで取材させてもらえることになった。その時点で日本を発って２ヵ月ほどだ。多くの海外在住者や長期渡航者がそうであるように、日本の味や娯楽に飢えているかもしれないので、何か差し入れしたいという気持ちがあった。
５選手の返事は様々だった。
即答したのは吉田知那美だった。
「煎餅！　普通にコンビニやスーパーで売っている醤油味のオーソドックスなものがいいです」
続いたのは藤澤五月だ。
「のど飴が欲しいです。あと荷物に余裕があればでいいので、貼るタイプのカイロがあると助かります」
カーリングホールは当然ながら冷える。スイープをしない藤澤は特に寒さを感じるようだ。軽くて薄いほうがいいだろうから、エステーの「はるオンパックス Airy」を持参すると、首元、背中、腰、腹部にそれぞれ貼り付けてゲームに挑んでいた。
少し考えます、と時間を置いて連絡をくれたのが鈴木夕湖だった。彼女はピクミンにハマっているらしく、ボールチェーン付きマスコットの「ピクミン マスコット&amp;フルーツグミ」を指定してきた。しかし、人気商品で再販してもまだ品薄らしく、それを理解した上で「なかったら『俺のミルク』という飴がいいです」とノーベル製菓の鉄板商品を指定する二段構えだ。
なんでもカナダにはグミやチョコレートは豊富でも、キャンディーは日本のような堅いタイプではなく、キャラメルに近いスティッキーなものが主流のようだ。このPCCC直前の大会では腰痛で大事をとって欠場したけれど、ほぼ回復したと記者としてはありがたいネタも提供してくれた。
鈴木より、もう少し長く時間をかけて「本が読みたいです。ワガママを言えるなら持ち運びしやすい文庫が嬉しいです」とは吉田夕梨花だ。
チョイスはお任せという丸投げだったので実はかなり悩んだが不朽の名作『キッチン』（角川文庫／吉本ばなな）と、もっとも旬な女性作家のひとり辻村深月の『傲慢と善良』（朝日文庫）を選んだ。以前も彼女には文庫を差し入れたことがあるが、いつも律儀にお礼と感想を伝えてくれた。今回はどうだっただろうか。
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石崎琴美は「PCCCまでに思いついたらお願いするかもしれません」とのことだったが、特に追っての連絡がなかった。彼女の性格上、遠慮しているかもしれないので、好物の甘味をトレーナー陣のぶんと共に用意した。
<div data-friday-nextpage-lead="彼女たちが選んだ「好きなおにぎり」は？"></div>
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<figure id="attachment_342169" aria-describedby="caption-attachment-342169" style="width: 4320px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ed6d9777"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/61d49e87dad4e7985eca3d0173ebab36.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342169" class="wp-caption-text">今大会はスイープのきくアイスだったので、鈴木夕湖（中央）と吉田夕梨花（右）の存在感が際立った</figcaption></figure>
ピクミングミ以外は首尾よく準備できカナダまで運べたのだが、即答、実用、趣味、熟考、遠慮。差し入れひとつでこれだけ個性の出るチームも珍しい。そのことを現地で吉田知那美に伝えると「性格出すぎですね。ゆり（吉田夕梨花）以外、食べ物。夕湖ちゃんなんて食玩狙いの５才ですね」とケラケラと笑っていた。
彼女らの個性は大会に入ってもアイス内外で発揮され続けた。
このPCCCは日本代表のスポンサーであるJA全農が、海外で戦う日本代表の現地での食生活をサポートした。ケロウナ市内の日本人オーナーシェフが経営するレストランと提携し、おにぎりを毎日、会場とホテルまで届けた。
藤澤五月が大会後に「食事の面ではまったく不便がなかった。男子代表チーム（SC軽井沢クラブ）が応援してくれたし、全農さんも現地に来てくれてチームジャパンとして戦えたと思う」と感謝を示したように、食事の用意に時間をかけないぶん、身体のケアやミーティングに充てるなど時間を有効に使えたようだ。男子が銅メダル、女子が銀メダルを獲得する好成績の一因となっただろう。
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大会途中に、雑談的に「おにぎり何が美味しい？」と聞いてみた。
「和牛しぐれ煮！」（吉田夕梨花） 
「ちりめん。塩味があるのが好きです」（鈴木夕湖） 
「炊き込みご飯っぽいやつ。鶏五目」（吉田知那美） 
「なんでも美味しいけれど、沢庵やサラダなどの副菜も嬉しかった」（藤澤五月）
これまた興味深く、バラバラな回答だったが、アイスに立つこの４選手は今年でみな30歳を超えた。基本的にはいつも明るく騒がしいままだが、近年は変にカッコつけたり、取り繕ったり、感情を隠したり、ということが減ったように感じる。もちろん空気を読んだり、相手を見ながら、何か求められたり聞かれたりすれば、おにぎりの具だけではなく、なんでも正直に、ありのままを話してくれる。
残念ながら決勝で韓国代表に敗れてしまった後も、「やっぱり悔しい」というまっすぐなコメントを拾うことができた。吉田夕梨花が「今の韓国は私たちが100%のプレーをしても勝てるかどうか分からない、いい状態だと思う」とまで冷静に分析していたことは軽い驚きでもあった。
PCCCを終えたチームは、湖畔の美しい街ケロウナから北米大陸を横断し、北大西洋の海沿いの街ピクトゥへ移動。世界ツアーの上位のみが出場できるグランドスラムのひとつ、「KIOTIナショナル」に参戦中だ。ここでまた韓国代表のチームGimと対戦するも、惜敗を喫した。
「間違いなくまたグランドスラムや世界選手権で何度も対戦するチーム。しっかり戦えるように準備したい」と藤澤五月はPCCC後に話していたが、このクセ強の負けず嫌い軍団が、負けっぱなしのままにするわけがない。
彼女らが世界選手権でリベンジを果たすためにはまず、１月に札幌で開幕する日本選手権を制する必要がある。世界選手権は３月にカナダ・シドニーで開催されるが、今はちょうどシーズンも折り返しだ。
そして今季から日本選手権は国内の、世界選手権は日本代表として、’26年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックへの出場権をかけたレースが始まっている。
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<figure id="attachment_342166" aria-describedby="caption-attachment-342166" style="width: 6240px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="887d90ff"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/80e3794c1714a24a7f53e44210bd7bb3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342166" class="wp-caption-text">国際大会特有のタイムアウトのタイミングなど、すべてのことを綿密に話し合うチームだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_342167" aria-describedby="caption-attachment-342167" style="width: 6240px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c3354634"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/d30cbd1a090d6d770b1a3074ef3374cf.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342167" class="wp-caption-text">予選最終戦で快勝したオーストラリア戦でとびきりの笑顔を見せた藤澤</figcaption></figure>

1979年、神奈川県出身。幼少の頃からサッカーに親しみベルマーレ平塚（現湘南）の下部組織でプレーした経験を基に、04年からフリーランスのスポーツライターとして活動。サッカー、カーリング、メジャーリーグベースボールなどを中心に取材を続けている。2019年１月に出版された元日本代表・本橋麻里著『0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方 』(講談社現代新書)　では構成を担当

竹田聡一郎

カーリング女子日本代表がアジア・環太平洋・アメリカ大陸のトップチームで競う「パンコンチネンタル選手権」で２年連続決勝まで進んだ。カナダの６都市を回るハードな遠征の中で見せた彼女たちの素顔を紹介する。

煎餅、のど飴、グミ、本……カナダを転戦したカーリング女子代表が「欲しがったもの」と「心境の変化」

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