テレビ局は地方に活路を…キー局に「地方自治体スポンサー」が拡大する意外な事情
スタッフは見た!週刊テレビのウラ側
昨年12月3日にテレビ東京系で放送された『軽キャンで行く!あまり知らない街マップ』。内容自体はグルメ&旅モノで目新しさはなかったが、別の面でテレビマンたちの注目を集めた。
「スポンサーを見てビックリしましたね。北海道別海(べつかい)町という地方自治体の一社提供ならぬ″自治体単独提供″番組だったんですよ」(キー局プロデューサー)
ローカル局では地方自治体が番組スポンサーになることは珍しくなかったが、キー局で地方自治体がスポンサーを務めるのは極めて稀。「テレビ局の苦しい台所事情が関係している」と広告代理店関係者は指摘する。
「企業のテレビCM離れを食い止めるため、ドラマ内でスポンサーの商品を紹介するプロダクトプレイスメントを取り入れるなど、キー局は様々な手を打っています。地方自治体はスキャンダルと縁遠く、スポンサーとしては安心安全。関係を築けば、さらなる仕事が舞い込む可能性もある。テレビ局にとっては、ありがたい存在なのです」
テレビ東京で単独スポンサーを務めた別海町に全国的知名度の高い観光地はないが、イクラやホタテなど、ふるさと納税の返礼品が人気。’22年度の寄付金額は全国12位となっている。
「番組内ではキャンプ好きで知られる『バイきんぐ』の西村瑞樹(46)と『ロンドンブーツ1号2号』の田村亮(51)が町内でホタテや人気カフェの『あんバターどら焼き』などを購入。ふるさと納税の返礼品になっていることを、さりげなく紹介していました。
テレ東は今後、自治体を変更して、シリーズ化していくのではないでしょうか。コロナが明けて、視聴者の″行ったことのない街へ行ってみたい″欲が高まっていますからね。
『出没!アド街ック天国』もここ最近、渋い街ばかりピックアップしている気がします。メジャーな街はやり尽くしたというのもあるでしょうが、地方シフトへの流れと無縁ではないはず」(制作会社ディレクター)
通販事業を手掛ける「テレビ東京ダイレクト」が’20年に長野県伊那市と地域活性化を目指す包括連携協定を締結したのを皮切りに、テレ東は地方自治体ビジネスに力を注いでいるという。
「旅番組、グルメ番組に定評があるテレビ東京は、″地方創生″を目指す自治体にとってタッグを組むメリットがある。タレント側も、番組内で現地の美味しいものが食べられるわ、うまくいけばその自治体から別の仕事のオファーが届く可能性があるわで二重に美味しい。ローカル局、タレント、自治体とまさに″三方よし″です」(同・制作会社ディレクター)
テレビ局が地方自治体に活路を見出す背景には、吉本興業が’11年から始めた「あなたの街に″住みます″プロジェクト」の成功があるようだ。
「47都道府県に所属芸人を住まわせて現地のスターにするのが目標ですが、同時に全国区の人気芸人をローカル番組に出演させることもした。これに自治体や地域企業が喜び、パイプが強まって、仕事の幅が広がった。住みますプロジェクトによって、地方が金脈になることが証明されました」(前出・広告代理店関係者)
’24年は地方にスポットを当てた番組がますます増えそうだ。
『FRIDAY』2024年1月19日号より
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