NPO法人日本FP協会認定上級ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。キャリアコンサルタント。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。老若男女を対象に身近な新聞をつかった経済教育、キャリアデザイン、資産形成などの講座や研修を大学、企業へ展開。個人向けには、客観的なファイナンシャルプランニング、ライフ・キャリアプランニングを提供している。金融リテラシーの普及活動が評価され、金融庁と日本銀行から’14年度金融知識普及功績者として評される。

大石 泉

<h3><span class="strongInContent">成功する「投資先」を見極めるヒントは……</span></h3>
<p>新NISA（少額投資非課税制度）がスタートして１ヵ月。株価は、昨年末からの上昇トレンドを引き継ぎ１月も好調に推移した。株高を受け、証券会社の業績も好調。手数料ゼロ化で注目された大手ネット証券の業績も好調だった。新NISA効果による口座開設も業績に寄与している。</p>
<p>日経平均株価は月間で2822円（8.4%）上昇。ハイテク株を中心とした米国株の上昇が影響した。年明けとともに新NISAで投資デビューした方は、好結果を得ているだろう。一方、上昇トレンドを見極めようとした方は、「買いそびれた」と悔しがっている方がいるかもしれない。が、相場とはそのようなもの。相場のうねりを味わう余裕をもとう。</p>
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<p>新NISAでは、「eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）」、「eMAXIS Slim 米国株式（S&amp;P500）」など、外国株式で運用するインデックス投信に大量の資金が流入。成長投資枠では、高配当銘柄で知られる日本たばこ産業や三菱UFJフィナンシャル・グループに買いが集まる。</p>
<p><span class="strongInContent">高配当を持続するには利益が必要。そして、利益を得るには、売上原価を抑えることもポイントの一つとなる。今回は、企業の重要コストである商品市場の指標について考える。</span></p>
<figure id="attachment_359060" aria-describedby="caption-attachment-359060" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b4eaf138"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/fae38508dfad8eacb08f326eeec0256f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359060" class="wp-caption-text">日経平均は、連日のバブル後最高値に（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">トヨタなのか、ホンダなのか…その前に考えたいこと</span></h3>
<p>商品市場と聞くと、原油先物など“プロっぽい”と思うかもしれない。が、商品は様々で身近である。例えば、HV車を得意とする好決算のトヨタ自動車か、ラスベガスでEV車「０（ゼロ）シリーズ」を発表したホンダか。と投資先を迷った際、世界の自動車販売台数の拡大に懸けるなら、車種を選ばないタイヤメーカーという選択もある。タイヤに必要なのはゴムだ。</p>
<p>原材料として天然ゴムを使用している会社にとって、天然ゴム価格の上昇は収益の圧迫要因となる。「天然ゴム価格の国際指標」は、【RSS3】、【TSR20】など。商品には国際価格指標があって、その国際価格の動向が国内の商品価格に影響する。<span class="strongInContent">商品価格は、川の流れに例えられる。原材料の多くを輸入に頼る我が国は、「川上」である国際商品市場を押さえておくと早い株価材料を得やすい。</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">チョコレートの高値の理由を「川上情報」から考えてみると…</span></h3>
<p>バレンタインデーの時期でもあり、チョコレートで「川上情報」を考えてみよう。</p>
<p>チョコレートに欠かせないのは、カカオ豆。小学生向けのマネー教室で、「カカオ豆を一番作っている国は？」と聞くと、声を揃えて「ガーナ」と答えてくれる。正解はコートジボワール。コートジボワールとガーナの２ヵ国で世界のカカオ豆生産の約70％を占める。そして、日本の最大の輸入先は、ガーナ。子どもたちも大正解だ。</p>
<p>チョコレート業界の主要原材料であるカカオ豆の川上事情を知ると、バレンタイン商戦のチョコレートが高額だったことも納得がいく。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「ピンチをチャンスに変える」企業"></div>
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<p>国際カカオ機関（ICCO）は’23年11月のカカオ豆市場に係るレポートにおいて、’23／’24年収穫期のカカオ豆の供給が激減したと発表した。コートジボワール、ガーナなど西アフリカの主要産地を襲った豪雨により、カカオ農園が洪水に見舞われ、収穫期に入ったカカオ豆の生育や農作業、運搬作業に影響を及ぼしたことが原因だ。</p>
<p><span class="strongInContent">が、上記の発表も、異常気象でコートジボワールが豪雨に見舞われているという川上情報を得れば、供給減は予測可能だ。</span>コートジボワールは７月、豪雨の影響による供給懸念からカカオ豆の先物販売を一時停止すると発表した。アンテナを立てていると川上情報が入ってくる。</p>
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<p><span class="strongInContent">そして10月、コートジボワールで’23／’24収穫年度のカカオ豆の出荷が始まった。生産者買い上げ保証価格は前年度比11％引き上げ。川上での値上げが、メーカーの原価管理、販売戦略に影響し、国内のバレンタインフェアの会場にあらわれる。</span></p>
<p><span class="strongInContent">コストの上昇を販売価格に転嫁できるなら、利益は確保されるだろう。が、心理的な一線を越えると、客離れを招き販売量が落ちる。消費者に対する企業努力の内容も投資先選びのヒントとなるに違いない。</span></p>
<h3><span class="strongInContent">A＿「ピンチをチャンスに変える」企業を選ぶ</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>カカオ豆の供給減から、カカオマス、カカオバターが取り合いとなる。手をこまねいている場合ではない。カカオバターの代替品としてパーム油やひまわり油が使われたり、カカオ豆の代わりにぶどうやひまわりの種を使ってチョコレートを製造したりする取組みも欧米では実用化されている。開発コストや製造コストの負担は大きいだろうが、そのようなベンチャー企業を発掘し、投資対象の候補とすることも選択肢だ。大手メーカーの戦略にも注目したい。</p>
<h3><span class="strongInContent">B＿投資で発展途上国をサポートする</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>カカオ豆の生産には、児童労働や森林伐採など、深刻な課題があることをご存じだろうか。カカオ豆の生産者は小規模農家が多く、買取価格も低く、生産者の貧困が課題となっている。農作業を担う子どもたちは学校に行くことができず、リテラシー向上の機会が失われる。加えて、地球規模の気候変動やカカオの高樹齢化による収穫量低下も深刻さを増す。生産者は、森林伐採で収穫量を確保し収入増を目指そうとする。そのことが、気候変動の要因を作り出しているなどとは、思いもよらないのだ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">C＿フェアトレードという選択</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>甘いチョコレートをいただく際、先に述べた苦いカカオ物語も意識したい。カカオ豆生産地である開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することによって、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」がフェアトレードだ。</p>
<p>消費者としてフェアトレード商品を購入したり、投資家としてフェアトレード認証を受けている企業を応援したり、できることはある。</p>
<p><span class="strongInContent">新NISAは始まったばかり。投資信託を買うもよし、成長投資枠で応援したい企業を自ら選ぶのもよし。自分の大切なお金は、社会が必要とする企業や成長し続ける企業へ投じたい。投資先企業のコストにもっとも影響する商品は何か、という観点で商品市場をウオッチするのも楽しい。川上情報を活用しよう。</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="個別株で成功するためにチェックしたい「指数」"></div>
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<h3><span class="strongInContent">個別株で成功するためにチェックしたい「指数」</span></h3>
<p>ココア豆を例にとったが、川上情報をキャッチする重要性は他の商品も同じだ。</p>
<h3><span class="strongInContent">１＿「銅の医者」とは</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p><span class="strongInContent">「ドクター・カッパー」と異名を持つ銅は、景気の先行きを診断する存在と言われる。</span>銅が、機械、建設、輸送など、景気と深くかかわる基幹分野で幅広く用いられ、銅の需要動向が景気の先行きを指し示す。<span class="strongInContent">銅価格の国際指標であるLME（ロンドン金属取引所）の３ヵ月先物価格は、過去にも世界経済の変化に敏感に反応した。</span>’08年のリーマン・ショック、’20年の新型コロナウイルス感染拡大時など、世界規模の経済ショックの際には、銅の価格が経済指標に先んじて急落している。</p>
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<h3><span class="strongInContent">２＿「CRB指数」はインフレの先行指数</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p><span class="strongInContent">エネルギーや金属、穀物といったコモディティー（商品）の総合的な値動きを指数化したものが「商品総合指数」。</span>海外指数の代表的なものに、【CRB】指数がある。CRB指数は、インフレ指数とも言われ、欧米の商品取引所の先物取引価格から算出される国際商品先物指数で、19品目で構成されている（原油、無鉛ガソリン、暖房油、天然ガス、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、トウモロコシ、大豆、小麦、綿、生牛、豚赤身肉、コーヒー、ココア、オレンジジュース、砂糖）。</p>
<p>様々な製品の原材料になる商品の値動きゆえ、物価だけでなく景気動向を測る材料として、【FRB】（米連邦準備制度理事会）も注目する。CRB指数はエネルギーと農産品の構成割合が高く、【WTI】（ウエスト・テキサス・インターミディエート）原油の影響を受けやすい。</p>
<h3><span class="strongInContent">３＿「日経商品指数42種」は景気動向指数の先行指数</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p><span class="strongInContent">国内の商品指数には、【日経商品指数】がある。</span>景気動向に敏感な素材、燃料などの主要商品の国内企業間取引価格を基に算出される商品価格指数で、17種と42種がある。17種は日次で、42種は月次（速報として週末値も算出）で公表される。<span class="strongInContent">景気の後退・回復の各局面にいち早く反応する傾向</span>があり、42種は内閣府の景気動向指数の先行系列に採用されてる。</p>
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<p>日経商品指数には、綿糸、H型鋼、銅地金、金地金、軽油、天然ゴム、砂糖、大豆などが採用されている。<span class="strongInContent">42種は昨年11月に最高値を更新し、２月も高値圏で推移している。</span></p>
<p><span class="strongInContent">国内の商品指数は、川中の位置づけだ。企業物価指数⇒消費者物価指数と波及する。川上から川下へ移行する過程では、為替や輸送コストが影響する。価格変動の要因は複雑に絡み合っていく。企業の利益に直結する川上情報を抑えよう。</span></p>


大石　泉

企業が高配当を持続するには利益が必要。そして、利益を得るには、売上原価を抑えることもポイントの一つとなる。成功する「投資先」を見極めるヒントになる企業の重要コストである商品市場の指標について考える。

日本株絶好調！　新NISA「成長投資枠」の成功《株》の見極めに…「商品指標」で企業コストを知る！

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