『3年A組』と『相棒』徹底分析 日本テレビとテレビ朝日の実力差

人気ドラマの徹底比較でわかった本当に強いテレビ局とは? 鈴木祐司(メディア・アナリスト)

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写真:アフロ(菅田将暉)、蓮尾真司(水谷豊)

◆「視聴率」は好調のテレビ朝日

2019年1月クールの連続ドラマは、まもなく全てが最終回を迎える。

GP帯(夜7~11時)のドラマでは、『3年A組 今から皆さんは人質です』など3シリーズを放送した日本テレビが平均視聴率11%ほどで2位。そして『相棒』など3シリーズがいずれも二桁で、平均12%台となるテレビ朝日がトップになりそうだ。

実はテレ朝は、このところ視聴率で快進撃を続けている。

去年10月、それまで足掛け5年に及ぶ58ヵ月連続月間三冠王だった日テレに対し、全日(6~24時)で逆転し待ったをかけた。朝帯(午前6~10)で『グッド!モーニング』と『羽鳥慎一モーニングショー』が好調なのが大きい。

加えてGP帯に3本並べているドラマも絶好調だ。今年1月クールまで、14期連続でテレ朝がキー5局の中でトップを続けている。

さらに同局には明るい材料が加わった。

昨秋から始まった『ポツンと一軒家』が快進撃なのだ。徐々に数字を上げ、2月と3月で2回、日テレの『イッテQ』を上回った。盤石だった日テレ日曜夜帯も脅かし始めているのである。

ネット記事の中には、“日テレの凋落”や“テレ朝の逆転”を喧伝するものも出始めている。

◆広告収入で大差

しかし以上は、リアルタイム世帯視聴率での話。

民放テレビ局の収入で一番大きい部分はスポンサーから支払われる広告収入だ。その目安に世帯視聴率があるのは事実だが、実際の収入の多寡は単純に視聴率と連動してはいない。

例えば日テレの月間三冠王をテレ朝が阻止した18年度第3四半期の広告収入。日テレの658億円に対して、テレ朝は495億円。視聴率で肉薄していても、広告収入の差は163億円もあった。

では過去3年の視聴率と広告収入の関係を、前年同期比の増減で比べてみよう(図1)。

過去3年の視聴率と広告収入の関係:日本テレビ

日テレのプライムタイムの視聴率は、過去2年で減少傾向となっている。ところが広告収入は微減に留まった。少なくとも視聴率の下落ペースほどは、広告収入は減っていない。

一方テレ朝は、この1年で視聴率が急伸した(図2)。ところが広告収入は、逆に減少傾向が続いている。一般論では視聴率が上がれば、スポットCMをより多く放送でき、広告収入は増えるはずだ。ところが逆に減っている。広告単価が下がるなど、別の要因が働いている可能性がある。

いずれにしても視聴率での明暗は、広告収入では完全に逆転している。

過去3年の視聴率と広告収入の関係:テレビ朝日

◆大きく異なる『3年A組』『相棒』の視聴者層

こうした逆転現象を説明する一つの鍵が、『3年A組』と『相棒』の視聴率の内実にある。

ビデオリサーチの視聴率では、平均15%台の『相棒』が、平均11.5%の『3年A組』を大きく上回った。ところが男女年層別の視聴率で見ると、両ドラマの視聴者層は大きく異なっていた。

ビデオリサーチは男女年層別の視聴率を発表していないので、関東2000世帯5000人超の視聴率を調べているスイッチ・メディア・ラボのデータで詳細を見てみよう(図3)。

『相棒』『3年A組』の視聴者層(男女年齢別)の違い

『相棒』を最も見ている層は、男女とも65歳以上の高齢者で、『3年A組』の4倍ほどいる。

一方50~64歳では両ドラマは互角だが、49歳以下では『3年A組』が圧倒する。男女20~34歳では、『3年A組』の視聴者は『相棒』の2~3倍。さらに男13~19歳では3.5倍、女13~19歳では8倍も差が出来てしまった。

中高年に極端に偏る『相棒』に対して、『3年A組』は明らかに若年層により支えられている。

実は広告主は、65歳以上の高齢者ではなく、若年層をターゲットにしている場合が多い。ゆえに実際に商品が売れる広告効果を重視し、若年層の含有率の高い番組にCM出稿したいと考える。こうした力学が、日テレの広告単価を押し上げているのである。

両ドラマの集中度

両ドラマでは視聴者の性年齢層だけでなく、視聴態度も大きく異なっている。

インテージ「Media Gauge」が調べる、ネットにつながる30万1913台のテレビ(関東地区)で視聴動向を追うと、両番組の見られ方の違いが浮かび上がる。

例えば最新話を含めた直近4話を全て見た人の数。

『相棒』は6000人前後で回が進んでも伸びてはいない。ところが『3年A組』は、当初から『相棒』を上回り、回を追うごとに増え続け、ついには『相棒』の2倍ほどに膨れ上がった。

『3年A組』は全10話で1テーマで、1話でも見逃すと内容を理解できなくなるタイプの連続ドラマだ。

このタイプは、序盤で視聴者の心をつかみ損ねると、途中で失速する危険性が高い。ところが『3年A組』は、視聴率が右肩上り基調となった。放送日のツイート数も全ドラマの中で断トツに多く、その数は終盤で増え続けた。如何に多くの視聴者が物語にハマり、集中して見続けていたかがわかる。

一方『相棒』は、1話完結型だ。

このタイプのドラマは、途中を都合が悪く見逃しても、話がわからなくならないので、安定した視聴率につながりやすい。今や1話完結型の連続ドラマが大半となっているゆえんだ。

ただしその分視聴者も、ドラマへの執着が強くない。「暇だったら見よう」程度のスタンスになりやすい。4話連続の視聴者が多くなかった原因の一つである。

放送日のツイート数で見ても、『相棒』は『3年A組』に大きく差を付けられた。話題喚起力が段違いだったことがわかる。

集中度や話題性は、録画再生視聴率や見逃しサービス、さらには有料VODなどにも響いて来る。

例えばビデオリサーチのリアルタイム視聴率では、『相棒』が『3年A組』をかなり上回った。ところが録画再生視聴率では、『3年A組』が毎回2~3%上を行っていた。自分の都合の良い時間にじっくり見たいという視聴者は、『3年A組』の方が多かったのである。

こうなると見逃しサービスや有料VODでも『3年A組』の方が多く見られ、ネット広告費や加入料などで多く稼いでいる可能性が高い。

テレビ×ネットの時代

リアルタイムの視聴率だけで見ると、HUT(総世帯視聴率)は過去20年で15%近く規模が縮小している。今後5~10年でも、さらなる収縮が予想されている。

その中にあって、広告主のターゲット層を多く含む番組は、視聴率以上の単価で取引されるようになっている。テレビ局にとっての重要なのは、広告単価をどう上げるかなのである。

番組の稼ぎを、リアルタイム視聴だけに限る時代も終わろうとしている。

見逃しサービスで多く視聴されることで、急伸するネット広告費を獲りに行く道もある。電通「日本の広告費2018」によれば、テレビ番組の見逃しサービスなどを含む「テレビメディアデジタル」という領域は、2018年は105億円あったという。実際に1話で100万回視聴を超えるドラマも登場している。ネット広告収入も重要な柱になりつつある。

さらに有料のVODや海外番販も無視できなくなってきた。

実際に日テレが買収したhuluの年間売上は200億円になろうとしている。また海外番販に積極的なテレビ東京の売上は、既にライツビジネスが局全体の4分の1を占めるまでになっている。

こうした収入も含めたトータルな戦略が、テレビ局経営の明暗を分ける時代なのである。

以上の状況を前提にすると、『3年A組』と『相棒』をリアルタイム視聴率の多寡だけで評価するのは意味がないことがわかる。

ドラマ制作も放送ビジネスの1シーンである以上、視聴者の心を動かし、結果としてどうマネタイズするかまで計算しなければならない。そのビジネスの世界は、ネットが急伸し、広告主のニーズが大きく変化した今、“テレビ×ネット”を前提に再考しなければならない時代に入っているのである。

  • 鈴木祐司

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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