都内の名店をご紹介! 大人の嗜み「角打ち」をはじめよう
居酒屋より手軽に、宅飲みより豊かに!阿佐ヶ谷、門仲、神田……
街の酒屋の光景が変わりつつある。店内の一角で飲む「角打ち」が注目を浴び、活況を取り戻しているのだ。急激な進化を遂げる”酒飲み最後の聖域”を完全レポート!
伝統と革新が交錯する酒呑み文化の最前線
今夜はちょっと飲みたい気分。ただし、居酒屋に入るほど本格的に腰を据えたいわけじゃない。とはいえ、一人で宅飲みするのも寂しすぎる……。そんなとき、あなたを温かく迎えてくれるのが「角打ち」だ。酒屋の一角で立ち飲みする角打ちは、かつて酒飲み上級者の聖域とされてきた。ところが今は状況が変わりつつある。トップランナー・ジャイアント佐藤氏が解説する。
「コスパ重視派の熱狂的な支持を集めているストロング系チューハイがコンビニでの売り上げを伸ばし続けていますが、コンビニのイートインスペースは飲酒不可のところが多い。その点、小売価格で購入して飲む角打ちはコスパも最高だし、何より他の客や店員とのコミュニケーションも楽しめる。つまり、角打ちは自宅で飲むように廉価に、なおかつ外の飲み屋のように場の雰囲気も満喫することができるのです」
ここ数年、大型スーパーや安売り酒屋チェーンの台頭に押されて街の酒屋は減少傾向にあるが、反比例するように角打ちサービスを始める店が増えているという。レアなワインやシャンパンを提供する店、日本酒の勉強会を開催する店、店内の一角で職人が江戸前寿司を握る店といった”ネオ角打ち”によって百花繚乱の様相を呈しているのだ。
「スタイリッシュな角打ちが増えたことで、女性客や若者層の掘り起こしに成功しました。その一方で、昔ながらの味わいがある街の酒屋さんも健在です。今は角打ちというジャンルがどんどん広がっている最中。2年後の東京オリンピック開催に向けて、インバウンド需要も大きく見込めると関係者の間で囁(ささや)かれています」(佐藤氏)
ところで、角打ちの起源は諸説ある。中でも有力とされているのが「北九州の製鉄所で働く労働者を相手に酒屋が始めたサービスだった」というものだ。三交代制で汗を流す工員にとって、いつでも酒が飲める場が明日への活力となったのであろう。それはグローバルな現代を生き抜くビジネスマンにも通じるものがある。今回、取材に同行してくれた酒好きアイドル・今野亜美ちゃんは語る。
「珍しいワインや世界のビールなど、お酒の種類が多いことにビックリしました。こんな品揃えのいい居酒屋、ないと思うんですよ。しかも店員さんが優しく教えてくれるから、私も日本酒とかを本格的に勉強したくなりました。おつまみも充実しているお店が多くて、居心地も抜群によかったですね。上司の男性に連れてこられたら、『やるな!』って感心するOLさんも多いかも(笑)。私もプライベートで角打ちを開拓していきたいです」
立ち飲み、串カツ、280円焼き鳥……B級酒場のトレンドは日々変わりつつある。そんな中、広い層から注目を集める角打ちは真打ちと言えそうだ。
練馬・桜台 キュヴェ・フジヤマ
ゴージャス&ハイソな空間!激レアのワインを味わいつくす
「本当にここは角打ちなの?」と初めて訪れた方なら戸惑ってしまうはず。なにせ店内狭しとディスプレイされた世界各国のワインは、フランスに住んでいた店長自らがセレクトしたレアものばかり。その丁寧な商品説明を聞いているうちに、あれもこれもと試し飲みしたくなること請け合いなのだ。つまみは特に置いていないものの、食べ物の持ち込み自由ということで、デパ地下で購入した総菜などをアテに飲む常連客も多いそう。また、ワインだけでなく生樽ベルギービールを中心とした世界の樽生ビールも人気。ゴージャスで上質な時間がゆっくり流れる、練馬エリアきっての名店だ
住:東京都練馬区豊玉上2-15-9
電:03・3994・7757
営:12:00~翌2:00
休:月曜日
阿佐ヶ谷 酒ノみつや
酒屋の一角で握る江戸前寿司!世界中のビールも堪能できます
店舗の奥にある小部屋は、居心地抜群の角打ち処になっている。店内は日本酒はもちろん、150種類以上のワインや200種類以上のビールなど輸入酒の品揃えが豊富。そのため外国人の常連が多く、ワールドワイドな会話を楽しめるのも魅力のひとつ。つまみも充実しており、日によってはなんと職人を呼んで本格的な江戸前寿司を握ることも!
「よそのお店では飲めないような珍しい商品も多いと思います。仕入れるものは時期によってこまめに変えているんですよ。オリジナルの日本酒も造っているので、興味のある方はぜひチャレンジしてください!」(店長)
住:東京都杉並区阿佐谷南1-13-17
電:03・3314・6151
休:不定休
営:月~金11:30~20:30、土祝11:30~20:00、日15:30~19:30
神田 和酒や
3種の利き酒や試し飲みで手軽に日本酒の世界を探訪
日本酒の世界は奥深く、初心者はどこから手をつけていいのかわかりづらいもの。その点、『和酒や』は800円から3種類の利き酒ができるほか、300~500円からで様々な試し飲みができる。また、レディース・デイを設定したり、全国の酒蔵の蔵人に来てもらう無料試飲会も開催。全国の蔵から取り寄せた充実のラインナップを武器に、日本酒カルチャーの啓蒙に努めている。
「BGMや店内の雰囲気がすごくおしゃれ! 店員さんがいろいろ丁寧に教えてくれるから、女子同士で来るのもアリかも。もちろんデートでの利用もバッチリだと思います♡」(今野亜美)
住:東京都千代田区神田須田町1-28-4-1F
電:03・6260・9573
営:月~金11:00~22:00、土日祝11:00~19:00
休:日曜日
恵比寿 山本商店
角打ちでシャンパン!? コスパ最高のおしゃれ系
まず店内に入ると、ズラリと世界中のワインが並ぶ光景に圧倒されることだろう。まさに”大人の隠れ家”といった小洒落た雰囲気が漂う山本商店で特筆すべきは角打ちのコスパ。他店で飲むと一杯1000円以上はする高級ワインやシャンパンが、ここでは原価で楽しめるのである。さらにチーズ類などのつまみも充実しており、グラスを傾けていると優雅な気分に浸ることができる。
「角打ちで飲んでいただくことにより、世界中のワインの魅力に気づいていただけたらと思っています。決して敷居は高くないので、近くに来たときは気軽に立ち寄ってください」(店員)
住:東京都渋谷区恵比寿西1-32-16 COM-BOX B1
電:03・3464・7070
営:月~金10:00~24:00、土日祝13:00~24:00(ともに角打ちは16:00〜)
休:なし
門前仲町 折原商店
お不動様のお膝元にある名店 酒で身を清めてお参りに…!?
日本酒の充実ぶりに目を奪われるが、同店のウリはそれだけではない。甘酒、富士白レモンチュウハイ、ハートランドのビールなど角打ちではあまり見かけない珍しいラインナップを揃えており、何を注文すればいいのか迷うほど。つまみも鯛皮ちくわ、玉こんにゃく、鴨ハム、ホタルいかなどのレアな逸品に加え駄菓子の種類が豊富なのも、まさに下町ならでは。酒好きのワンダーランドといえるだろう。
「おつまみが充実しているのがうれしいですよね。店内が明るくてにぎやかなこともあって、飲んでいると気分がワクワクしてきます」(今野亜美)
住:東京都江東区富岡1-13-11-1F
電:03・5639・9447
営:10:30~22:00
休:なし
浅草 あづまばし 四方酒店
江戸っ子ならではの人情にほろり…キンミヤや電気ブランでうっとり
昼飲み可能な角打ち。もちろん浅草名物の電気ブランもしっかり置いてある。キンミヤの氷焼酎シャリキンをホッピーで割れば、浮き世の悩みなどあっという間に吹っ飛んでしまうはず。初めて会った他のお客さんとも軽やかに会話が弾むのは、いかにも下町浅草の光景といったところだ。昭和30年から営業している同店だが、3年前まで角打ちはやっていなかったとのこと。買った商品を店の外で飲む客の姿を見て、「だったら中で飲んでいけば?」と声をかけたのが始めたキッカケだったという。人情に厚い下町スタイルの角打ちといえるだろう
住:東京都台東区雷門2-1-14
電:03・3844・0679
営:10:00頃~19:30
休:日曜日
- 取材・構成:小野田衛
- 写真:丸山剛史