バスケ界の救世主 ニック・ファジーカスが日本に帰化した全ドラマ
バスケットW杯出場という歴史的快挙
絶望の4連敗から奇跡の8連勝。21年ぶりに自力でのW杯出場を決めたバスケ日本代表の快挙は、間違いなく、この男の活躍によるものだった。
ニック・ファジーカス(33)。Bリーグ『川崎ブレイブサンダース』に所属する、身長210㎝のビッグマンだ。
アメリカ出身のファジーカスは、昨年4月に日本に帰化。6月に代表に選出され、同月29日の強豪・オーストラリア戦に出場すると、25得点の大暴れでチームを勝利に導いた。この試合で勢いをつけ、日本は8連勝を果たしたのだ。
「ファジーカスが入ることにより、日本はまったく別のチームに生まれ変わりました。彼のシュートテクニックは、間違いなく世界水準。4連敗中の代表にはどことなく『自信のなさ』が漂っていましたが、ファジーカスの活躍で初勝利できたことで、チームに自信が植え付けられたのです」(元バスケ日本代表で江戸川大学教授の北原憲彦氏)
ファジーカスは’12年に来日して以来、リーグ得点王やMVPを獲得するなど、日本では大活躍を見せてきた。だが、NBA時代は、足首のケガなどもあり評価を得ることはできなかったという。ファジーカスへのインタビュー経験があるスポーツライターが語る。
「NBAの後にプレーしたヨーロッパやフィリピンでも馴染めなかったファジーカスにとって、ようやく見つけた安住の地が日本だったんでしょう。現在、彼は川崎に住んでいますが、道ですれ違ったファンが温かく挨拶してくれるそうです。しゃぶしゃぶやラーメンといった日本食も大好きで、ミニストップでアイスを買うのが日課。帰化については、『誰かから頼まれたわけではなく自分で決めた』と語っています。ある日突然帰化を決めたのではなく、日本で暮らすうちに、ファジーカスはこの国のために戦いたいと思うようになったのでしょう」
’16年に結婚し、昨年には長男も授かった。息子のミドルネームは、海を渡ると書いて「海渡(かいと)」だ。”日本人”になった男は、8月31日に開幕するW杯本戦でも大活躍を見せてくれるだろう。
- 写真:加藤誠夫/アフロ