宮城県石巻市生まれ。大学在学中にコピーライターとして働き始め、20代後半で独立してフリーランスに。西武セゾングループ、松坂屋、東京電力、全労済、エーザイ等、ファッション、流通、環境保全から医療まで、幅広い分野のPRに関わる。’00年以降、軸足を医療分野にシフトし、「ドクターズガイド」（時事通信社）「週刊現代 日本が誇るトップドクターが明かす（シリーズ）」（講談社）「ダイヤモンドQ」（ダイヤモンド社）「プレジデントウーマン」（プレジデント社）等で、企画・取材・執筆を手掛けてきた。著書に「「がん」が生活習慣病になる日　遺伝子から線虫までーー早期発見時代はもう始まっている」（ダイヤモンド社）がある。2012年、「あたらす株式会社」を設立し、現在、代表取締役。

木原 洋美

<figure id="attachment_359938" aria-describedby="caption-attachment-359938" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c3fd2960"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/8cf716c1ac47296d82434e5ca17a3c9f.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359938" class="wp-caption-text">千鳥ノブは実は９年前の’13年２月に左側の椎骨動脈解離で、’22年８月、42歳のときに右側の椎骨動脈解離のため入院していた（’20年３月撮影）</figcaption></figure>
<p>「枕を高くして寝る」と言えば、何の不安もなく、安心して寝ることを指すが、じつは脳卒中の一因となる「特発性椎骨動脈解離」につながる危険な行為であることを、国立循環器病研究センターの研究チームが発見した。</p>
<p>「特発性椎骨動脈解離」とは一体、どのような病気なのか――。</p>
<p>お笑いコンビ「千鳥」のノブは’22年８月、42歳のときに右側の椎骨動脈解離のため入院したが、実は９年前の’13年２月にも左側の椎骨動脈解離で入院していたことを、<span class="strongInContent">＜そのままほっといたら脳動脈が破裂してゾッとする事になってました＞</span>とツイッター（現X）で明かしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">＜何より早期発見が助かりました！この脳動脈解離は知られてない事から偏頭痛か二日酔いかなと思われ放置されて危険な事になる病気らしいです、中年に多い病気です、普段頭痛しない人が痛み感じたら検査行って下さい＞</span></p>
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<p>他にも、加藤茶、ダイアン・ユースケらも過去に椎骨動脈解離を発症。いずれも経過は良好で、特に手術することもなく１ヵ月ほどの休養期間を経て、無事仕事に復帰している。</p>
<p>日本人が「寝たきり」になる原因の第１位は脳卒中だ。脳の血管がつまったり破れたりすることで脳の血管に障害を起こす病気の総称であり、主に脳の血管がつまる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳の血管にできた脳動脈瘤と呼ばれるこぶが破裂する「くも膜下出血」、一時的に脳の血管がつまる「一過性脳虚血発作」がある。</p>
<p>一方、特発性椎骨動脈解離は、首から脳に血液を送る２対の動脈のうち、首の後ろの骨の中を通る椎骨動脈で起こる。「特発性」とは　その疾患の発症の原因が特定できないという意味で、同センターのプレスリリースにも「発症予防のための原因究明が求められていましたが、約３分の２の患者さんでは原因不明でした」とある。世界で最も多くくも膜下出血の手術をしたことでギネスブックにも掲載されている脳神経外科医の佐野公俊医師は次のように説明する。</p>
<p><span class="strongInContent">「動脈の壁は内側から内膜、中膜、外膜の三層構造をしています。このうち内膜と中膜の間に亀裂が入って血液が入り込み、血管が裂けていく状態が動脈解離です。その過程で内膜に血栓（血の塊）ができれば脳梗塞、解離が中膜筋層を超えてしまうと外膜だけでは血圧を支えきれずに出血し、くも膜下出血になります。動脈解離は全身の動脈に起こりますが、頭部では椎骨動脈の解離が最も多いのは、首の動きが他の場所よりも大きいからでしょう」</span></p>
<p>代表的な症状は、首の痛みや激しい頭痛だ。但し軽症の場合は、単なる「寝違い」や「肩こり」と思い込んでいるうちに自然治癒することがある。患者は40代男性が多いが、働き盛りの年代ゆえ、疲労のせいと自己判断して悪化させてしまうケースも多い。ノブが自身のXで紹介した「普段頭痛しない人が痛み感じたら検査行って下さい」というコメントは的確な注意喚起と言えるだろう。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="発症リスクと関連している「枕の高さ」"></div>
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<figure id="attachment_359940" aria-describedby="caption-attachment-359940" style="width: 559px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="843a0b4a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/0e02fb138cafadfe22053d38a70c501c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359940" class="wp-caption-text">脳神経外科医の佐野公俊医師。世界で最も多くくも膜下出血の手術をしたことでギネスブックにも掲載されている</figcaption></figure>
<p>そんな特発性椎骨動脈解離の危険因子として、研究チームが着目したのが「枕」だった。患者の一部が極端に高い枕を使っていたことに気が付いたのだという。そこでチームは、発症時の枕の高さを患者約50人と他の病気の患者約50人について分類して研究。すると、高さ12㎝未満の低めの枕を使っていたグループでは、同疾患の患者は約４割だったのに対して、高さ15㎝以上の枕を使うグループではなんと約９割をこの病気の患者が占めていたという。</p>
<p>さらに、こうした関係を詳しく調べ、枕の高さと病気の発症リスクが関連していることを突き止めた。枕が硬いほど、関連性が顕著なことも分かった。</p>
<p><span class="strongInContent">「椎骨動脈は頸椎の骨の穴を通っているので、枕が高いと首が曲がって引っ張られ、損傷してしまう可能性がある。枕が関係しているというのはそういうことかもしれません」</span></p>
<p>前出の佐野医師もそう頷く。</p>
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<p>日本には、「殿様枕」と呼ばれる高く硬い枕が17～19世紀に使われていた歴史がある。髪型を維持するのに有効だったとされ、名前は“殿様”だが広く庶民の間にも流通していたようで、時代劇にもたびたび登場するが、正直、首がつらそうで安眠は難しい代物に思える。</p>
<p>実際、1800年代の複数の随筆には、「寿命三寸楽四寸（12cm程度の高い枕は髪型が崩れず楽だが９cm程度が早死にしなくて済む）」といった言説が流布していたとの記載が出てくる。どうやら、当時の人々も、高い枕と脳卒中との隠れた関連性を認識していたらしいのだ。</p>
<p>国立循環器病研究センターの研究チームは、何気ない睡眠習慣が脳卒中の重要危険因子になることが世に広く認識され、脳卒中で困る患者が少しでも減ることを期待し、「殿様枕症候群」というキャッチ―なネーミングで注意喚起を促した。</p>
<p>従来、脳卒中の予防には、「高血圧、脂質異常症、心疾患、糖尿病といった主要なリスク因子となる疾患の早期発見と管理に努めること」「運動不足を改善するため、週に５日以上、30分以上の運動を心がけること」「ストレスや喫煙、飲酒、脱水などに注意し、健康的な生活を送ること」等が大切と言われてきたが、今後は、「あまり高くない、柔らかめの枕で寝ること」も推奨されるようになるだろう。</p>
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<figure id="attachment_359941" aria-describedby="caption-attachment-359941" style="width: 917px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="192141a0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/9b408fce07aa4d1b44af5bd7fe897606.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359941" class="wp-caption-text">お笑いコンビ・ダイアンのユースケ（左）と津田篤宏（右）。’18年に上方漫才大賞に選ばれたとき</figcaption></figure>
<figure id="attachment_359942" aria-describedby="caption-attachment-359942" style="width: 1909px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1ec8b100"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/48db25b3847c4583a0ffba90ffbf8ae0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359942" class="wp-caption-text">’23年４月、ラジオ局から出てきた加藤茶と綾菜夫人</figcaption></figure>


木原洋美

堀田咲（1枚目）、共同通信（3枚目）、原一平（４枚目）

「枕を高くして寝る」ことが脳卒中の一因となるある病気につながる危険性があることが、国立循環器病研究センターの研究チームによって発見された。「殿様枕症候群」というネーミングの由来とともにその原因を追った

枕が高いと脳卒中になる…？千鳥ノブらお笑い芸人が罹患！40代男性に多い「殿様枕症候群」の危険性

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