浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">日銀「長期金利の上昇」を容認…財政再建へ転換は容易との見方も</span></h3>
<p>長期金利が上昇している。日本は千兆円超の国債を発行して巨額の借金を抱え、金利上昇は利払い増大で国民負担が増えるとみられている。一方、財政再建への転換はその気になればすぐにもできる、との指摘が専門家から出ている。将来の生活はどうなるのだろうか。</p>
<p>長期金利の指標となるのが10年もの国債の利回り。日本銀行の超低金利政策で、ゼロに近い水準に抑えられてきた。それが今年10月末の債券市場で、国債の売り圧力が強まり、利回りが0.955％まで上昇し、およそ10年半ぶりの水準になった。</p>
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<p>国債などの債券は価格と利回りが相反する関係にあり、価格下落なら利回り上昇、価格上昇なら利回り低下となる。日銀は政府発行の国債を金融市場で大量に買い支えて価格下落、金利上昇を抑えてきた。日銀はそうした方針を維持しながらも、最近は長期金利の上昇をある程度、容認する姿勢に転換した。</p>
<figure id="attachment_343165" aria-describedby="caption-attachment-343165" style="width: 4847px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7864d5cf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/c903c33a282dc54fc6d6d7dd359ac894.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343165" class="wp-caption-text">日銀は10月31日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を、１%をめどとし、１%を一定程度超えることを容認する再修正を決めた（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「国の借金」…金利上昇１％で年間10</span><span class="strongInContent">兆円の利払い増</span></h3>
<p>政府は国債の償還期限（返済期限）が来ると、返済資金が足りないため、借り換えることが多くなる。千兆円の借金があるとして、すべてを一斉に借り換えるわけではないが、すべてを一斉に借り換えた場合に１％の金利上昇は年間10兆円の利払い増と試算される。今年度の政府当初予算は総額約114兆円で、税収は70兆円弱。足りない分は国債などの借金でまかなっている。金利の上昇で利払い費が増えると、財政運営に及ぼす影響は大きい。</p>
<p>政府はデフレ対策として、国債を大量に発行し、お金をばらまいてきた。日銀はその国債を金融市場で買い入れるとともに、超低金利政策をとることで、政府の利払い費が重くならないようにしてきた。日銀の手法は「イールドカーブ・コントロール（YCC）」と呼ばれ、10年もの国債の金利を「ゼロ％程度」に誘導するように国債を買い入れてきた。いわゆる「ゼロ金利政策」だ。</p>
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<p>一方、世界では景気の拡大や原油価格の高騰などで物価が上昇し、これを抑えるために各国が金利を引き上げてきた。世界的なインフレの影響で、国内の金融市場でも金利上昇へ圧力が強まった。</p>
<p>日銀はYCC手法を使い、長期金利がゼロ％よりも上振れる許容範囲を0.25％程度、0.5％程度などと相次ぎ見直した。この許容範囲を７月末に「上限１％」としていたが、10月末には「１％をめどにする」と変更し、１％超の金利上昇も容認する姿勢に転じている。日本も金利が上昇する方向となっている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="家計にはプラス…？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">今年度の「利払い費」は8.5</span><span class="strongInContent">兆円を見込んでいたが…</span></h3>
<p>金利が上昇するなか、日本の借金はどれくらいあるのか。「国の借金」とは国債や借入金、政府短期証券の合計で、財務省によると、９月末で1275兆6116億円。そのうち国債が1131兆円超で、その大部分は利払いや償還財源を主に税金とする普通国債と呼ばれ、その残高が1027兆円超だった。</p>
<p>たとえば、財務省が公表している普通国債の残高や、利払い費と金利の推移をグラフで見ると、アベノミクスで普通国債の残高が拡大する一方で、金利が低め、低めへと誘導されたことにより、利払い費がここ20年ほど毎年７兆、８兆円前後に抑えられてきた。今年度は当初計画で約8.5兆円を見込んでいた。</p>
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<figure id="attachment_343167" aria-describedby="caption-attachment-343167" style="width: 2289px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a690aaeb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/92c538486fc9401881a49bac82001f16.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343167" class="wp-caption-text">【利払費と金利の推移】普通国債の利払い費は、ここ20年ほど毎年７兆、８兆円前後に抑えられてきた（財務省HP「財政に関する資料」より）</figcaption></figure>
<p>一方、財務省は金融市場の動向を見て、発行する国債の利率を引き上げてきている。10年もので、’22年３月までは数年にわたり0.1％にとどまっていた。今年７月からは0.4％だったのを、10月には0.8％へと大幅に引き上げている。</p>
<p>国債には固定利付型と変動利付型があり、固定利付型の償還期限は２年から40年までさまざま。国債が償還期限を迎えると、借り換えが多くなる。固定利付型の国債の利払い費は発行時の金利水準で決まり、今後の借り換えでは金利上昇により、利払い費が増大していくことになる。</p>
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<h3><span class="strongInContent">「借金」より「預金」が多い家計部門では逆にプラス？</span></h3>
<p>こうした悲観的な財政の見方に対し、専門家からは異論も出ており、国債の発行を抑えていく方法があるとの指摘がある。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は、その一人だ。日銀の長期金利１％超の容認転換が「ちょっと早かった」と話しながらも、超低金利に誘導する「YCCの&#8221;形骸化&#8221;がはっきりした」とみている。そのうえで、こう話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「日銀が金利を抑制している姿勢は続けると思う。自然にまかせると２％、３％になってもおかしくないが、景気への影響が大きすぎる。日銀が国債を買い続けて、今後の数年は１％台にとどまると思う」</span></p>
<p>さらに、斎藤さんは、ゼロ金利時代に比べれば金利上昇で国債の利払い費が増えるが、「受け入れるしかない」という。一方、借金の多い政府や企業部門と違い、家計部門は借金以上に預金が多くあり、金利上昇は家計部門全体としてプラスという。</p>
<figure id="attachment_343214" aria-describedby="caption-attachment-343214" style="width: 2189px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="50056df5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/cfb5e02192f601ef7e2dd9d104babdd9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343214" class="wp-caption-text">【家計の資金過不足】「家計部門は借金以上に預金が多くあり、金利上昇は家計部門全体としてプラス」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長（日本銀行調査統計局「2023年第２四半期の資金循環〈速報〉」より）</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="&quot;税金の無駄使い&quot;の元凶は…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">元凶は&#8221;</span><span class="strongInContent">税金の無駄使い&#8221;</span><span class="strongInContent">が多い「補正予算」？</span></h3>
<p>そもそも、日本経済はこれまでデフレで縮小均衡だったが、これから経済が成長して、財政の歳入と歳出の規模が拡大する、と斎藤さんは指摘する。大切になるのが、無駄なものにお金を使わないことで、それならば「緊縮財政」<wbr></wbr>と呼ばれるような過剰な支出の抑制にならない。</p>
<p>別の言い方をすると、「補正予算をやらなくていい。当初予算が少なすぎる」と斎藤さんは話す。どういう意味なのか。</p>
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<p>ここ何年かは、経済対策と称して毎年秋に補正予算を組んできた。一方、年度初めの当初予算は毎年、過去最高を更新してきた。これは前年度の当初予算と比べているから。実質でみるには、前年度の当初予算と補正予算を合算した総予算額で比べる必要がある。毎年の当初予算は、前年度の総予算額に比べて緊縮になっていると、斎藤さんは解説する。</p>
<figure id="attachment_343170" aria-describedby="caption-attachment-343170" style="width: 2128px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8d5d5d75"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/802951052c7007419d2b779286eaec42.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343170" class="wp-caption-text">政府は10日、’23年度の補正予算案として、13兆1992億円を閣議決定した。不足財源を補う国債の発行は、’22年度２次補正予算より減少するという（財務省WEBサイトより）</figcaption></figure>
<p>つまり、補正予算の編成をやめて、当初予算の段階で必要なものをすべて盛り込んでおけばいい。もちろん、大きな災害など、不測の事態には追加で対応も必要になることがある。</p>
<p><span class="strongInContent">「補正予算には何でも入りやすい。各省庁にとっては希望が通りやすい。一方、当初予算の編成は半年くらいかけており、審査も厳しい。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そこで各省庁は補正予算にやりたいことを入れている。補正予算は本来、不測の事態が起こったときに編成するものなのに、実際は無駄なものが入っている」</span></p>
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<p>斎藤さんはこのように、チェックが短期間で甘くなりがちな補正予算に無駄が多いとみている。</p>
<p>毎年秋の恒例行事のように、経済対策と称した補正予算は、原則としてやめるといい。そうすれば、「無駄な支出がなくなり、国債発行が抑えられていく」と斎藤さんは話す。</p>


浅井秀樹

長期金利が上昇している。日本は千兆円超の国債を発行して巨額の借金を抱え、金利上昇は利払い増大で国民負担が増えるとみられている。将来の生活はどうなるのだろうか。長期金利の上昇が、家計にはプラスなるとは？

悪いことだけじゃない！？長期金利上昇で「国の借金」の利払いは増大するが…家庭にとってはプラスに？

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