<figure id="attachment_349427" aria-describedby="caption-attachment-349427" style="width: 1853px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f41888ef"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/8fbb4a428dba4d10939d59d382a52cd0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349427" class="wp-caption-text">玄界灘を背に。４軍からの常勝軍団再建という「人生の荒波を行く姿と重なる」と告げると、少し口元が緩んだ</figcaption></figure>
<h3><span class="format-emphasize"><span class="strong-in-content">若い投手を守ってやれなかったのは僕の力不足です</span></span></h3>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「この人生は予想してなかったなぁ……」</span></span></p>
<p>折からの荒天で荒れ狂う冬の玄界灘を前に、斉藤和巳・新４軍監督（46）がぽつりと漏らした言葉は本音だろう。</p>
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<p>前日本ハムの近藤健介（30）を７年50億円（推定）で獲得するなど、巨大補強を敢行。Ｖ奪回が’23年の至上命令となったソフトバンクが切った切り札のひとつが、通算勝率.775、沢村賞２回の「伝説のエース」の一軍投手コーチ就任だった。</p>
<p>だが、結果は優勝したオリックスに15.5ゲームの大差をつけられての３位。</p>
<p>「負けないエース」が最前線で見た敗因とは、オリックスとの差は何だったのか。</p>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「優勝するチームも50～60敗するわけですよ。全部勝つのは無理。まず考えたのは『同じ負けるにしても、負け方が大事』ということでした。今季、ホークスの先発陣が投げたイニング数はリーグワースト。ホークスのリリーフ陣は若くてまだまだ未熟ですけど、十分、しっかりしている。彼らをさらに鍛えることで先発陣に長いイニングを投げてもらおうと考えました。リリーフが盤石だと終盤での逆転が期待できるから、少々リードされても先発を引っ張ることができるんです。少しくらい失敗してもいい、逆転負けを喰らってもいいから、リリーフ陣を強化するというプランを描いていました」</span></span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="「僕の力不足です」……"></div>
<p>９回に登板するクローザーは不動だから、７回、８回に投げる勝ちパターンの投手たちを休ませる。代わりにマウンドに上がるのは、試合の中盤あたりから準備をはじめ、大量リードしている試合の２番手や、敗戦処理として投げる若手投手たちだ。</p>
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<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「緊張感のある２～３点差の勝ちゲームで投げさせて、経験を積ませようと考えました。彼らが自信をつけてくれたら、勝ちパターンの中継ぎたちが勝負の秋に余力を残すことができるから。<br>
いつだったか、勝ちパターンの中継ぎたちの登板が続き、投げられない日があったんです。いい機会だから、『先発をできるだけ引っ張って、あとは若い子でまかなう』ことにした。ルーキーの大津亮介（24）に『今日、セーブシチュエーションになったら、お前やからな』と告げた。『ええ～！』とカチコチになっていましたけど、僕は『接戦になれ、接戦になれ』とワクワクしていた。結局、点差が開いてしまったんですが、そういう登板機会を作ってあげたかったんです」</span></span></p>
<p>だが、Ｖ奪回を厳命されたチームにその余裕はなかった。接戦をモノにするために早めの継投が増え、勝ちパターンのリリーフ投手が酷使された。</p>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「若い子はちょっと失点が続くと登板機会が激減したり、二軍に落とされたりした。投げっぷりのいい津森宥紀（ゆうき）（25）とか、右打者を苦にしないサウスポーの田浦文丸（ふみまる）（24）らが、自信を失っていく姿を見るのは胸が痛かった。大津もそう。彼は、ブルペンではそこまで目立たないんですけど、実戦に入ると変身する。マウンド度胸があって、僕らを唸らせるような飄々（ひょうひよう）としたピッチングをする。それでも、シーズン中盤あたりで怖さが出てきて打たれ始めましたが、そこも含めて全部、経験なんですよ。彼らを守ってやれず、『ツモ（津森）、お前は昨季、交流戦以降に成績を落としたから、一年やれたら去年より成長や』、『大津はケガなく一年やることを目標にしよう。それができたら、何があっても今年はプラスしかない』と鼓舞することしかできなかった。投手コーチである僕の力不足です」</span></span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="オリックスと戦力差はない"></div>
<h2>オリックスと戦力差はない</h2>
<p>評論家として外から見ていた印象と、一番ギャップがあったのが投手陣の力量だ。「これだけのピッチャーがおったら、優勝できる」と斉藤氏は言い切る。</p>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「ホークスのリリーフ陣の防御率、パ・リーグ１位なんですよ。オリックスに15.5ゲームも離される戦力じゃない。では、どこに差があるのか。オリックスは先を見据えた選手起用をする。たとえば、逆転打を浴びたリリーフ投手を次の試合の厳しい場面で使う。信頼や期待を起用法で示す。オリックスのクローザーはベテランの平野（佳寿・39）ですが、休ませながらしっかりセーブも挙げさせている。リフレッシュはタイミングが大事で、調子を落としてから休ませてもダメなんです。トータルでチームをマネジメントできている」</span></span></p>
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<p>メジャーのドラフトでブレーブスから１巡目指名を受けたものの契約に至らず、ホークス入りしたカーター・スチュワート（24）という160㎞右腕がいる。</p>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「クイックが遅く、制球力にも不安があって、なかなか監督が一軍昇格にＧＯを出してくれなかったんですけど、交流戦の阪神戦でなんとか先発の機会を得た。で、４番の大山（悠輔・28）に早速スタートを切られたんですけど、僕は『走られても二塁までや』『ホームさえ踏まさんかったらエエ！』と彼に言った。盗塁もフォアボールもＯＫ！　ただし、その後を抑えろ、と。すると、面白いことが起きた。一軍でソコソコ投げられるようになったある日、クイックのタイムを測ったら一軍平均レベルの1.2秒になっていたんです。『これはお前の努力の結果や。ただ、クイック時のボール率が高い。クイックで投げるときは、アバウトにストライクゾーンに投げろ。お前のボールならそうは打たれん』と指導したら、ストライク率が上がった。投球が変わった」</span></span></p>
<p>投げることで必死な若手に「ストライクゾーンで勝負する」ことの大切さをこの一年、説き続けた。失敗するのは当たり前。大事なのは失敗から何を学ぶか。</p>
<p>「まだ怒るレベルにもない」という彼らと、そんな会話ができる日を楽しみにしていた。だが、その夢は叶わなかった。</p>
<p>斉藤氏は来季から、さらに下のレベルの選手たちを見ることになったのだ。</p>
<p>４軍監督として――。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="心は決まっていた"></div>
<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「オファーを受けて、球団には『数日、ください』とお願いしました。４軍がまったくイメージできなかったから。ただ、お世話になっている人たちに相談するなかで『イメージできてないからこそ、やってみたら？』と言われて、妙に納得したんです。自分は野球教室でチビッコに『チャレンジせんと何も得られんぞ』と言うてるくせに……と引っかかっていた。その時点で、心は決まっていた」</span></span></p>
<p>スケジュールは１～２ヵ月先までしか決まっておらず、どの選手が４軍に来るのかがハッキリするのは３月末。「わかっているのは試合が60前後あることと、８時間かけてバスで四国遠征することくらい」と、新監督は苦笑いした。</p>
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<p><span class="strongInContent"><span class="strong-in-content">「何も決まっていないのだから、固定観念を持たず、選手一人ひとりと向き合って色々なことを試そうと思っています。４番を打っていた選手を９番で使ってもいい。守備位置だって他に適性があるかもしれない。もしドラフト１位の前田悠伍（18・大阪桐蔭）が４軍に来たら、まずは頭でいきたいですね。投手全員に先発させたら面白いと思っています（笑）」</span></span></p>
<p>今季、一軍でなめた苦杯を糧に、「伝説のエース」がチームの土台、４軍で自在に手腕をふるう――これ以上の再建策はないかもしれない。</p>
<figure id="attachment_349430" aria-describedby="caption-attachment-349430" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0120deb8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/985a2634c0ba5517e243507de070808c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349430" class="wp-caption-text">一軍の本拠地・PayPayドームを見据えて「もう来ることもないやろな」。新幹線で筑後に通う日々が始まる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_349426" aria-describedby="caption-attachment-349426" style="width: 1955px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6e43fec2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/b9f3dd4789ad1117fecf3a81eb083b09.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349426" class="wp-caption-text">投手に寄り添う姿が印象的だった。「失敗を恐れ、相性などの固定観念にとらわれている選手を救いたかった」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_349428" aria-describedby="caption-attachment-349428" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="92ead5db"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/8601aa26bf37533c9389d53cd5abd3b2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349428" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　斉藤和巳･ソフトバンク新4軍監督が明かす なぜオリックスに15.5ゲーム差もつけられたのか</figcaption></figure>
<figure id="attachment_349429" aria-describedby="caption-attachment-349429" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cc695a47"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/dc09681808cdc9f772ae37eb1b6c3bcd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349429" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　斉藤和巳･ソフトバンク新4軍監督が明かす なぜオリックスに15.5ゲーム差もつけられたのか</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年12月29日号より</p>
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繁昌良司

Ｖ奪回が’23年の至上命令となったソフトバンクが切った切り札のひとつが、"伝説のエース"斉藤和巳の一軍投手コーチ就任だった。しかし結果は３位に…。"負けないエース"が最前線で見た敗因とは――。

斉藤和巳･ソフトバンク新4軍監督が明かす「なぜオリックスに15.5ゲーム差もつけられたのか」

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