映画か否か? Netflix『ROMA』が国内48館で上映!
配信映画『ROMA/ローマ』が、第91回アカデミー賞3冠獲得を受け映画館で上映!
第91回アカデミー賞で台風の目となり、3冠に輝いたNetflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』が、ついに日本の映画館でも上映される。その高い評価とは別に、ネットでのデジタル配信作品のため「そもそも映画とは何なのか?」という疑問を投げかけている作品だ。
『ROMA/ローマ』と映画賞を巡る闘いは「カンヌ映画祭」(18年5月)でも巻き起こっている。カンヌへの出品には「フランス国内での劇場公開」という条件があるのだが、『ROMA/ローマ』はこれを満たさず、コンペティション部門での上映は中止となった。代わりに(?)『万引き家族』がパルム・ドール(最高賞)を獲得している。一方「ヴェネツィア映画祭」(18年9月)は配信映画でも出品条件を満たすとし、こちらでは『ROMA/ローマ』が金獅子賞(最高賞)を獲った。
そして先のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞(ヤリッツァ・アパリシオ)、助演女優賞(マリーナ・デ・タビラ)、脚本賞、撮影賞、美術賞、音響編集賞、録音賞、外国語映画賞の最多10部門でノミネートされ、監督賞(アルフォンソ・キュアロン)、撮影賞(同)、外国語映画賞の3つを獲得したが、作品賞を『グリーンブック』に譲ったのはご存知の通りだ。
このように時期や映画賞によって、扱いや結果がまちまちだが、『ROMA/ローマ』とアカデミー賞を巡る「映画って何?」議論は、受賞式が終わった今も収まっていない。巨匠スティーブン・スピルバーグ監督が、「Netflix映画対策」として「デジタル配信映画」の扱いについて新ルール制定を求め、アカデミー賞役員会(4月開催)で何らかの提案をする意向を示しているのだ。
日本の場合はどうか? 映画館での上映と同時にDVD/BD発売やデジタル配信をする「作品」がある。観客からすれば「映画」なのだが、こちらはODS上映(other digital stuff/other digital source)、つまり「映画以外の素材を上映しています」という扱いで、映画業界の内規を満たしている(かのようにしている)。また、通常の映画が大ヒット続映中の場合でも、DVD/BDの発売が公表されると上映を取りやめる映画館チェーンもある。
そんな状況のなか、『ROMA/ローマ』の上映は配給会社を通さない異例の形式でイオンシネマ48館で実施される。急遽、上映が決まったため、各映画館はスクリーンの確保に苦労しており、3月9日の上映開始時点ではレイトショー1回のみ、という映画館もある。
『ROMA/ローマ』は、アルフォンソ・キュアロン監督の少年時代の体験をモチーフにした半自伝的内容で、物語のスケールは必ずしも大きくない。だが、圧倒的映像美と大胆かつ緻密に設計された音響、ヒロインの心情と映像表現が一体化したクライマックスなど、間違いなく映画館の大スクリーンで観るべき作品だ。『ROMA/ローマ』を取り巻く状況を考えると、日本国内での今回の上映は極めて貴重な機会と言えるだろう。
