浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">能登地震でも懸念される「災害関連死」　</span></h3>
<p>今年は年初に能登半島が激震に見舞われた。元旦の午後４時ごろ、最大震度７を記録した能登地震では行方不明者の捜索が続いているが、助かった避難者は劣悪な生活・衛生環境を強いられている人が少なくない。過去の震災と同じように、避難者に災害関連死につながる人が出てこないよう、懸念して祈る気持ちの医療関係者もいる。</p>
<p>歯科医師の足立了平・ときわ病院（兵庫県三木市）歯科・歯科口腔外科部長は、’95年１月に発生した阪神淡路大震災を経験した。「当時は『災害関連死』という言葉すらなかった」と話す。</p>
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<p>当時の経験から、避難生活では口腔ケアがおろそかになりがちで、体力の弱った高齢者を中心に誤嚥性肺炎で亡くなる人が少なくない事実に気づき、口腔ケアの大切さを訴え続けている。</p>
<p><span class="strongInContent">「誰でも口の中には細菌がいて、人によって細菌数が違いますが、歯を磨かないと１、２日くらいで細菌数は10</span><span class="strongInContent">の８乗個、つまり１億個くらいに増えます」（足立さん・以下同）</span></p>
<p>足立さんはこう話し、体力の弱った高齢者などが誤嚥をして、細菌を吸い込み、肺炎になる懸念を指摘する。</p>
<p>誰でも、お茶などを飲んでむせた経験はあるだろう。むせても、体力がある人は簡単に肺炎にならないが、体力のない人だと細菌を吸い込んで肺炎になる恐れがあるという。これが誤嚥性肺炎だ。</p>
<figure id="attachment_353401" aria-describedby="caption-attachment-353401" style="width: 5616px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="795408cc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/3a75c36e96c2e11701a3037aa906912f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-353401" class="wp-caption-text">続く避難生活、「災害関連死」を防ぐためにできることは…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">阪神淡路大震災では、「震災関連死」の24</span><span class="strongInContent">％が「肺炎」だった</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>阪神淡路大震災では6434人が亡くなっている。足立さんは、’04年５月に神戸新聞が「震災関連死」と認定された927人について分析して報道していると指摘する。</p>
<p>その特徴は、</p>
<ol>
<li>肺炎が多く24％を占めている</li>
<li>高齢者が多い</li>
<li>発災から２ヵ月間に80％が亡くなっている</li>
</ol>
<p>などという。この報道を見た足立さんは<span class="strongInContent">「誤嚥性肺炎なら口腔ケアで防げるのではないか」</span>と感じた。</p>
<p>阪神淡路大震災は早朝に発生した。入れ歯の高齢者は、入れ歯を外して寝ていることが多く、震災から避難できても、入れ歯を持ち出せなかった人が少なくなかったという。そうした高齢者はその後の避難生活で、時間の経過で固くなったおにぎりが配給されても、食べることが難しくなり、低栄養になりやすかったと、足立さんはみている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="水がない場合は……"></div>
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<p>足立さんによると、災害避難の高齢者を中心に誤嚥性肺炎で亡くなるメカニズムはこうだ。</p>
<p>避難生活での水不足や口腔乾燥など、口腔ケアの不備で口腔内細菌が増加する。日ごろの常備薬の不足や、脱水・ストレスなどで体の抵抗力が低下する。動かないなど生活不活性化で「フレイル」と呼ばれる心身のぜい弱化が進む。低栄養で体力低下が進む。こうしたときに誤嚥すると肺炎を起こしやすく、体力がないと死に至ることも少なくない。</p>
<figure id="attachment_353402" aria-describedby="caption-attachment-353402" style="width: 5500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="408bcd31"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/b3c7be1e1ef3aeb60f60b0b7274d80a3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-353402" class="wp-caption-text">積極的なオーラルケアにより口腔内細菌が減ると、インフルエンザの発症も10分の１に減少するというデータが東京歯科大学から報告されているという</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">うがい、唾液腺マッサージ、殺菌効果のあるマウスウォッシュ…</span></h3>
<p>今回の能登地震を含め、避難所は水や食料、光熱などが十分でなく、生活・衛生環境が劣悪になることが少なくない。極限的な状況では口腔ケアまで手が回らず、おろそかになりがちだが、体力の弱った高齢者などは、それが命取りになることもある。どうすればいいのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「水があれば、うがいをしてほしい。水がなければ、唾液がたくさん出るほうがいいので、唾液腺をマッサージするといい。ただ、水不足のときは、唾液も出てこないことがあります」</span></p>
<p>唾液腺マッサージは、耳下腺、顎下腺、舌下腺を刺激して、唾液の分泌を促進する。</p>
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<p>一方、極限的な状況で入れ歯など歯を清潔に保つために、足立さんは濡れティッシュで汚れをふき取ることもいいかもしれないとみている。ただし、「どれくらい寄与するのかはわからない」とも話す。それでも<span class="strongInContent">、「歯のない高齢者は食が細っています。入れ歯の汚れはふき取ってほしい。汚れたままの入れ歯を入れっぱなしにすると、細菌が爆発的に増えます」</span>という。</p>
<p>普段から災害に備えるには、どうすればいいのか。足立さんが挙げるのは、殺菌効果のあるマウスウォッシュ。ただし、口腔内に必要な常在菌も取り除いてしまう恐れがあるので、使用方法を守ることも大切になる。</p>
<p>液体歯磨きと呼ばれる液体タイプの歯磨き剤もある。適量を口に含んですすぎ、歯ブラシでブラッシングするだけでいい。練り歯磨きのように、水ですすぐ必要はない。</p>
<p>足立さんは普段から口腔ケアが大切と訴えており、こう話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「普段から口はしっかりとケアしておく必要がります。災害避難で冷たく固いおにぎりが支給されると、歯の悪い人は食べにくくなり、体力の低下にもつながります」</span></p>
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浅井秀樹

アフロ

阪神淡路大震災を経験した歯科医師は、当時の経験から、避難生活では口腔ケアがおろそかになりがちで、体力の弱った高齢者を中心に誤嚥性肺炎で亡くなる人が少なくない事実に、口腔ケアの大切さを訴え続けている。

「１、２日で細菌数が１億個に」阪神淡路大震災を経験した歯科医師が語る「災害関連死」を防ぐ口腔ケア

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