最前線で戦火を交える 激レア! 戦車&戦闘機&攻撃ヘリ
無人爆撃機からレジェンド兵器、中東で大活躍する"IS自作装甲車"まで。イラク、シリアなど数多くの紛争地を渡り歩き、アフガニスタンでは米軍とタリバン双方に取材した当代随一の報道カメラマンが厳選する珠玉の写真をご覧あれ!
戦場で使用されるホンモノの兵器
’01年のアメリカ同時多発テロ以降、戦地は中央アジア、中東、北アフリカを中心に拡大。それに伴い兵器は飛躍的に進歩した。そんな戦地の最前線で、報道カメラマンとして様々な兵器を撮影してきた。
現代の戦争において最も戦車を有効活用しているのはイスラエル国防軍だろう。パレスチナ自治区・ガザのイスラム原理主義組織・ハマスに対しての攻撃や、’06年のレバノン侵攻時には、イスラエル製のメルカバMk.2〜Mk.4(①)が活躍した。イスラエルの国土の大半を占める砂漠地帯に強いのが特徴だ。
他国では、ドイツがアフガニスタン北部に最大9人が乗車可能な重装甲のマルダー歩兵戦闘車(②)を駐留させてタリバンを牽制。また、’03年以降のイラク戦争では、米軍がダッシュ力に優れたガスタービンエンジン搭載のM1エイブラムス(③)を投入。市街地に立て籠もり、神出鬼没に攻撃してくるアルカイダ系武装勢力と戦う歩兵部隊の支援を行った。
しかし、タリバンやアルカイダが活発に活動していたアフガニスタン東部の山岳地帯では、行動範囲が限られてしまうため、米軍は戦車を投入できなかった。
そこで威力を発揮したのが、戦闘機による空爆である。アフガニスタンでは、地上で戦う歩兵部隊の要請を受けた米空軍のA-10サンダーボルトⅡ(④)、F-15E(⑤)、F-16(⑥)などの戦闘攻撃機や、RQ-1無人爆撃機プレデター(⑦)が、現場に急行。なかでも、対地攻撃を得意とするサンダーボルトⅡは、空対地ミサイルと30ミリ機関砲で熾烈な攻撃を浴びせ、山岳地帯に潜むタリバンに包囲された米軍地上部隊の窮地を救った。
ヘリコプターも現代の戦争には不可欠だ。米軍はUH-60ブラックホークを医療搬送用にアップグレードしたHH-60Mメデバック·ブラックホーク(⑧)を、’12年に導入。兵士を引き上げる救助用の巻上機を備えており、イラク、アフガニスタンの戦場で多くの負傷兵を救助した。
ベトナム戦争時に実践投入されたCH-47チヌーク(⑪)は様々な改良が施され、現在も兵員輸送には欠かせない。全長約30mと大型のため、約8トンの貨物を搭載可能。装甲車を吊り下げることも可能だ。半世紀以上にわたって日本も含めた各国で使われている。
ヘリの役目は輸送だけではない。米陸軍のAH-64アパッチ(⑨)は対地ミサイルが搭載可能な攻撃ヘリ。OH-58カイオワ(⑩)は観測・偵察ヘリで高度な索敵サイトが積まれている。’08年、アフガニスタンの「ワナトの戦い」で両機は、攻撃戦闘機と共に空爆を行い、アフガン戦争版「ブラックホーク・ダウン」と恐れられた。
日本車は戦場でも使用されていた
中央アジア、中東、北アフリカの戦場で最も目立っていたのが実は日本製ピックアップトラックだった。
’14年にイスラム国の首都ラッカを取材した際、イスラム国兵士はトヨタや三菱などの日本製SUVやピックアップトラックを使用していた。彼らは市販の車を改造し、荷台に大量の爆弾を積み込んだ自作装甲車で自爆攻撃を行っていた。
それに対し、イスラム国と対峙するクルド自治政府の軍事組織”ペシュメルガ”はトヨタ製のランドクルーザーや、ハイラックスの荷台にロシア製機関銃を装備した戦闘車両で戦っていた。
日本車とロシア製武器の組み合わせは安価で信頼性が高く、戦場でも十分に通用することが証明されている。つまり戦闘の最前線では、実は日本車同士が争っているというのが実状なのだ。
ちなみに米軍の対テロ特殊部隊はイラク戦争時、街中に潜伏するテロリストを拘束する作戦の中で、防弾仕様のBMW7シリーズを使用。強力なエンジン、頑丈なボディのBMWは市街地で目立たずに活動ができるからだろう。
テクノロジーの進化で先進国の兵器がハイテク化する一方、戦場で使われる兵器が多くは半世紀前の武器や、自作兵器などローテクなものばかり。コストに見合わない対テロ戦争にどう立ち向かうか、先進国の軍隊は対応を迫られている。
- 監修:報道カメラマン/横田徹
- 写真:横田徹、ロイター/アフロ(メルカバ)、ゲッティイメージズ(マルダー)