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<p>前の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/346596">『【Ｂ級アイドルから一転】SMAPブレイク前夜に飯島三智マネージャーが起こした「歴史的な転換」』</a>では、SMAPを見放し続けてきた「時代」が彼らの背中を押すよう潮目が変わった風景を分析した。</p>
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<h2>森且行の脱退という「最後のピース」</h2>
<p>西暦のディケード、～年代という10年の単位は、その前半と後半とでがらりと様相を変える。半ばの年が転換点だ。代表的なのが、1945年。太平洋戦争終結のその年を境に、戦中と戦後に分かれる。10年後、1955年には自民党と社会党との「55年体制」が確立した。</p>
<figure id="attachment_347153" aria-describedby="caption-attachment-347153" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eace91fa"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/7366b103a81f1d19fb0ecb7d49537088.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-347153" class="wp-caption-text">SMAPを脱退し、オートレーサーへと転身した森且行</figcaption></figure>
<p>同様に重要なのが、1995年である。１月に阪神淡路大震災が起こり、３月に地下鉄サリン事件が勃発して、オウム騒動が世を揺るがせた。奇しくもそれはジャスト戦後50年の年だ。</p>
<p>バブル崩壊は1991年～1993年の期間とも言われる。だが、90年代前半はまだまだバブル気分が残っていた。その内、景気回復するだろうという楽観論が支配した。それを叩きつぶしたのが、1995年である。その後、「失われたX十年」という呼称が延々と続き、長期不況は現在へと至った。その意味で、翌96年こそ、平成が本当に始まった年と言えるだろう。</p>
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<p>1996年４月15日、これは歴史に残る日だ。午後９時からフジテレビのドラマ『ロングバケーション』が始まった。初回の視聴率は、なんと30.6％。主演は山口智子、そして木村拓哉だ。木村はこのドラマで大ブレークを果たし、「キムタク」は国民的人気のアイコンとして輝いた。</p>
<p>同じ日、続く時間帯に『SMAP×SMAP』が放送開始している。「月９」ドラマで視聴者を泣かせた木村が、アイドルグループの一員として笑わせ、楽しませた。『SMAP×SMAP』はその後、20年間も続く超人気番組となったのだ。この日、フジテレビの主導で長く続く＜SMAP体制＞が確立された、とも言えるだろう。</p>
<p>とうとうSMAPの時代がやって来た！</p>
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<p>いや、その前に一つの大事な要素が残っている。SMAP伝説というジグソーパズルを完成させるための、いわば最後のワンピースだ。</p>
<p>そう、森且行の離脱である。森はSMAPを電撃脱退した。長年の夢だったオートレース選手になるため芸能界を引退、転身したのだ。1996年５月のことである。森が『SMAP×SMAP』に出演したのは、わずか１ヵ月半にすぎない。</p>
<p>その後、いったいどうなったか？　彼の存在は完全に抹消された。森且行は「いなかった」ことになったのだ！？　過去の映像で森が映る場面ではボカシが入れられた。恐ろしい。まるで共産主義政権で粛正された元幹部が記録写真から「消される」ようなものである。</p>
<p>そこまでやるのだ。ジャニーズは。事務所を辞めた者らは存在を抹消する。その後の芸能活動を妨害……いわば徹底的に「干す」。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「新しい地図」にも通ずる仕打ち"></div>
<h2>ファンと結んだ「共犯関係」</h2>
<p>森且行に対する理不尽な仕打ちは、20年後、SMAP解散以降、事務所を退所した“新しい地図”と呼ばれる３人への仕打ちを先取りしている。やがて来る理不尽な未来を暗示しているようでもあった。</p>
<figure id="attachment_347154" aria-describedby="caption-attachment-347154" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fa65e045"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/730e366ab6c578a2927de1009a7ad64f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-347154" class="wp-caption-text">SMAP解散後「新しい地図」として活動している稲垣吾郎（左）、草彅剛（中）、香取慎吾</figcaption></figure>
<p>しかし……。あくまでそれは事務所の運営サイドの思惑にすぎない。SMAPのメンバーらは違った。時折、ポロリと森のことを口走ったりもした。それはファンやテレビの視聴者に対するひそかなサイン、いわばそう、ウインクのようにも感じられたのだ。</p>
<p>彼らはそっと片目をつぶり＜今も森且行は、俺たちの仲間だ！＞とメッセージを送る。テレビモニターのこちら側でそれを受け取り、私たちはしっかりとうなずく。そうすることで、彼らと共犯関係になれた。</p>
<p>どういう意味か？　つまり、SMAPはもはや単なるアイドルグループではない。すなわち、それは一つの生き方なのだ。</p>
<p>自由であること。楽しくあること。仲間を大切にすること。人を喜ばせること。何より、好きなことを思いっきりやって、生きること。</p>
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<p>森且行はグループを離れたが、「自分の好きなことをやる」という意味で、つまり彼は＜精神のSMAP＞なのだ！</p>
<p>森且行が今もSMAPであるということは、私たちは誰もが＜精神のSMAP＞になれるということだ。このグループの６番目の席は、そうしていつも、誰に対しても解放されているのである。</p>
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<p>SMAPのやったこと。それはあまりにも膨大で多岐にわたる。メンバー個人が、ドラマや映画や演劇や、バラエティーに出演した。５人が集って、歌やダンスやコントや……数々の名曲をリリースし、数限りないライブやコンサートを披露した。そのすべてを挙げて評することなどとてもできないだろう。</p>
<p>そこで、このグループの特質を考えてみたい。SMAPが変えたものがある。ジャニーズの歴史上、はっきりとSMAP以前と以降に分けられる。ジャニーズに限らない。アイドル、いや、我が国の芸能界にとって、SMAPは大きな変革をもたらした一つの特異点なのだ。</p>
<p>まず、その活動期間の長さである。</p>
<p>歴代のグループを振り返ってみよう。初代ジャニーズは、５年。フォーリーブスは、11年。シブがき隊は、６年。男闘呼組は、８年。光GENJIは、８年。<br>
対するSMAPは、なんと……28年なのだ！！　すごい。これは異様な長さである。</p>
<p>このことは、SMAPのもう一つの大きな特質を生むことになった。</p>
<p>デビュー時に11歳～15歳だった彼らは、解散時には39歳～44歳になっている。もはや中年期だ。SMAP以前に40代のアイドルグループなんて考えられないことだった。彼らは、アイドルにまつわる年齢の概念を変えたのだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「SMAPはいつまでもいる」は幻想だった"></div>
<h2>『世界に一つだけの花』に隠された思想とは</h2>
<p>SMAP以後のTOKIOやKinKi Kids、V6、嵐らは長く活動を続けることになる。もちろん、それはSMAPが切り開いた道を後輩グループたちが続いて歩んだということなのだ。SMAPがいなければ、後進たちの活躍もあったかどうか。これほど巨大なジャニーズ帝国は存在せず、芸能界の風景も現在とは随分と違っていたことだろう。</p>
<figure id="attachment_347156" aria-describedby="caption-attachment-347156" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b10710ca"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/fd522fb3f61c9385140f4599a223af14-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-347156" class="wp-caption-text">SMAPの才能を、故・ジャニー喜多川も認めた</figcaption></figure>
<p>ジャニー喜多川は、率直にSMAPの活躍を認めた。それまでの彼の価値観に反していようとも。歌とダンスだけではない。コントやコメディーの才覚は、クレイジーキャッツにも通じると称賛したとも言われている。</p>
<p>SMAPは、飯島三智がマネージした特異なアイドルだった。が、後続のグループは、メリー喜多川や娘の藤島ジュリー景子がマネージメントを務めることになる（SMAPと他のグループはテレビ番組で絡まなかった）。それが、やがて歳月を経て、あの決定的な破局をもたらす原因となるのだが……。</p>
<p>SMAPは、国民的アイドルになった。その頂点が、『世界に一つだけの花』である。’03年に発売されたシングル盤は300万枚以上を売り上げた。1980年代以降で我が国の最大のヒット曲だ。平成にもっとも唄われた、『君が代』と並ぶ国民ソングと言ってもよい。</p>
<p>そのメッセージは明瞭である。</p>
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<p>＜No.1にならなくてもいい<br>
もともと特別なonly one＞</p>
<p>ナンバーワンをめざす高度経済成長期のいわゆる“昭和の価値観”ではない。私たちは誰もが特別なオンリーワンなのだ。それを圧倒的にナンバーワンの人気アイドルたちが唄うのである。これぞSMAP精神のピークと言ってもいいだろう。</p>
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<p>長く続く不況期、「失われた」と形容されるその時代――平成に、私たちは『世界に一つだけの花』を唄って、生きた。月曜の夜には『SMAP×SMAP』を見て、楽しんだ。それは永遠に続くかのように思われた。</p>
<p>SMAPは、ずっと人気グループであり続け、メンバーたちは50代、60代になっても、トップアイドルであり続けるだろう、と。</p>
<p>しかし……。</p>
<p>ある日、突然、＜永遠の夢＞は終わりを告げる。私たちが抱いた、あの輝かしい＜SMAP精神＞は無惨な最期を迎えるのである。</p>
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<p>次の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/346601">『「まるで大本営発表」の声も…理不尽な解散劇を経ても「SMAPイズム」が生き続ける明確な理由』</a>では、SMAP解散後にファンたちが起こした、前代未聞の動きを取り上げる。</p>
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中森明夫

共同通信　アフロ　川上孝夫

SMAP成立の最後のピースとなったのは、森且行の脱退だった。それ以降、彼らはテレビの向こうの視聴者との共犯関係を強めていく。そうして生まれたのが名曲「世界に一つだけの花」だった

【平成のスターが生まれた日】1996年4月15日にSMAPが激変させた「ジャニーズの不文律」

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