<h3><span class="strongInContent">香港、台湾、アメリカ…次々と海外展開を発表した「鳥貴族」</span></h3>
<p>鳥貴族ホールディングスが、主力業態の焼き鳥店「鳥貴族」を海外に出店するということで、話題となっている。’24年３月４日には香港でフランチャイズ契約、翌５日には台湾で合弁契約を締結し、それぞれ調印式も行った。アメリカに進出する準備も進めており、海外展開に意欲的だが、実際のところ、焼き鳥は海外に受け入れられるのであろうか。</p>
<figure id="attachment_364950" aria-describedby="caption-attachment-364950" style="width: 4500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9ccba35b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/554dcf41691189f33e5aadd16a0df329.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364950" class="wp-caption-text">香港、台湾、アメリカなどに出店予定の「鳥貴族」。「焼き鳥」は第二のラーメンになれるのか？（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">現在の「焼き鳥」の原型ができあがったのは江戸時代</span></h3>
<p>焼き鳥の歴史を紐解くと、日本焼き鳥協会によれば、室町時代に雉（キジ）の串焼きが食べられており、江戸時代中期に現在の焼き鳥の原型ができあがり、明治時代には焼き鳥の屋台が登場した。昭和30年代後半に、アメリカから安価で大量生産できるブロイラーが導入されて鶏肉の価格が安くなり、大衆的な焼き鳥店が増加したということだ。</p>
<p>焼き鳥は、狭義や現代の認識（やや広げれば、鶏以外も含まれる）にしたがえば、一口大にカットした鶏の肉や内臓を串に刺し、塩やタレで味付けして、直火で焼いたものである。一見シンプルに思えるが「串打ち三年、焼き一生」といわれるように、その道を極めるのは容易なことではない。</p>
<p>“串打ち”は、全体をバランスよく焼き上げるために、重さや厚みを考慮して刺す必要がある。串を回転させた時に、肉がクルリと回るようではダメだ。鶏の部位やポーションの大きさによっても、刺し方が違ってくる。焼き上がった時の見た目も大切で、隙間ができないようにしなければならない。</p>
<p>“焼き”では、火の加減や輻射熱、風の向きなどを計算する必要がある。熱の入り方や客とのコミュニケーションを鑑みて、最高のタイミングで提供しなければならない。客が食べるタイミングで、外はパリッとしたテクスチャを形成し、中はジューシーな旨味を残さなければならないのだ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">焼き鳥店の市場規模は2000億円…ミシュラン東京の掲載は11軒</span></h3>
<p>国内における焼き鳥店の市場規模は2000億円といわれており、食べログによると、全国で約3万2000軒、東京に約6500軒もある。「ミシュランガイド東京 2024」の料理カテゴリー「焼鳥」（「焼き鳥」と同じ意味。ちなみに「やきとり」は鳥以外も含まれる）では、一つ星２軒、ビブグルマン３軒、セレクテッドレストラン６軒で、のべ11軒だ。</p>
<p>日本独自の料理カテゴリーで比べてみると、掲載軒数（星付き、ビブグルマン、セレクテッドレストラン）は、「日本料理」「寿司」「天ぷら」「蕎麦」「ラーメン」よりは少ないが、「とんかつ」「居酒屋」「牛肉料理」「蟹料理」「うなぎ」「ふぐ」「おにぎり」「すき焼き」「豚肉料理」よりも多い。星付きに限って言及すれば、「焼鳥」は、「日本料理」61軒、「寿司」26軒、「天ぷら」14軒に続いて、「うなぎ」「蟹料理」「牛肉料理」「蕎麦」と同じとなる２軒の４位。カジュアルな業態であることを鑑みれば、健闘しているのは確かだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="名店、一挙公開！　１年以上の予約待ちのお店も…"></div>
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<p>一つ星に輝いているのは目黒の【鳥しき】と押上の【焼鳥 おみ乃】。前者は現在の焼き鳥ブームを牽引する池川義輝氏が手掛ける「鳥しき」グループの総本店で、後者はその「鳥しき」出身の小美野正良氏がオープンした店だ。</p>
<p>「鳥しき」の系列店には、ビブグルマンを獲得したこともある【鳥佳】、完全紹介制で情報は非公開の【鳥かぜ】、六本木ヒルズから麻布台ヒルズに移転してますます予約が取れなくなった【鳥おか】、全米で唯一の「焼き鳥」一つ星店【鳥えん New York City】など、綺羅星の如く焼き鳥店がある。「鳥しき」グループは、現在の焼き鳥における最大勢力であるといえよう。</p>
<figure id="attachment_364951" aria-describedby="caption-attachment-364951" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="075101b5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/57b36a9df2a15e0f937ed8bf5e3e36f3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364951" class="wp-caption-text">【鳥佳】弾力があり、適度な脂のせせり</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">完全予約制、情報非公開、１年以上の予約待ちのお店も！</span></h3>
<p>焼き鳥では、ミシュランガイドにおける“非星付き店”もホットだ。セレクテッドレストランに選ばれている【神保町 五木田】は、フレンチのソースでいただく焼き鳥が新しい。１年以上の予約待ちとなっており、今最も勢いがあるのが、赤坂の【薪鳥新神戸】。水分のある薪で焼いているので、素材がしっとりと仕上がる。麻布十番【一鳥目 とり松】は目の前で焼いてくれるスタイルで、名物の「縛りつくね」が斬新だ。モダンフレンチのような料理も提供される六本木の【YAKITORI 燃 es】も予約が取りづらい。乃木坂にある【とり料理屋】は完全紹介制のクローズドなレストラン。ニュージーランドの高級ワイン「シャトー・ワイマラマ」も置かれているのは驚きだ。</p>
<figure id="attachment_364953" aria-describedby="caption-attachment-364953" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="857780b9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/e4650dde452be11254d71dec5658d555.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364953" class="wp-caption-text">【薪鳥新神戸】の内観。薪で焼く新しいスタイルだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_364954" aria-describedby="caption-attachment-364954" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dad4f592"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/f93617f4fb7bafc3abe79d25f947757a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364954" class="wp-caption-text">【薪鳥新神戸】しっとりと焼き上げた高原比内地鶏の腿肉</figcaption></figure>
<p>焼き鳥も鮨（ミシュランガイドでは「寿司」）と同じように、出自はカジュアルなものであったが、ガストロミー化されてきているのは否定できない。なぜならば、コースだけで１万5000円、客単価が２万5000円に達することも珍しくなくなっているからだ。ビールや日本酒ではなく、ワインと合わせるのも一般的になってきており、進化の一途を辿っているといえる。</p>
<figure id="attachment_364955" aria-describedby="caption-attachment-364955" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5208cb7c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/c6be96e6a2c1b801e341b2e8bfe24aff.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364955" class="wp-caption-text">【一鳥目 とり松】目の前で焼いてもらえる。右が縛りつくね</figcaption></figure>
<figure id="attachment_364956" aria-describedby="caption-attachment-364956" style="width: 1781px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="29062ebe"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/7a6ce80355c64cd51e0d863dfb79791a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364956" class="wp-caption-text">【YAKITORI 燃 es】モダンフレンチのような最初のアミューズ</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">広く海外でも人気の“Yakitori”</span></h3>
<p>焼き鳥は、海外ではそのまま“Yakitori”として通じるくらい知られている。日本の食文化として認知されているが、海外でも類似するような料理は少なくない。</p>
<p>フランスでは、柚子や醤油といった調味料から、和牛や海苔といった食材、鮨や日本料理といったジャンルなど、日本の食文化が広く受け入れられている。焼き鳥も貪欲に取り入れられており、食通のフランス人らしいアレンジが加えられているのだ。見た目は焼き鳥のようだが、鶏肉以外の肉やシーフード、チーズも積極的に用いられており、味付けはソース＝タレが中心。串から外してカトラリーで食すのが、洒落たフランスらしい。</p>
<p>イタリアの「アロスティチーニ」は羊肉の串焼き。オリーブオイルが用いられたりするのはイタリアらしいといえよう。ハワイにはバーベキュー料理の「フリフリチキン」がある。丸鶏を開いて串に刺し、回転させながら直火で焼く甘辛い一品だ。トルコをはじめとした中東で食べられる「シシカバブ」は、様々な肉が使われており、大きさはバラエティに富む。ヨーグルトでマリネされており、マイルドな味わいだ。</p>
<p>タイの「ガイヤーン」は、ポーションに様々な種類や大きさがあるが、鶏肉を串に刺して焼くのは同じである。ナンプラーの風味が特徴的で、複雑でスパイシーだ。インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイなど、東南アジアで広く食べられているのが「サテ」。鶏肉の他に牛肉や山羊肉も使われており、香辛料でマリネし、甘めのソースが印象に残る。</p>
<p>これらは“Yakitori”と比べてみれば、似ているところもあるが、異なる面も多い。</p>
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<p><span class="strongInContent">■日本人だけが有する“心と業”が詰まっている料理</span></p>
<p>日本の焼き鳥の主な特徴は次の通りだ。鶏の肉や内臓が使用されていること、一口大のポーションにカットされていること、串に刺されていること、炭火を中心とした直火で焼かれていること、味付けされていてソースにつけないこと、串を手に持って口に運ぶ“手食”であることだ。そして、“串打ち”と“焼き”に深い哲学とこだわりを有しているのも、“Yakitori”だけである。</p>
<p>海外では似たようなものがたくさんあるだけに、受け入れられるための素地があることは確かだ。加えて、日本にしかない特徴と、日本人だけが有する“心と業”が詰まっていることから、焼き鳥のポテンシャルは計り知れない。</p>
<p>海外においては、「鳥貴族」のような“日本におけるカジュアルな焼き鳥店”は、ラーメン店と同じように価格は日本の数倍となりながらも、手頃な日本料理という存在になるはずだ。そして、“日本における高級な焼き鳥店”は、ガストロミーとして独自の進化を遂げるのではなかろうか。日本における「焼き鳥」よりも、海外における“Yakitori”の方が、ミシュランガイドで三つ星を獲得するのが早いのではないかと思う次第だ。</p>


'76年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で'02年と'07年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍

鳥貴族ホールディングスが、主力業態の焼き鳥店「鳥貴族」を香港、台湾、アメリカに進出する準備も進めているという。はたして、焼き鳥・YAKITORIは海外に受け入れられるのであろうか。

ラーメンの次は「焼き鳥」！？…インバウンドを魅了するヤキトリで「鳥貴族」の世界進出は成功するか

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