<figure id="attachment_342223" aria-describedby="caption-attachment-342223" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1e6b9138"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/9ee96b947f961f19673c7dc5ae818f36.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342223" class="wp-caption-text">神田さんが描いたイラスト</figcaption></figure>
<p>誰しも「″あの時″に戻れるならいつに戻りたい？」という会話をしたことがあると思う。私は過去に戻りたいと思ったことがない。というか、意地でも思わないようにしてきた。過去に想いを馳せることで、現実から目を背ける癖がついてしまうと考えていたからだ。思い出話も好きじゃなかったし、昔よく聴いた曲を聴くことも、過去を思い出すキッカケになるので避けてきた。</p>
<p>そんな私に珍しい仕事が入った。アニメ『シティーハンター』に詳しい立場で、その魅力を話すお仕事だ。</p>
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<p>（私がアニメ関連の仕事？）。驚いた。何十年とアニメや漫画に縁のない時間を過ごしてきたからだ。それらは「子どもが見るもの！」と両親から言い聞かされ、その影響で15歳頃から今に至るまで、一切触れずに過ごしてきた。さらに「テレビも教育に悪影響」ということで、一日30分しか見る時間を与えられなかった。熟考の末、愛花少女は『シティーハンター』を選んで見ていた時期があったのだ。</p>
<p>だがもう35年近くも前のこと。主人公の冴羽獠(さえばりょう)やエンディングテーマの『Get Wild』は、今も大好きだが、細部までは覚えていないため全話見直すことにした。</p>
<p>怖かった。過去に見ていたアニメを見るなんて、これまで避けてきた行為そのもの。昔のほうが楽しかったとか、戻りたいなんていう甘い感情を、この歳になって覚えてしまったら……（もうその沼から抜け出せないのでは？）。でもこれは仕事。（よぉし見るぞ！）と意を決し、夜ご飯の支度をしながら恐る恐る見始めた。</p>
<p>１話目、２話目……案の定、見事に当時の光景が蘇ってきた。兄とピッタリくっついて一緒に見ていたこと、「宿題はやったの？」という母の大きな声、床でジタバタする生まれたての弟。生暖かく柔らかい風が吹く、ハワイのホテルのベランダに座っているかのような、優しい気持ちになった。そして（あの頃は楽しかったなぁ）。あぁ……ついに禁断の感情を覚えてしまった。</p>
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<p>と同時に、現実の自分の顔がほころんでいるように感じた。料理が苦手で、キッチンに立つ時は険しい顔になりがちなのに、ホッコリ感が上回ったのだ。</p>
<p>全140話を見終わるまでの数日間、兄とはお互いの名シーンを言い合い、母からは「アニメを見てるの!?」と久しぶりにビックリされた。家族との会話もこれまでとは違う内容で盛り上がった。</p>
<p>さらに、子どもの頃とは違った解釈で見ていることにも驚いた。登場人物がしでかす悪行も（仕方ないかもなぁ）と慮(おもんぱか)ったり、主人公の見事な動きに（どれだけ練習したの!?）と、その過程が気になったり。（アニメは大人になっても面白い！）と気づいた。</p>
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<h2>ある一言で失敗した小学校受験</h2>
<p>収録は無事終了。恐れていた&#8221;目の前のことから逃げてしまう自分&#8221;になっていないことが自覚でき、そもそもなぜ過去を振り返ることを毛嫌いしてきたのか考えてみた。そして（小学校受験に理由が!?）と思い至った。</p>
<p>私は幼稚園児の頃、模試で″合格確実″と判定されていた小学校も含めて、全落ちしている。両親と臨んだ面接試験で大失敗をしたのだ。</p>
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<p>提出した自己紹介の″好きな本″の欄に、大切にしていた″昆虫図鑑″と書いた。面接官はそれに基づき「好きな昆虫は何ですか？」と聞いてきた。練習では「カマキリです！」などと答えられていたのに、本番で極度に緊張してしまい、なぜか一番嫌いだった「ゴキブリ！」と、元気に答えてしまった。</p>
<p>試験後、両親は塾の先生から「ゴキブリが出る家庭環境だと思われた可能性があるので、合格は難しいと思います」と言われたそうだ。そして、やはり落ちた。</p>
<p>ものすごくショックで悔しく、失敗したら通うことになっていた地元の小学校の門をくぐることが、数ヵ月間嫌で仕方なかった。そして、過去は振り返っても取り戻せない、後悔しないようにその瞬間を全力で頑張らないといけない、ということを６歳にして学んだのだった。</p>
<p>仕事で再び出会ったアニメが、そこまで考える機会を与えてくれた。そして過去を振り返る行為は、自分を弱気にさせるのではなく、むしろ成長を実感させてくれる行為だということまで教えてくれた。お受験に失敗してから37年。ようやくあの頃の私に打ち勝てた気がする。</p>
<figure id="attachment_342224" aria-describedby="caption-attachment-342224" style="width: 3004px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-342224 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/695002d97b11ca3cd791054813aeec37.jpg" alt="" width="3004" height="3734" data-expapp-media-credit="PHOTO：下村一喜"><figcaption id="caption-attachment-342224" class="wp-caption-text">©下村一喜</figcaption></figure>
<figure></figure>
<p>かんだ・あいか／1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中</p>
<p>『FRIDAY』2023年11月24日号より</p>
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神田愛花

「私は過去に戻りたいと思ったことがない。というか、意地でも思わないようにしてきた。」と神田愛花。とある番組がきっかけで、なぜ過去を振り返ることを毛嫌いしてきたのか考えてみると…幼稚園児時代に遡る――。

フリーアナウンサー・神田愛花「お受験が残した37年間の呪縛」

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