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<figure id="attachment_354700" aria-describedby="caption-attachment-354700" style="width: 819px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e9f75008"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/eb80d9915b21b76c22a4c10a3da51d7c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-354700" class="wp-caption-text">昨年11月に逮捕されたときの宇津慎史容疑者</figcaption></figure>
昨年11月、障害がある子供が通う放課後等デイサービスで、利用者の高校生に暴行を加えたとして大阪府吹田市のデイサービス「アルプスの森」の代表、宇津慎史氏（60）と職員の男２人が暴行の疑いで逮捕された。
宇津被告らは、重度の知的障害や自傷行為が激しい強度行動障害があった利用者に対して頭突きなどをしたほか、頭を殴ったり、馬乗りになって床に頭をたたきつけたりした疑いが持たれて、昨年12月12日に暴行罪などで起訴されていた。
この放課後等デイサービスは、過去にも事件を起こしており、警察の捜査の過程で、防犯カメラに暴行の一部始終が映っていたことで、犯行が明るみになった。
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「アルプスの森」が受け入れていた利用者は比較的重度の障害があった子供が多かったとされる。
「この事件を見て、思ったのは、運営者がプロになりきれていなかった。それに尽きます。中には、利用者を恐怖でコントロールする支援者がいるのも事実です。そういった支援者はプロではない。利用者を落ち着かせるのに、暴力や過激な言葉はいらないんです。過激な対応を支援者が取ることで、利用者を逆上させ、さらにパニックに陥らせることもあるので。暴力が出るなんて、利用者のペースに巻き込まれているだけであって、支援者側のペースに利用者をのせないといけない。甘く見られてはいけない、でも恐怖で支配することとはまた違う。利用者を落ち着かせる力を支援者側が身につけることが、この現場では非常に重要になってきます」
そう話すのは、重度の知的障害者たちが暮らす入所施設で働くＡさんだ。この入所施設は子供が通っているわけではないが、障がい者支援施設で働く人たちに求められる、根底にある要素は同じだ。Ａさんは、さらにこう続ける。
｢私が働いている施設にも多くの強度行動障害の方が暮らしています。パニックになられる方もいますし、一人がパニックになったら、それが連動し、その場いったいがパニックになることもある。でも、そこで感情に負けてはいけないのです｣
Ａさんは、今回の吹田の事件に関し、施設の代表に障害児者を支援する資質、力量がなかったと一刀両断する。
｢嫌いとか腹が立つとか、そんなのふっとばして、物事を客観的にみる力が支援者には求められる。何が目の前で起こっていても、一瞬で自分の感情を“無”にする、それは経験や、いろんな利用者を支援して獲得していったもので、支援者側の“力”なんですよ。落ち着かせる空気感を作り上げる。人間力というか、相手を見る力が長けた人が、全体を落ち着かせることができるんです。吹田の事件では、トップに立っている人にその資質がなかったということがかなりの問題ですね」
重度の知的障害や強度行動障害がある障害者も、こちらの声かけや配慮で人が変わったように落ち着く場面を多く経験してきたＡさん。
「私が担当した方で、女性で、40歳ぐらいまで地域に住んでいて、施設に来られた方がいました。入所されてからは、しばらくはお腹をけられたり、叩かれたり、噛みつかれて血も流れたりで、常に逆上してすごかったんです。でもそこでひるんではいけない。噛まれて、血を流しながらも、『これは何」って利用者さんに見せ続ける。何が悪いことか、いけないことか、言葉で難しい部分もあるので、傷跡を見せて、理解してもらう。
相手が私を信用してくれるまで、とことん体を張って付き合うことが支援者にも求められるのです。その人の要求をここまでは聞くけれど、これ以上は聞かない、とちゃんと線引きして信頼関係を構築していくのです」
<div data-friday-nextpage-lead="糞尿をまき散らされても「感情を無に」できるか"></div>
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利用者が最初に来て１ヵ月、２ヵ月が勝負。ここで利用者と支援者のお互いの立場を明確にして関係を構築できないと支援者がいくら注意をしても聞かなくなってしまうという。
「重度の方って本当にこちら（支援者）が把握していないといけないのです。こちらの予測能力というのでしょうか、今、こういった行動をした、次はこう来るというのを付き合っていくうちにわかってくる。でも、これは重度の方になればなるほど、かなりこちらの能力、そして経験も必要になってきます。
その40歳の利用者の方も、試し行動というのですが、支援者の気をひくために、糞尿をまき散らす。でもそれに反応しない、反応すると利用者の思うつぼです。いちいち反応していたら、こちらの気が持たないです。だから、自分、支援者が自分を守るためにも、感情を“無”にすることが求められるのです。
先ほど申し上げた女性が来られて１年過ぎましたけれど、非常に落ち着いて生活されています。利用者の方も環境や、支援員の声かけで暴れなくて済むことがあるのです。
だからこそ、支援員は利用者の思いを受け止めて、どういう風におさめていくか、支援員の力量に任されています。その力がないと、その場面はもう地獄絵図ですよね」
今回、吹田の事件は「放課後等デイサービス」で起こってしまったが、別の「放課後等デイサービス」を運営するスタッフもこう明かす。
「一番問題なのは、今回、事件を起こした施設長ですね。２人の体制を組むと言いながら、１人で対応しており、事件を起こしてしまった。そういった約束をしたことが結果として事件を招いてしまった。私の施設をはじめ、多くの施設では、正直、２人の人員を割くことは非常に難しく、受け入れることはできなかったでしょう。なぜ、そういった体制を組むと約束してしまったのか、そこが問題であると思います」
利用者の子供に暴力を振るうのは持ってのほかであり、許されることではない。しかし、こういった事業所に預けざるを得ない障害児や障害者がいるのも事実なのだ。
｢やはり、事業所によっては、重症度や特性によって断られることもあります。吹田の事業所では比較的重度のお子さんのご利用が多かったようですし、お子さんを吹田の事業所に預けている親御さんのインタビューなどでは『親切に対応してくれた』というお話もありました。そのこと自体は嘘ではなかったのかもしれません。暴行現場が、防犯カメラに映っているぐらいなので、本当に感情的にやってしまったということなのかもしれません。良い人の部分とコントロールが利かないところが相まってしまったのではないでしょうか」
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暴行などもってのほかであり、経営者たちの資質不足は言うまでもない。しかし、このような障がい者施設における暴行事件は氷山の一角で、2000年に施行された介護保険制度により、それまでは厳しく制限されていた参入規則が緩和され、株式会社など、営利法人などにも参入への道が開かれた。結果、資質に問題がある事業所も多く参入してきており、潜在的にこれからも起きてしまうおそれがあることが大きな問題となっているのだ。

ノンフィクションライター。ＮＰＯ法人サードプレイス代表。元週刊誌記者。不妊治療によって双子を授かり、次男に障害があることがわかる。自身の経験を活かし、生殖補助医療、妊娠・出産・育児、障害・福祉を中心に取材活動を行う。本人ツイッター（＠thirdplace_npo）

中西美穂

昨年11月、障害がある子どもが通う放課後等デイサービスで、利用者の高校生に暴行を加えたとして大阪府吹田市のデイサービス代表が逮捕された。障がい者施設の暴行事件がなぜあらゆる所で起きてしまっているのか。

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