1976年、宮崎県生まれ。高校野球やオリンピックなど幅広く取材。著書に第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『永遠のPL学園』（小学館文庫）など

柳川 悠二

<figure id="attachment_342336" aria-describedby="caption-attachment-342336" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="97062a7e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/4758720b5d590bde579d57e6e039d8e8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342336" class="wp-caption-text">身長180㎝、体重73㎏。打者の手前で鋭く落ちるフォークも武器。同期の下村海翔（21）は阪神から１位指名を受けた</figcaption></figure>
<p>この日、青山学院大学のグラウンドでは、来春に入学する高校３年生が練習に参加していた。名門高の主将を担った球児や今夏の甲子園をわかせた選手もいる。</p>
<p>常廣羽也斗（つねひろはやと）（22）も大分舞鶴高校の３年生だった４年前、大分から上京し同じように参加していた。ただし、スポーツ推薦で入学するエリートたちとは違い、甲子園経験のない常廣はたった一人での参加だった。それでも胸には秘めていた。４年後、ドラフト１位でプロへ――。</p>
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<p>その願いは競合の末、広島東洋カープが交渉権を獲得した瞬間、成就した。</p>
<p><span class="strongInContent">「新井（貴浩）監督（46）はYouTubeで見た通りの、明るくて優しい方でした。カープはファンがめちゃくちゃ熱いというイメージがある。誰かを目標にして野球をやったことはないんですが、（広島で同僚となる）森下暢仁（まさと）さん（26）や楽天の岸孝之さん（38）のように、ストレートで空振りを取れるピッチャーが好きです。まだ比べられる段階にはありませんが、打者の手元で伸びるような真っすぐを追求していきたい」</span></p>
<p>躍動感溢れるフォームでMAX155ｷﾛの快速球を投げる常廣がドラフト戦線を騒がせるような投手となったのは、ここ１年のことだ。１年時はコロナ禍で公式戦がなく、２年時も結果を残せていない。</p>
<p><span class="strongInContent">「線が細く、身体が弱くて、質の良いボールを続けて投げることができなかった。投球フォームも上体に頼ったいわゆる野手投げで、いくら球が速くても打者からしたらタイミングが取りやすく、打ちやすかったんだと思います」</span></p>
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<p>理想の投球を模索するなかで、屈辱の出来事もあった。地元・大分で開催された３年春のリーグ戦開幕節のことだった。常廣は地元の両親も観戦に訪れるこの日の登板に照準を合わせていたが、ベンチにも入れず、駐車場の整理を担当した。</p>
<p><span class="strongInContent">「本当に悔しかった……ですが、あそこでむしろ、吹っ切れて、次への切り替えができた。投手コーチと相談しながら、ジャンプ系のトレーニングをより多く取り入れることで下（半身）が使えるようになり、地面からくる力を指先に伝えられるようになったのが大きかった」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="底知れぬ可能性"></div>
<p>今年の大学選手権では２試合に登板し、決勝の明治大戦では完封してMVPに輝いた。この夏、大学日本代表の一員となった頃には競合必至のドラフト候補となり、秋のリーグ戦も春に続いて制した。11月に行われる神宮大会でも再び日本一となれば大学四冠だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「高校時代に全国レベルの大会の経験がなかったので、大舞台で野球をやれる楽しさを感じてはいるんですけど、大きな声援のなかで投げる緊張感、不安感があります。でも、有終の美を飾りたいです」</span></p>
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<p>常廣は相模原（神奈川県）のグラウンドで朝から練習を行い、授業がある日は東京の青山キャンパスまで往復２時間をかけて通っている。</p>
<p><span class="strongInContent">「寮ではご飯を食べているか、寝ているかのどちらかです。基本的に練習や勉強で毎日24時過ぎまで起きていて、翌朝は５時には目を覚まして朝練に参加するので、平日の睡眠時間が少なすぎるんです。だから、休日に一気に寝だめしています」</span></p>
<p>趣味もない、と常廣は笑う。小３で始めた野球も趣味とは違うのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「プロになってお金を稼ぐために野球をやってきました。大学まではその準備段階だったと思います。ようやく野球が仕事になるわけですから、成功したいし、40歳ぐらいまでは続けたい」</span></p>
<p>雌伏の時が長かったからこそ、常廣には底知れぬ可能性がまだまだ秘められている気がしてならない。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="常廣羽也斗「ドラフトの目玉」直撃インタビュー！"></div>
<figure id="attachment_342335" aria-describedby="caption-attachment-342335" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2923b504"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/25fb698fa0f654095e044e7a1b73fc3e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342335" class="wp-caption-text">「大きな目標より目の前の勝利を大切にするタイプ」と本人。まずはプロ初勝利を担う</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_342337" aria-describedby="caption-attachment-342337" style="width: 1654px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2caa51ea"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/aa2d700fa5df4e4f2488df1ccd42d224.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342337" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　常廣羽也斗･青山学院大学「40歳まで、プロの舞台で投げていたい」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_342338" aria-describedby="caption-attachment-342338" style="width: 1695px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a360a38f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/75a51d6ef54e4230fb55ed86fec8f828.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-342338" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　常廣羽也斗･青山学院大学「40歳まで、プロの舞台で投げていたい」</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年11月24日号より</p>
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柳川悠二（ノンフィクションライター）

濱﨑慎治

2023年"ドラフトの目玉"青山学院大学の常廣羽也斗に直撃インタビュー！広島カープが交渉権を獲得、甲子園出場経験ナシの大学No.1右腕が明かす「無名時代の屈辱」 と 「憧れの選手」とは。

甲子園出場経験なしから大学No.１へ…青山学院・常廣羽也斗「40歳までプロの舞台で投げていたい」

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